与太話:ご都合主義的なアレ Part2

 エラン・ヴィタール

 屋敷の一室で、テーブルを挟んでメイヴとバロンが向かい合っていた。

「ねえ、アタシずっと思ってたんだけど」

「……聞こう」

「三千世界での戦いの時に、アンタ暴走したでしょ」

「……お前のせいでな」

「なんとなくわかってたけど、あのとき正確には何が起きてたの?」

「……僕とエリアルの仕組みはわかっているよな?」

「まあ、散々聞かされたからねえ」

「……意識があれば、ある程度お前と会話して切り抜けられたんだろうが、あのとき僕はトランペッターのせいで気絶していたから……無意識的な部分でエリアル以外を拒絶することと、エリアルと融合状態になることへ過剰に動いたんだろう」

「つまり、気絶してたせいで防衛本能がビンビンになっちゃったってわけ?」

「……そういうことだな。……あの時はエリアルにはもちろん、お前にも原因があったとは言え随分と酷いことをしたと思う」

 メイヴがビスケットを頬張りながら唸る。

「アンタってエリアル以外にもちゃんと謝罪の気持ちを持ったりするのね」

「……お前は僕をなんだと思ってるんだ」

「えー?シンプルイカれ野郎でしょ。シリーズ全体の主人公の癖にキャラの味付けが濃すぎるのよ。優しくて妻思いまでは割とありそうだけど、そこに戦闘狂とか世界の核とか、性格の割に厳ついとか。一周回って異常に冷酷だったりするし」

「……僕のせいではないことがいくつかあったような気がするが、まあいいだろう。知っての通り、僕は色んな分野のことをせねばならない以上、キャラが濃いのは当たり――」

「どうしたのよ」

「……いや、よく考えたら、大概の登場人物がかなりイカれ野郎じゃないか?僕が言えたことじゃないが、僕が出会った殆どの人物は、割り切るのが早いと言うか、余りにも高速で悟る者が多いと言うか」

「言われてみれば確かに、ウジウジする奴って殆どいないわね。ほら、ヴァナ・ファキナの種の知り合いの女いたじゃない」

「……随分とぼんやりした言及だな……ああ、ミリル・レイナード君のことか」

「そうそうそいつ。そいつとかガチの一般人なのにかなり肝が据わってたわよね」

「……まあメタ的な話をすれば、大抵の話の根幹にある事件の緊急性が高いからな……敵側も基本的に手が早いか見切りが早いから、迷う時間が惜しいと言うのもある」

「葛藤とか悩んでるシーンが一番長かったのはストラトスとかいうガキんちょだったわね」

「……そうだな、彼はかなり不幸体質というか、相対的に見て一番過酷な人生を歩んだ人物だったな」

「今度主人公全員集めて話してみれば?アタシはそういうわかりやすいポジションにいないからカップリングとかジャンル分けとかめんどくさそうだけど、バロンなら簡単でしょ」

「……いや、遠慮しておこう。全員余りにもパワフルだからな」

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