与太話:サキュバス
始源世界 Chaos社海上基地
「えーっと、何々……『アイスヴァルバロイドの廃棄方法について』?」
ルリビタキが、クインエンデの座るデスクの前で資料を読んでいた。
「ええ。ニヒロ様が盛んに彼女らをお作りになられているのは存じているでしょうが、ニヒロ様を悪く言うわけではありませんが、この基地を圧迫するほど個体数が増加したわけです。空の器の目に留まった個体は彼に任せればいいですが、それ以外の多数は処分するほかありません」
クインエンデは赤渕の眼鏡のブリッジを押す。
「
「ええ。彼女らのEPをロックして、敵へ接近。体内のシフルを励起させ、一気に体細胞全てを臨界状態に変えて自爆させる。そういう仕組みのものです」
「サキュバス……って、なんだ?普通にアルファベットを並べただけなら、頭文字を適当に並べればいいだけじゃねえのか?」
「人間の間で流行っている怪物の様ですよ。なんでも、現実の姿は醜悪な怪物なのですが、人の就寝時の脳の活動……即ち、夢に介入し、理想の女性の姿になって、精気を吸い取るとか。まるでアニメ風美少女のバーチャルアバターを使う萌え声が出ることだけが取り柄のブスな配信者みたいですね」
「お、おう……それ大丈夫か?かなりギリギリなところを攻めてる気がするぜ……まあ、アイスヴァルバロイドも大概萌えに媚びたクソアマみたいな外見の機体が多いしな、それがこういう風に臨界状態になると……」
ルリビタキが資料を読み進めると、臨界状態へと到達したサキュバスの画像が貼り付けられているのが見えた。それによると、海老反りに四足歩行となり、肋骨が角や剣山のように体外へ露出し、眩い光を放っているようだ。
「ガチ恋勢向けの商品を発売して、熱愛発覚して大炎上させましょう」
急にクインエンデは戯言を言い出し、ルリビタキが苦笑いで返す。
「おい、一応この世界にもその手の奴いるだろ。あの……ヴァンダ・リーズだっけか。メイヴも似たようなことしてただろ。あんま敵作るようなことは、不用意に言わない方がいいぜ」
「まあそれはともかく、どうでしょう。ニヒロ様がご提案なされたので、既に決定事項ではあるのですが」
「いいんじゃねえの。結局この基地のエネルギーも、物資の元手も、全部あいつの純シフルで成り立ってるし、あいつがそれでいいなら否定する理由もない」
「ちなみにアイスヴァルバロイドは全体的に童顔の美少女で、戦場向きの外見ではないので、自爆と合わせてかなりの精神的ダメージも見込めますよ。対人間に限定されますが」
「流石に海竜とかには効かねえよな。重巡級とか戦艦級が相手だと、サキュバスを直接当てても大して意味はないだろうし。あくまでも効率的に処分するための方法、ってわけか。あたしもあんたも割と女学生って言っても通る見た目してるよな。あたしらみたいな隷王龍も自爆できるか?」
「まあ出来るでしょうね。多分、自分で攻撃した方が強いと思いますけど。ですが……に、ニヒロ様に自爆しろと言われたら……えへ、へへへへ……」
ルリビタキに言われたことが心の琴線のどこかしらに触れたのか、クインエンデは恐ろしいほど気持ち悪い表情でにやける。
「あー、あたしこれからエウレカでスイーツ巡りするんだった。じゃあな、クインエンデ」
ルリビタキは資料をデスクに抛り、クインエンデを放置して退室するのだった。
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