第5話

死出島密室島連続殺人事件(5)


話が通じなくなった都都逸先生の妻、


真奈美を二階に放置して、


俺たちみんなは一階のロビーに集まる


オレンジだった空は


紫褐色(しかっしょく)に変わり、


コバルトブルーに輝いていた海は


月の光を反射して輝いている...


一先(ひとま)ず全員で集まってみたものの、


誰も口を開かない


「ゴォーン」


時計が鳴る


国東


「十時か...」


景子


「お腹空いたね」


色々あったせいか、


そう言えば俺たちはまだ夕飯を食べていない。


柿崎 健人(かきざき けんと)


「そう言えばメシはどうするんだ?


 真奈美さんがいないと飯がないんじゃないか?」


今回、この島で料理をしていたのは、都都逸夫妻で、


それを部員が何人かで手伝っていたらしい


国東


「真奈美さんがいないと


 料理できないんじゃ...」


弘也


「あっ!」


弘也が食堂に向かって思い出したようにかけて行く


それに釣られて、俺たちの何人かも


食堂へ行く。


先に入っていた弘也を見ると、


何かあせっている


弘也


「・・・


 うわー


 これもしかして今日の料理の材料だったの?」


弘也が開けている冷蔵庫の中をみると、


そこには谷川が折りたたまれて


置かれていた...


柿崎


「うえっ 


 お前もしかしてそこに死体置いたのかよ!」


弘也


「い、いや、鮎人が


 "とりあえず冷蔵庫"


 って言ってたからさ...」


国東


「おいおい、


 これじゃどう見ても食えないだろ


 どうすんだよ」


弘也


「い、いや うっかりしてた」


国東


「うっかりしてたじゃねーだろ


 おまえ今日のメシどうすんだよ!」


国東と弘也が口論しているのを


柿崎はあきれ顔で傍観している。


鮎人


「・・・


 外で取ってくるしかないんじゃない?」


柿崎


「・・・


 それしかないかもな」


鮎人


「幸(さいわ)いこのホテルには釣り道具だとか、


 ナイフだとかそういうのはあるから、


 それを使って、外で食べ物を調達するしかないでしょ」


柿崎


「・・・


 そうだな。


 最悪谷川の下にも食料はあるしな」


そう言うと、俺と柿崎は食堂を出ていく...


国東と弘也も、慌てて俺たちを追いかけて行く


弘也


「お、おい、待てよ」


ロビーに戻り、食料がなくなった事をみんなに説明する。


田島京子


「・・・


 警察がこの島に来るまであと3日くらいかかるんでしょ?


 その間どうするの?」


洋子


「別に3日くらいだったらなんとかなりそうな気もするけど」


田島京子


「水だけってこと?」


景子


「少しだったら食べ物ありますよ」


確かに部員が持ってきた菓子や飲み物があれば、


最悪3日間はしのげそうだ。


鮎人


「・・・


 警察が来るって言ってても台風の都合で


 遅れるかもしれないし、


 ある程度こっちで食料を確保できるように


 しておいた方がいいと思うんだけど..」


弘也が遅れてロビーに来る


弘也


「・・・


 それでこいつって訳だ」


弘也は手に釣竿を持っている


景子


「釣竿~?」


弘也


「ああ。 餌もあるし、


 これだったら魚釣れるんじゃないか」


とりあえず俺たちは、何人かに別れ、


外に出て食料を調達してくる事にした。


弘也と景子は、海に出て釣り、


国東と京子は、森に行ってくる


柿崎と洋子、Jや他の部員は、適当に外に出、


俺と宏美先輩は浜辺で何か食べれそうなものを探すことにした。


浜辺に辿り着くと


早速何か食べれそうなものがないか探す


波打ち際を探していると、


貝を見つけた


鮎人


「・・・


 なんだこれ


 やたら黒ずんでるな」


宏美


「それ食べれない貝だと思うよ」


鮎人


「・・・


 なんで分かるの?」


宏美


「だってそれどこの海でもよく見かけるやつでしょ?


 昔父さんと海に行った時、


 "それは食用じゃない"


 って言ってたから」


鮎人


「そうなんだ...」


夜の海辺は、


とても静かで、波の音しか聞こえない


宏美先輩は貝拾いの経験があるのか、


何個か貝を拾って行く


宏美


「・・・


 だいぶ取れたでしょ」


鮎人


「・・・


 ずいぶんあるな。


 俺の方は全然」


宏美


「けっこう不器用なんだね」


鮎人


「ハハ」


少し風間先輩と打ち解けたような気がした。


鮎人


「・・・


 今回は大変でしたね」


宏美


「・・・」


鮎人


「谷川がまさかあんな事になるなんて...」


宏美


「・・・」


鮎人


「それに都都逸先生も...]


