キャラ紹介:アストラム・コルンツ



「ふぁあ~ッ」

 ぼさぼさの灰色の長髪が風に靡く。髪の持ち主は、気だるそうに欠伸をしつつ、品もなく胡座を掻いている。――ビルの縁で。

 彼女の名前はアストラム。セレナとシフルの間に生まれた子供であり、それでいて祖父のレイヴンに似たのか、飄々として掴み所のない人物でもある。

 さてここは、蒼空都市の一角。彼女は得物の双頭斧を突き立て、それを背凭れに使って寛いでいた。

「平和ってのも退屈だし、なんか起きろよ、ったく」

 平和で淀みのない青空を眺めて、彼女は不服そうに呟く。彼女はエンゲージリングを右手で放っては握り、放っては握る。程無くして飽きたのか、彼女はリングを懐に――とは言っても、彼女はその貧相な胸元を覆うように付けている襤褸ぼろのサラシくらいしか身に付けていないが――収める。足にテーピングのように巻き付けた黒布の調子を見ながら、ビルの屋上で飛び回る。

 しなやかな挙動に伴って流れる長い足が、浅黒い彼女の肌を照らす日光で健康的に輝く。抵抗のない見事な運びで着地すると、双頭斧の傍に置いていたリュックからラップにくるまれたサンドイッチを掴み、包装を剥がすのもほどほどにかぶりつく。ベタなBLTを二、三口で食べ終わると、伸びをしてからまた景色を見渡す。

「こんなもん、あと何兆年も続けりゃいいんだよ、ったくよぉ」

 彼女は愚痴りつつも、伸びやかに飛び回るのだった。

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