第4話
死出島密室島連続殺人事件(4)
都都逸先生が死んだ
重い足取りでホテルに戻ると、
何やら騒がしい
都都逸 真奈美
「誤作動でした~?
そんな言い訳が通用すると思ってるの!」
宏美
「す、すいません すいません」
都都逸 真奈美
「謝って済む問題じゃないでしょ!」
宏美
「・・・」
都都逸真奈美
「返してよ! あの人返してよ!」
真奈美が宏美に掴みかかる
鮎人
「ちょ...」
慌てて、二人の間に入る
都都逸真奈美
「放しなさいよ! 何よ アンタ」
鮎人
「す、少し落ち着いて」
都都逸真奈美
「アンタに何の関係があるってのよ!
しょせん他人事(ひとごと)でしょ!」
真奈美が俺の手を振りほどこうとする。
そこを上手く腕をからめ、
真奈美の腕を両腕で羽交(はが)い締めにする
鮎人
「国東先輩! ちょっと!
手伝って!」
今まであっけにとられていた国東が、
俺の一言で加勢に加わる。
国東
「と、とにかく落ち着いてください!
一応風間は
"わざとじゃない"
って言ってるし」
真奈美
「そんなの関係ないでしょ!」
鮎人
「あなたも分からない人だな」
弘也も加勢する。
三人がかりで真奈美を抑えつけると、
真奈美はぐったりして動かなくなった
弘也
「お、おい」
国東
「・・・
え?」
動かなくなった真奈美の顔を叩く
「ピシャ」
真奈美は返事をしない
国東
「おい、まさか...」
弘也
「し、死んでる」
国東
「お、俺は関係ないからな!」
慌てている俺たちを尻目に、洋子が
真奈美の背中を立てて起こす
洋子
「はっ」
洋子が真奈美の背中を押すと、
真奈美は息を吹き返した
真奈美
「か、かはっ」
真奈美が意識を取り戻したので、
弘也と国東、それに他の部員は、
真奈美を二階の部屋に連れて行った...
ロビーには、俺と宏美、それに他の部員が数名いる
鮎人
「・・・」
何を言えばいいか分からない
沈黙がしばらく続くと、
宏美が口を開いた
宏美
「ごめんなさい・・・
私のせいで」
"いや、別に宏美先輩のせいじゃない"
そんな言葉が口から出そうになったが、
谷川の最後の一言が
俺の言葉を止めた
"これは事故なんかじゃない"
確かにそう考えれば、そうだ。
こんなに立て続けに人が死ぬことがあるだろうか...
鮎人
「宏美先輩はなんでボウガンなんか触ってたの?
危ないとは思わなかった?」
宏美
「ち、違うの!
私は特に何もせずに部屋の隅にいたんだけど、
秋子がボウガンを見つけて、
私に
"ちょっと これ触ってみて? 面白いね"
って言うから...
ほんとにちょっと触っただけなの!」
部屋の隅にいる女が目に入る
女の名前は、
"西 J(ジェイ)秋子"
滄城学園演劇部三年で、
モーリタニア出身の父と、
日本人の母を持つ、
褐色の肌をしたハーフだ。
J 秋子
「チ、チガウネ
ワタシ ヒロミ おちこんでる、
それで...」
鮎人
「ボウガンを渡したってわけ?」
J
「なんでもないよ ただ ひろみ げんきないから...」
田島 京子
「・・・
宏美や秋子を責めてもしょうがないと思う
わざとやった訳じゃないんだし」
わざとやった訳ではない、と言うが、
わざとやっていなかったらそれが免罪符にでもなると言うのだろうか
鮎人
「・・・
わざとやったんじゃないんだよね?」
顔をしかめながら宏美に聞く
宏美
「あ、あたり前でしょ!」
鮎人
「・・・
とにかく警察が来るまで待つしかないな
都都逸先生はもう警察には連絡したの?」
田島京子
「・・・
まだしてなかったみたい」
鮎人
「じゃあすぐに連絡しなきゃ」
二階から弘也と景子が降りてくる
鮎人
「真奈美さん、どう?」
俺がそう聞くと、弘也と景子は
互いに顔を見合わせ、
暗い口調で答えた
景子
「・・・
一応意識は戻ったんだけど、
ちょっと...」
鮎人
「ちょっと?」
景子
「・・・
都都逸先生が死んだショックもあって
話ができないって言うか...」
弘也
「完全にキチガイって感じだよな、ありゃ」
景子
「ちょっと!」
内心
「なんでこんなことになったんだろう」
と思ったが、そんな事を言っても
場が暗くなるだけだ
どうしようか考えていると、
嫌な事が頭に浮かんだ。
鮎人
「あれ?
そう言えばこの島に来る船を運転してたのって
都都逸先生たちだよな?
・・・
二人がいなくなったらどうなるんだ?」
弘也
「・・・」
景子
「・・・」
鮎人
「まさか...」
京子
「密室って事かな」
突然後ろで話を聞いていた京子が口を出す
景子
「ちょ、 そんな! 冗談でしょ!」
弘也
「おいおい、どうなるんだよ!」
周りのみんなが騒ぎ出す
俺も気が気じゃない
弘也
「おいおい 別に他の島民がいるんじゃないの?」
宏美
「この島は元々都都逸先生が持ってた島で、
人は住んでないって」
弘也
「え? じゃあ、この旅館や港は?
明らかに人がいる証拠じゃないっスか」
宏美
「都都逸先生の両親の時代までは
何人か人がいたらしいけど、
都都逸先生が私たちの学校に来てからは、
この島には誰も住んでなかったみたい」
京子
「とりあえず警察に連絡しましょう」
そう言うと、京子は携帯を手に取り
警察に電話をかける
「プルルルル」
呼び出し音が鳴り、
「ガチャ」
という音と共に、
警察が電話に出る。
十分程経ち、京子が電話を切る
京子
「・・・
とりあえず来てくれるらしいけど、
今台風が近づいてるから、
この島に来るのは2、3日後になるって」
弘也
「とりあえず来てくれるんだよな?」
京子
「うん」
警察が来てくれることには安心したが、
気になる事がある
鮎人
「・・・
谷川と...
都都逸...」
弘也と景子がお互いの顔を見あう
景子
「どうしようか...」
鮎人
「外に置いてたら腐るんじゃないか?」
弘也
「・・・」
J
「れいぞうこでどうね」
弘也
「ばっ、何言ってんだよ!
冷蔵庫なんかに入れれるわきゃないだろ!」
J
「ごめなさい」
確かにJが言っていることは、
一見突拍子(とっぴょうし)もないが、
よく考えると、それが一番いいのかもしれない
鮎人
「それが一番いいかもな」
弘也
「お前人の死体を冷蔵庫に入れるなんて」
鮎人
「他にどこかいい場所あるか?」
弘也
「・・・埋めるとか」
鮎人
「家族の許可もなしにか?」
弘也
「う、うーん それは...」
鮎人
「とりあえず警察が来るまで
冷蔵庫で保管するのがベストだろ」
弘也
「ま、まあ、そうか」
鮎人
「ちょうど業務用冷蔵庫だから、
何とかなると思う」
景子
「二人の家族には連絡しなくていいのかな?」
鮎人
「・・・
どうだろう。
警察が来るって言ってるし、
今連絡しても、家族の人たちに
できる事は何もないからな
とりあえず警察が来てからの方がいいんじゃないか?」
景子
「・・・
それもそうだね」
どうやら警察が来るまでの3日間、
俺たちはこの島に居続けなきゃならないらしい...
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