第3話
死出島密室島連続殺人事件(3)
ホテルのロビーに集まった、一同は、
みな無言で宏美を見つめている
都都逸(どどいつ) 貴志
「・・・
とにかく、こうなってしまったものは仕方ない
俺たちは一反島から出て、
警察を呼んでくる」
都都逸 真奈美
「・・・
そうね。」
城ケ崎 弘也
「・・・
でも、警察なんか呼んだら、
宏美先輩逮捕されるんじゃ...」
都都逸 貴志
「・・・
おそらく今回の事は事故で処理されると思う。
もしかしたら谷川がまだ生きている可能性もあるし、
やっぱり警察にいくべきだろうな」
桐島洋子
「・・・
じゃあ何人かで、谷川が落ちた辺りを探して来たらどうですか?」
都都逸貴志
「・・・
そうだな。
そうした方がいいかもしれない」
国東
「では、都都逸先生たちは、島から出て、
残った俺たちは、谷川の落ちた付近を
みんなで探してみる...」
都都逸貴志
「それが今できる一番いい方法かもしれない。
俺たちはとりあえず、
部屋に戻って支度をしてくる」
そういうと、都都逸夫妻は、
自分たちの部屋に戻って行った
国東
「・・・
しっかしこんなことになるとはねー」
桐島洋子
「・・・
宏美、どういう状況だったの?」
宏美はうつむいたまま、何も喋らない
国東
「こういう時美人って得だよな
黙ってりゃなんでも済むと思ってるんだから」
国東の一言に、弘也が反応する
弘也
「仕方ないだろ!
事故だったんだから!」
国東
「事故って言ったって、
人が死んでるんだぞ?」
弘也
「まだ死んでるって決まった訳じゃないだろ!」
国東
「あの高さから落ちて生きてる訳ないだろ。
並河は谷川が落ちるとこ見てたんだろ?」
鮎人
「あ、は、はい...」
国東
「谷川は生きてる可能性はあるのか?」
鮎人
「・・・
谷川が落ちてく時、
かなり岸壁に体をぶつけてたから...
それに海に落ちる前に、
岩にぶつかってたように見えたし...」
国東
「じゃ、死んでるだろ。
探しても無駄だな」
弘也
「・・・
とにかく俺は探してくる。
鮎人!」
正直なところ、俺は谷川が生きているとは思えない
弘也
「行くぞ!」
だが、少しでも谷川が生きている望みがあるなら、
なんとかしたいと思った。
鮎人
「・・・
分かった」
俺たちがホテルから出ようとすると、
国東はあきれた表情で俺たちに言葉を吐き捨てた
国東
「・・・
俺たちは 行かんぞ。
時間の無駄だからな」
岬の崖から、ちょうど真下にある海岸線付近に着く
辺りを見渡すが、やっぱり谷川らしきものは見つからない。
弘也
「・・・
やっぱりダメか
この高さだもんな」
崖の真下は海面だが、その崖を取り囲むようにして、
砂浜が広がっている。
鮎人
「反対側にもなにかあるかもしれないぜ」
俺がそう言うと、
弘也も重い足取りで、崖の反対側まで向かっていく。
弘也
「だいたい国東の言い方もなんなんだよな~
人が落ち込んでるときに
あんな言い方はねーだろ?」
確かに国東の言い方は多少きつい言い方だったと思うが、
人が死んでる以上、あれくらいの言い方になるのは当然だと思う
崖の反対側に辿り着くと、
そこには先ほどと同じように砂浜が広がっている。
弘也
「・・・
こっちも同じようなもんか。
こりゃ探すだけ無駄だな」
見渡す限りの砂浜には、時々松の木が生えている。
ふらふらと松の木が生えているあたりを
十分程探してみたが、
やはり谷川は見つからない
弘也
「・・・
とりあえずホテルに戻ろうぜ」
崖の近くを歩いていた、弘也は、
崖に背を向け、ホテルへ向かう。
弘也が通っている崖の近くを見る
鮎人
「・・・
おい! 弘也!」
弘也
「・・・
なんだ?」
鮎人
「横!」
松の木に隠れていて、分かりづらいが、
弘也の側の崖にはポカリと穴が開いていた
弘也
「・・・
なんだこれ
洞窟か?」
おそるおそる弘也が穴の中を覗く。
弘也
「・・・
先まで続いてるみたいだな
海水が流れてる」
もしかしたら、谷川がいるかもしれない
鮎人
「行ってみよう」
薄暗い洞窟の中を、俺と弘也で歩く...
