☆エンドレスロール:灰色の蜃気楼

 ※致命的なネタバレが含まれます。勘弁してくれぇという方は急いで戻ってね☆





















 エンドレスロール 原初零核シャングリラ・エデン

 灰色の夢見鳥がひらひらと空中を舞い、記憶の大海を泳ぐ。それに付き従うように、ルナリスフィリアが揺蕩う。

「……。お前、私の心が読めるか」

『なるほど 今一度 あの残響の渦に 身を投じたいと』

「空の器は死した。私がもう一度、お前と打ち合う力を得るには、ここに至るより他ない」

『……』

 両者が漂うのを止め、ルナリスフィリアが光を放つ。周囲に暗黒が満ち、それが破られて灰色の足場が現れ、輝きに満ちる。夢見鳥が足場へ向かい、幼女の姿となる。

「ルナリスフィリア。私の下へ、彼女を」

 幼女は明人の遺体を召喚すると、融合して黒い騎士の姿となる。

『来たれ 淵源の英雄よ』

 ルナリスフィリアの切っ先が時空を引き裂き、氷塊が現れる。氷塊を砕いてソムニウムが飛び立ち、勢いよく着地する。彼女が右手を掲げると、そこにルナリスフィリアが自ら収まり、右手を下ろし、左手を横に伸ばすと、真水鏡が現れる。

「さあ、ソムニウム。我等の生涯の最良の日にしよう」

 騎士が右手に赤い刀身のシンプルな長剣を掴むと、左手をソムニウムに向ける。瞬間、ソムニウムは視界から消え、剣戟が届いてから現れる。騎士はその埒外の攻撃を難なく防御し、猛烈なラッシュを仕掛ける。真水鏡の完璧な防御にも怯まず猛攻を続け、ソムニウムはラッシュの終わり際にルナリスフィリアを振るい、切っ先を擦れ合わせて強烈な衝撃をもたらして、騎士を撃ち抜くように地面から真雷の柱が立ち上る。更に大量の氷柱を放ち、瞬時に剣を振るって次元門を産み出し、そこから絶大なシフルエネルギーが放たれる。騎士は衝撃波を伴う瞬間移動で躱し、現れつつ超高速で接近して斬り付ける。真水鏡による完璧なブロッキングにより弾かれ、剣による強烈な横薙ぎが重ねられるが、騎士は防御からカウンターを放つ。そしてそれを真水鏡で打ち返し、剣を突き出す。騎士は紙一重で避け、衝撃波を伴いつつ瞬間移動して後退し、両手から巨大な音波を放つ。真水鏡の水面が音波でぶれ、ソムニウムは剣を天に掲げ、無数の次元門を開通させる。そこからシフルエネルギーが噴出し、騎士はまたも瞬間移動で避ける。

「ふん……」

 騎士はソムニウムの動きが気に食わないのか、剣を消して巨大な刃を両手に持ち、瞬間移動で現れると同時に壮絶な音波を伴いつつ片方を振り下ろす。ソムニウムは剣を振るい、切り裂いた次元門から莫大なシフルエネルギーが放たれ、刃と競り合って切っ先が地面に辿り着く。そこへ大量の氷柱が飛来し、騎士は衝撃波を伴って消え、躱す。次に現れた瞬間再び刃を振り下ろし、真水鏡がそれを弾き返す。水とエネルギーが衝突し合ったとは思えぬほどの耳障りな金属音が鳴り響き、飛び散った真水鏡の破片が強烈な大爆発を起こし、再び氷柱の雨が襲う。躱し、地面に砕け散った氷柱が真雷を起こす。騎士は現れ、ソムニウムを挟み込むように刃を振るう。瞬間、ソムニウムから赤と青の闘気が立ち上り、解放される。絶大な威力の衝撃波が巻き起こり、刃本体、及び発生する音波と拮抗して凄まじい音が鴻大に響き渡る。騎士は刃が砕かれると長剣を持ち直し、着地する。

「私だけではお前と拮抗するのは不可能だろうな」

「……」

 ソムニウムが剣を振るった瞬間に地面を覆い尽くすほどの真雷の柱が現れ、氷柱の雨が降り注ぐ。騎士は振るう剣に音波を伴わせて氷柱と真雷を全て打ち消し、後方に飛び退いてから紅蓮の刃を三つ飛ばし、急降下して剣を地面に突き刺し、紅蓮の竜巻をいくつも産み出して飛ばす。ソムニウムは一閃で全て消し飛ばし、急接近から真水鏡を使った強烈なアッパーを極め、前進しつつの横薙ぎから下突きによって衝撃波を産み出し、瞬間移動で僅かに後退しつつ切り上げ、瞬間移動を駆使した絶大な威力の連撃を叩き込み、止めの一閃を放つ。騎士はそれを防御し、威力を逃がしつつ大きく振り被って強烈なカウンターを放つ。ソムニウムは全霊の一撃を弾かれたにも関わらず全く動きに遅れなど生じず、カウンターの攻撃をほぼ同じ威力で打ち返す。弾かれ合った両者は後退し、着地する。

「……」

 ソムニウムは飽きたのか、ルナリスフィリアを手放して自ら氷塊となる。

「私とは戦う意義を感じなかったか。まあいい」

 騎士は幼女に戻り、明人の遺体を捨てる。

「ルナリスフィリア。暇になったらまた来よう」

 幼女は夢見鳥へと変わり、飛び去っていった。取り残されたルナリスフィリアは、空間をねじ曲げ、破壊した。

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