キャラ紹介:ディード・オルトレ



 黄金郷エル・ドラード 宮殿

 アグニとディードが机を挟んで向かい合って座っていた。

「なあ、姉貴」

 アグニが茶の入った湯呑みを机に置いてから訊ねる。

「何」

 ディードは外を眺めていた。

「俺が言うのもお門違いな気もするけどよ、姉貴は戦う以外にやりたいことはねえのか」

 その言葉に、ディードは半ばバカにしたように半笑いでアグニの方を見る。

「珍しいわね。アンタもそういうこと言えるほど成長したってこと?」

「そういうんじゃねえ。ただ気になっただけだ」

「ほんっと珍しいわ。普段はお姉ちゃんが手伝ってあげるって言っても強がって聞かないくせに」

「ったく……姉貴に何かを手伝ってもらうのと、単純な質問は別だろうが」

 ディードは微笑んで頬杖をやめる。

「いいわ。弟の面白い姿に免じて答えてあげる。私はね……」

 ディードは前のめりになってもったいつける。

「戦い、敵を捩じ伏せる以外の全てのことがどうでもいいわ。アンタのことも、エルドラードのことも、権力も全てね」

「だがよ、もし、もし平和な世界が訪れたら、今のように毎日本気で殺し合うなんて出来ねえ。それに姉貴は、世界をぶっ壊せるほどのパワーを秘めてる。姉貴の欲望が全て満たせる世界なんて、どこにも存在しねえんだ」

「いいじゃない、それでもね。世界も何もかも、私の力の前にひれ伏してしまえばそれでいいわ」

 アグニはディードの緋色の瞳に、何の感情も無いのを見る。

「姉貴……」

「ま、暇潰しならアンタのお菓子作りを手伝うのはまあまあ好きよ。寧ろ、戦ってないときはアンタの手伝いくらいしかすることないもの」

 アグニはその言葉に少しだけ胸を撫で下ろす。

「でも」

 ディードは冷ややかな声色で続ける。アグニは止まっていた冷や汗が再び流れ始めるのを感じる。

「時が来れば……もちろんアンタも、私がこの世から消し飛ばすから」

 アグニは生唾を飲む。

「(姉貴は武人でも、ましてやこの世の何にも興味がねえ……ただあるのは、自分が他の生命より優れていることを証明するっていう本能ただ一つ……!)」

 入り込んでくる潮風を感じながら、ディードはただ、空を眺めていた。

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