弘也
「暗いな...」
鮎人
「これでどうだ?」
手に持っていたスマホのライトをつける
弘也
「だいぶ見やすくなったな」
明るくなった洞窟内を見渡す。
弘也
「・・・
これって...
ちょうど崖の真下まで繋がってるんじゃないか?」
洞窟内はかなり広い空洞になっていて、
その先には、明かりが見える。
どうやらその明かりの先は、谷川が落ちた
ちょうど崖の真下みたいだ
鮎人
「・・・
向こう」
洞窟の出口まで、速足で歩いていく。
「ガッ」
弘也がなにかにつまずいた
弘也
「・・・
ってー
何だよ」
鮎人
「それ・・・
カメラじゃないか?」
弘也が躓(つまづ)いた足元を、
スマホのライトで照らすと、
そこには谷川が崖から落ちる前に持っていた
カメラが落ちていた。
弘也
「・・・」
俺と弘也は顔を見合わせる
「谷川が見つかるかもしれない!」
歩いていた俺たちの足取りが速くなる
気付いたら俺たちは洞窟の出口に向かって
走っていた...
明かりが見える洞窟の出口付近まで近づく。
そこはもう崖の下の海に近い。
弘也
「・・・
おい! あれ」
弘也が指差す方を見ると、
人が倒れている。
鮎人
「・・・
谷川だ...
生きてるぞ!」
急いで谷川の元へ駆け寄る
弘也
「谷川!」
弘也が谷川に呼びかける
谷川の体を見ると、かなりひどい傷だ
谷川
「・・・」
弘也
「おい! しっかりしろ!」
谷川
「・・・
ひ、弘也」
弘也
「生きてたのか!」
谷川
「クソっ 宏美のヤツ」
谷川の口調は重い
鮎人
「・・・
あれは事故だったんだよ」
谷川
「・・・
事故?
ち、違う
あれは事故なんかじゃ、な」
言葉の途中で谷川の意識が途切れる
弘也
「谷川! 谷川!」
谷川の脈を確かめる
鮎人
「・・・」
無言で首を横に振る
弘也
「・・・
なんでだよ!
谷川!
助かっただろ!
谷川!」
谷川の遺体を担いで、洞窟の外の砂浜へ出る。
弘也
「・・・」
落ち込んでいる俺たちが、砂浜をホテルへと向かっていると、
向こうから洋子が走ってきた
洋子
「ちょっと!」
慌てて走ってきた洋子は
俺たちが担いでいる谷川を見て
さらにギョっとした
洋子
「・・・
それ...
谷川?」
弘也
「・・・」
洋子
「・・・
死んでるの?」
弘也
「そうみたいス」
全員が無言になる
しばらく沈黙が続いたが、
洋子は、思い出したように口を開く
洋子
「・・・
都都逸先生が...」
洋子はかなり動転している様子だ
鮎人
「都都逸先生がなにか」
洋子
「・・・
死んじゃった」
頭が空っぽになる
訳が分からない
都都逸が死んだ?
谷川も死んだのに?
そんな事ってあるのか?
鮎人
「し、死んだって、なんで...」
洋子
「都都逸先生が、船に乗る支度してる最中、
私たちが手伝ってたんだけど」
弘也
「・・・」
洋子
「都都逸先生が部屋に飾ってるボウガンを
宏美がふざけていじってたら、
間違って誤作動させちゃって」
鮎人
「え?」
洋子
「それがたまたま
都都逸先生がいる方に飛んで...」
鮎人
「まさかそれで都都逸先生が死んだってこと?」
洋子
「・・・」
それ以上は口に出す気にもならなかったのか、
洋子は無言で頷(うなず)く
ふと、谷川が最後に言った言葉が頭をよぎる
"事故なんかじゃない"
でもそんな事ってあるのか?
たまたまボウガンが暴発した?
都都逸目がけて?
谷川は?
たまたまぶつかって崖下に落ちた?
偶然?
鮎人
「とにかくホテルに戻ろう」
死体になった谷川をおぶって、ホテルまで急ぐ...
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