☆エンドレスロール:弔いの氷菓

 ※まあまあなネタバレが含まれます。




















 エンドレスロール 滅びの墓標テスタ・ロッサ

 灰色の蝶が朱塗りの導管の合間を飛び去っていく。視界を遮る降雪は、あくまでも本降り程度のもので、堆く積もるようなものではない。

 蝶はひらひらと進み続け、街の中央に聳えるガラクタの巨塔――アンブロシアネクタルの前で止まる。そこでは、灰色の長髪を携えた少女らしき人間が、倒れたバロンを丁重に葬っていた。と彼はそこで気がついたのか、振り返って蝶の姿を見留める。

 蝶は瞬間、焔と共に真黒い騎士の姿へと転じる。

「今の私の邪魔しないで。もう全部……どうでもいいから」

 少女の言葉に耳を貸さず、騎士は右手に握った星虹剣を素早く二回振り抜き、刃を二つ飛ばす。少女は目を見張り、周囲から莫大な冷気を発し、それを塗り替えるように爆炎を放ちつつ竜化する。四足に一対の翼、全身が焦げたような質感に、所々が凍りついた竜が姿を表す。首をもたげて咆哮し、地表と中空から特大の氷柱が発生し、そして内部の炎が爆裂する。騎士は瞬間移動から斬りつけ、氷の槍のごとき尾に阻まれ、衝撃波を伴いつつ瞬間移動、刃を二つ飛ばし、また瞬間移動から急接近して斬りつけ、飛び退きつつ刃をいくつも飛ばす。竜はあえて一々対処することをせず、全身に纏う氷の鎧を強化して耐え、サマーソルトの要領で飛び退きつつ尾先を振り抜いて、器用に三方向へ冷気を飛ばし、それが凍りつくと共に爆発する。騎士はその場で姿を消し、爆炎をやり過ごしてから現れ、剣を振り抜いて炎の渦を前面に張って飛ばす。竜は口に莫大な冷気を蓄えて小さく飛び上がりながら急旋回して小氷山を作り出して渦を突破し、騎士に強烈な衝撃を叩き込む。騎士は直ぐ様立て直して剣先から霊魂のような何かを弾幕のごとく飛ばし、竜は錐揉み回転しながら急上昇し、上空を高速で飛び回りつつ大量の氷と炎を注がせる。止めに爆炎を纏ったまま着地し、炎と冷気の波を周囲に炸裂させる。衝撃波と共に虚空から現れた騎士の斬撃を尾で往なし、両者は一旦仕切り直す。

「ウザいんだけど。私が今どんな気持ちでいるかもわかんないの?」

「語る言の葉はない」

 騎士が左手を翳し、強烈な音波を発する。が、竜は身から発する冷気で往なす。

「私はある。邪魔。誰かの気持ちなんて考えたことも、考えるつもりもないけど……私は今、放っておいてほしいから」

「ならば我が糧となり、散れ」

 瞬間移動から衝撃波を伴いつつ現れ、騎士は両手から特大の音波を放つ。それを超高速で繰り返し、二段後退し、両手に巨大な光の刃を携える。更に瞬間移動からの振り下ろしにて、絶大な威力の音波を伴いつつ右の刃が落ちていく。竜は冷気を翼から放ちつつ急速に後退して躱す。しかし騎士は即座にその背後を取って左の刃を振り下ろす。竜は斬り伏せられ、そのまま音波によって追撃を受ける。止めとばかりに騎士は両方の刃を挟み込むように振り下ろし、間隔を狭めていく。合間で迸る音波の壊滅的な破壊力を一身に受け、そして圧壊する。

「……」

 騎士は蝶へと戻り、飛び去っていった。

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