キャラ紹介:ヴァンダ・リーズ



 滅びの墓標テスタ・ロッサ アンブロシアネクタル

「じゃあ今日の配信はここまで!愚民ども、次回も見てね~」

 灰色の長髪を携えた、可憐な人間がテーブルの上のディスプレイを操作し、ウェブカメラとマイクをオフにする。

 ここは滅びの墓標。滅びを弔った、不朽の楽園である。中央に位置する巨大な機械仕掛けの塔、それこそがアンブロシアネクタル。その一室で、彼は配信を行っていたのである。パステルカラーの主張が激しいファンシーな室内で、肩や脇、太腿をあざとく露出したパジャマを身に付けた彼は、部屋の隅で佇むフルアーマーの白騎士に視線を向ける。

「ねえユウェル、話って何?」

 彼は先程まで出していた甘ったるい声ではなく、至極適当に言葉を吐き出す。

「姫、先日取り付けていたバロンとの会合の日です」

 ユウェルと呼ばれた白騎士は、貫禄がありながらも深みのある声で返す。

「うぇ!?そうだったっけ!?なら早く言ってよ!」

「申し訳ありませぬ、姫」

 ユウェルが手を二回叩く。

「バロン、こちらへ」

 その言葉と共に部屋のドアが開かれ、優しげな表情の大男……誰もが見慣れた、バロン・エウレカが現れる。

「……ユウェル、僕は外交上重要な案件だからと来たのだが」

 バロンが抗議の言葉を向けると、ユウェルは平然と言葉を返す。

「姫が貴様を呼べと仰ったのだ。エウレカとテスタ・ロッサは友好な関係でいたいだろう?」

「……あの君主にこの側近ありか。仕方ない。ユウェル、客間にエリアルとベリスが居る。政治的な話は彼らにしてくれ」

「無論。姫の楽しみを邪魔する気はない」

 ユウェルはバロンと入れ違いになるように部屋から出ていった。

「……リーズ」

 バロンが彼――ヴァンダ・リーズに視線を向けると、リーズは立ち上がって駆け寄り、抱きつく。童顔にしてはかなりの大きさの乳房を押し付け、セクシーなパジャマから覗く谷間をこれ見よがしに強調する。バロンは小手先の誘惑には目も暮れず、リーズへ視線を合わせる。

「もっとたくさん来てくれないとダメなんだけど?」

 露骨に拗ねた態度を取るリーズを、バロンは優しく撫でる。

「……すまないな。こちらも努力はしているんだが――いや、現にそちらが寂しがっている以上、言い訳にしかならないな」

「わかってるならやることあるよね?」

 バロンはリーズを横抱き……俗にはお姫様抱っこと呼ぶスタイルで持ち上げ、テーブルの前まで運ぶ。バロンは座り、リーズを下ろして彼を抱えるように体を密着させる。

「……今日は何をしようか」

「バロンはどうやったら私が楽しくなれると思う?」

「……ふむ……」

 バロンは少し考えた後、近くに落ちていたゲームパッドへ手を伸ばす。

「……これは――」

 と、リーズがバロンのその手を止める。

「ダメ。そーゆーの、安易だと思うなぁ」

「……そうか……」

 バロンがまた考え込むと、リーズは彼の両手を掴んで自分を抱かせるように前にやる。

「……うん?」

「こーしてるだけでよくない?バロンが私のために時間を使ってくれてるだけで嬉しいなぁ……とか、そーゆーこともわかんないの?」

「……殴り合わずに人の心を読むのは苦手でな。して欲しいことは、迷わず言ってくれると助かる」

「ふーん……じゃあ、私が良いって言うまでしばらくこのまま!いい?」

「……ああ」

 程好い体温を重ねあったまましばらくそうしていると、彼らはいつの間にか眠りに落ちていたのだった。

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