エンドレスロール:ブラッド・フランチェス(異史)
エンドレスロール 月詠の帝都アタラクシア
主を失い、崩壊を始める空中要塞の大広間にて、一人の黒騎士が佇んでいた。
「来たか」
黒騎士の名はブラッド。ブラッド・フランチェスである。彼は背後に感じた気配へ向き直り、床に突き刺していた赤紫の長剣に手をかける。そこにはバロンが立っていた。
「……僕を待っていたのか?」
バロンは少々意表を突かれた表情をする。
「エンゲルバインは墜ち、空の器も零なる神も既にここを発った。貴様ならば、最後の後始末をしてから帰ると思っていた」
「……」
「宙核……いや、バロン。幾度も世界の危機を退け、最強に相応しき者よ」
長剣を引き抜き、構える。
「俺は貴様をここで討つ」
「……望むところだ」
ブラッドが一歩踏み出す。いくら大股で踏み出そうと説明が付かないほどの距離を一気に詰め、真横に薙ぐ。鋭い刃先に伴う真空刃がバロンの表皮を薄く削ぎ取り、バロンが右拳を放つと、ブラッドは左前腕で逸らしつつ長剣を逆手に持って振る。強烈な蹴りが迎撃に上がり、激突した瞬間長剣を手放し、左順手で持って翻りつつ飛び退く。着地するかどうかの瞬間に爪先で床を抉り、次に現れた瞬間には逆手で持った長剣を振り上げ、順手に持ち直して高速で振り抜き、バロンは防御するが、凄まじい速度で振られた長剣はその場に留まり、手放して瞬時に右手で掴んで力を込める。刃がバロンの左前腕に深く食い込み、鉄粉が零れる。そのまま切断しようと力を込めるが、バロンの右掌底が放たれ、それに続く攻撃を察したブラッドは長剣を引き戻して飛び退く。そして逆手に持った長剣を床に突き立て、振り上げる。真炎が放たれて床を走り、バロンは飛び込みつつ躱し、貫手を放つ。ブラッドは真横に飛び退いて身を翻しつつ踏み込み、体を捻って大上段から長剣を振り下ろす。バロンは手を床について姿勢を戻し、右掌で長剣を受け止め、左掌から闘気を放ってブラッドを吹き飛ばす。空中で一回転して着地する。
両者が小休憩のように殺意に満ちた視線を交わし、ブラッドは長剣を左手の籠手と擦り合わせて引き抜き、刀身に真炎を纏わせる。そのまま刃先が床に触れるかどうかの位置に合わせて突進し、振り上げ、高速で振り下ろす。バロンは左前腕で防ぎ、右貫手からの両手から闘気を放ち、ブラッドは大きく後退する。破損した鎧から真炎が噴き出し、彼の全身を包み込む。そして真炎で長剣を象り、双剣を構える。またもや異常に鋭い踏み込みから、今度は双剣を順に振るって攻撃を行う。両手の順手逆手を器用かつ複雑に連携させ、双剣を両方攻撃に使うという間抜けな絵面ながらも隙のない連続攻撃となる。バロンは前腕で防御し続け、ブラッドは更に一歩踏み込んで真炎の長剣を撫で付けるように当て、身を翻して長剣による強烈な斬り上げを放つ。動きの余りの鋭さにバロンの頬が切られ、真炎で両者の視界が揺れる。陽炎の最中を拳が貫いてブラッドの頬を掠めるが、彼も瞬時に反応して再び真炎の長剣を産み出し、後退しつつ隙を承知で双剣を揃えて渾身の力で振り下ろす。床に弾けた真炎が爆発を起こし、真炎の長剣を再び捨てたブラッドは捻り回転しつつ長剣を振り下ろす。僅かに身を逸らして刃を躱し、バロンの拳がブラッドの胸部を抉る。鎧が紙切れのように貫かれ、ブラッドは大きく吹き飛ぶ。そこを逃さず鋼の槍を発射し、ブラッドは空中を蹴って態勢を立て直し、蹴りで槍を往なし、更に真炎を全身から迸らせて、追撃してきたバロンと激突する。バロンは竜骨化し、真炎を纏った長剣と鎬を削る。そして拳で長剣をへし折り、そのまま貫いて真炎が大爆発を起こす。
「ぐっ……」
バロンが拳を引き抜き、竜骨化を解く。ブラッドが落下し、バロンは着地する。
「貴様を倒せぬようでは……万物の霊長を討つなど夢のまた夢……」
「……」
落下してきた瓦礫にブラッドが押し潰されると、バロンはその場を去る。柱の陰にいたルナリスフィリアが閃光を放ち、周囲は光に呑まれる。
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