宏美


「・・・」


宏美は何も喋らない。


話題がまずかったのかと思い、


話を変える


鮎人


「そう言えば何で今回俺呼んだんすか」


俺がそう言うと、


宏美は少し戸惑いながら、話す。


宏美


「・・・


 何となく、かな」


鮎人


「昼の岬のシーンってけっこう考えてみれば


 変ってますよね?


 いきなり登場した人物が、


 ヒロインの親友の恋人役になるって...」


宏美


「・・・


 そうかもね」


鮎人


「それに宏美先輩は、


 "並河 鮎人のままでいい"


 って...」


宏美


「・・・」


鮎人


「もしかしてそれって


 宏美先輩が個人的に俺を...」


宏美が動揺する仕草を見せる


向こうから弘也と景子がやってくる


弘也


「あっ てめ~ 何してんだよ 


 あっぶねー」


鮎人


「あぶねーって何がだよ」


弘也


「お前宏美先輩に余計な事してないだろうな?」


鮎人


「余計な事ってなんだよ」


弘也


「・・・


 まあいいや


 それより何か取れたか?」


宏美が持っている貝に目をやる


弘也


「おっ けっこう取れてるみたいじゃん」


鮎人


「そっちは?」


弘也


「へへっ


 見ろよ」


そう言うと、弘也は抱えてるクーラーボックスを


俺たちの前に差し出してきた


鮎人


「・・・


 ずい分いるな」


弘也


「明日から


 "釣り人"


 と呼んでくれ」


弘也と景子と一緒に、ホテルまで戻る。


ホテルの入り口まで着くと、


何やら入り口の前に部員が集まって騒いでいる。


鮎人


「なんかあったの?」


洋子


「ま、真奈美さんが...」


嫌な予感がした。


まだ話を続ける洋子を無視し、


真奈美さんのいる二階へ駆け上る


二階に駆け上ると、


真奈美さんの部屋の前には、


国東先輩がいた。


俺がかなり焦っているので、


国東が俺の顔を見て驚いている。


そんな国東を押しのけ、真奈美さんの部屋に入る...


そこには...


開いた窓から月明かりが差し込み、


部屋の中心を照らしている


まるで礼拝堂のステンドグラスから


差し込む光に照らされたオルガンピアノのようだ...


ただし、照らされているのは、


オルガンピアノでもなんでもない


鮎人


「真奈美...さん..」


横たえている真奈美の口に


深く突き刺さったボウガンの矢は


まるで真奈美に杭を打つような


形で深く、深く、突き刺さっている


一階から他の部員も駆けつけてくる。


宏美


「・・・


 うそ、


 


 でしょ...?」


景子


「キャアアアアアアアアア」


弘也


「・・・


 何なんだよ、これ...」


柿崎


「これ...


 事故、


 じゃないよな?」


国東が部屋に入ってくる


国東


「・・・


 たぶん違うと思う」


洋子


「なんでそんな事が分かるの」


国東


「ボウガンは危ないから、


 この部屋と別の場所に置いてたんだ、


 さっき確認したら、ボウガンが無くなってた...」


柿崎


「真奈美さんが持ち出したんじゃないか」


柿崎がそう言ったが、不審な点がある


鮎人


「この矢の角度、どう見ても自分の手で打ったら、


 こんな角度にならないな」


弘也


「え? え?」


鮎人


「ほら、見てみろよ、 


 こうやってボウガンを手に持って


 自分の顔に向かって撃ったら


 こんな角度で矢は刺さらない」


国東


「それに真奈美さんが


 自分でボウガンを持ち出したとは


 思えない。


 ボウガンはホテルの外の物置に置いてあったんだから」


弘也


「・・・


 え? 


 でも、それって...」


鮎人


「真奈美さんは自殺じゃない」


周りの部員たちが凍り付く


鮎人


「しかもどうやら犯人は俺たちの中にいる」


部員がざわつく


鮎人


「とりあえず一反全員一階のロビーに集合しよう


 宏美さん」


宏美


「・・・」


宏美はかなり動転しているようだ


鮎人


「・・・


 部員をとりあえず下に集めてもらいたいんだけど」


宏美


「・・・


 あ、は、はい」

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