キャラ紹介:ハチドリ

 ※「後日談:極楽浄土」のネタバレが含まれます。


 んしょ……あれ、もう動いてます?

 はい!皆さんどうも初めまして!

 私……じゃなくて、わたくしはハチドリと申します!

 色々とワケあって旦那様の旅にご同行することになったのですが、

 今回はそんな私……じゃなくてわたくしの自己紹介をさせていただきます!


 エラン・ヴィタール 屋敷

「……何をしているんだ?」

「はい!来ました!わたくしのカッコいい旦那様です!」

 バロンが自室に入ると、兎耳の少女ハチドリが、カメラの前でわちゃわちゃと動いていた。

「はい!私はここに来てからそう時間も経ってない新参者ですから、皆さんに自己紹介でもしようかと!」

「……ふむ、それはいい心がけだな。邪魔をした。リビングにいるから終わったら言ってくれ」

 立ち去ろうとするバロンの手を、ハチドリは軽快な足取りで詰めて握る。

「ちょっと待ってください旦那様!せっかくですから、旦那様が質問する形式で行きましょうよ!旦那様も、私のこと知りたいですよね!」

「……まあ、そうだな」

 二人はカメラの前まで戻り、手近に置いてあった椅子を向かい合うように置き、それぞれ座る。

「……ずっと気になっていたが、君は極楽浄土のどこの出身なんだ?」

「えーっと、私も詳しく地理について把握してるわけじゃないんですけど、国境緩衝地帯?の近くの、岩山を隔てた向こうにある集落の出身ですぞ!」

「……なるほど、チヨガサキから国境までは直線でもそれなりにあるが、そこから山を越えるとなると、サバトを知らないのも頷けるな」

「サバトの時はすっごくびっくりしましたよ!武術大会だと聞いていたのに、まさか婚姻を契ることになるとは……!」

「……あれについては申し訳ない。君の未来を僕の都合で書き換えたようなものだからな」

「いえいえ!こうして旦那様と出会えたのはすっごく幸せですよ!ほらほら、旦那様、他に聞きたいこととかありませんか!?」

「……君のあの独特の構え……六連装と刀を同時に使い、分身まで駆使するあの戦い方だが、あれは自分で生み出したのか?」

「半分正解、ですね!古代のお伽噺で、一人の猛将が刀・槍・銃の三つを駆使して戦うというものがありまして……どうやったらその三つを上手く扱えるかって思ってひたすらに鍛錬していたところ、なんと槍を無くすと万事上手くいったのです!なので、発端はお伽噺なんですが、実際のあの戦闘スタイルはオリジナルですよ!」

「……フルオート機構のないあのシンプルな六連装で、どうやってフルバーストしていたんだ?」

「ああ、あれはですね……極限まで小さくした分身さんが、頑張ってシリンダーを動かして弾丸を発射しているんです」

「……なるほど、次は分身について聞きた――」

 続けて質問しようとしたバロンを、ハチドリは顔をしわくちゃにしつつ両手を突き出して止める。

「……どうかしたか」

「ストップです旦那様!戦いのことばっかり聞いてくるのはダメです!もっと……ほら、旦那様しか聞けないようなことを聞いてくださいよ!」

「……僕しか聞けないことか……耳がやたら敏感だが、日常生活で不意に発情したりしな――」

「わーっ!わーっ!わああああ!」

 ハチドリは今度は目を大きく開いて喚く。

「……次はなんだ」

「ダメですよ旦那様!これ動画にしてみんなに見せるんですから!そういう刺激的なのはダメです!」

「……僕だけが聞けるようなことと言っても、思いつかないが……そうだな、随分と均整の取れた肉体……というか、しっかりと基礎のある筋肉がついているが、何か自分なりのトレーニング法でもあるのか?」

「むう、それもどこか戦いに繋がっているような……」

「……そうだな、うむ……」

「だああああ!」

 完全に言葉に詰まったバロンに対し、ハチドリは吠え猛りながら立ち上がり、彼の手を取る。

「デートに行きましょう旦那様!お互いのいいところをたくさん発見しに行くんです!」

「……たまにはそういうのもいいか」

 手を引いて強引に立ち上がらせ、引きずり気味に外へ連れ出す。バロンはその僅かな瞬間に、カメラの電源を落としていくのだった。

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