第3話 カップリング

「えっっっ、マジかよ!」


俺は思わず声を上げた。


「そそ、マジマジ。ってか、詩乃の友達って柚だったんだ。」


舞は嬉しそうに話す。昔からの明るさは健在のようだ。


「な、なあ、おい、知ってる同士なら俺にも紹介してくれよ。」


涼は本当に初対面のようだ。

詩乃が答える。


「じゃあ、私からいくね。彼女は私の友達の友田舞ともだまい。」


「改めてヨロシク~!じゃあ柚も自己紹介ヨロヨロ。」


舞は笑顔で答える。


舞は昔から笑顔がチャームポイントだ。舞の笑顔は一切の作りがなく、純粋に心から笑っているから、周りも笑顔になるしムードメーカー的存在だ。それに笑顔が似合うほど可愛い。いかにもギャルという感じの黄色いTシャツとジーンズの短パンがよく似合う。髪質はストレート。身長は詩乃さんと同じくらいだが、詩乃さんより少し胸は大きい。


「あぁ、コイツは阿部涼。昔からのダチ。」


「よ、よろしく。友田さん。」


「舞でいいよ〜。」


舞の明るく少し甘いトーンに涼の顔が少し赤くなる。


「そんな事より詩乃、早く買い物行こ行こ。」


「うん。じゃあ涼たちもよろしく。」


「よろしくったって、具体的には何をすればいいんだ?」


「えーと、私たちが選ぶ弟の服について、男子の意見を聞かせてほしいの。」


「わかった。じゃあ、選ぶまで何してれば良い?」


「あまり離れるのは面倒だし、適当にここで服でも見ててよ。」


詩乃さんはテキパキ指示する。さすが弟2人の姉という感じだ。

この事は昼休みのあと涼から聞いた。


「ってか、俺たちにも選ばせてくれよ。」


涼がグチる。


「いや、そういうのは2人に任せた方がいい。」


いくら弟の服、と言ったって俺は服えらびに自信がない。それに舞のファッションセンスはすごい。今来ている服装を見ればわかる。


「そうか、ま、この中ブラブラしてるから選んだら呼んでくれ。」


「わかった。」


「じゃあそういう事で、男子たち楽しみにしててよね。詩乃行こ。」


というわけで俺らは男女別で行動することになった。



「はぁ、この中をブラブラねぇ。」


洋服選びに夢中の2人を遠目に、俺と涼は店内のベンチに座っていた。お互い服には間に合っていた。だからこれといってほしい服も無いし、服に興味があると言う訳では無いので退屈だった。


「なあ、涼。」


「ん、なんだ?」


涼にはなしかける。少し緊張したが、詩乃さんの事について涼に少し聞きたかった。


涼、舞に比べ俺は何も知らなすぎる。


「…あのさ、そ、その、詩乃さんのことなんだけどさ。えっと、その。」


自分に驚く。自分で自分を殴りたいとさえ思った。

ああ、ヤバい。『詩乃』というワードで緊張してしまう。まさかこんなにもタジタジになるなんて。


お、落ち着け。あくまでさりげなくだ。『好き』だなんて涼にも言えない。


涼は冷静に返してくる。


「いや、詩乃でいいって。詩乃も嫌に思わないだろ。んで、なんだ。」


「ああ。その、詩乃と涼とはどういう関係なんだ?」


「どういう関係?うーん、まぁなんだ、それぞれの父親が職場の知り合いだった

んだ。そんで、住んでるところも近かったから、プライベートでも結構会ってたんだよ。まあそれで仲良くなったって感じかな。最近は会ってなかったから、久しぶりだったけど。」


「へぇ、そうなんだ。じゃあじゃあ。詩乃ってどんな感じな子なんだ?」


「どんな感じの子?うーんそうだな、一言で言うと気が強い。普段は物静かだが、言いたい事はハッキリと言ってくる。正直な性格だな。あと俺と違って昔から頭が良い。かな。」


涼と詩乃とは本当に長い付き合いなのだろう。『頭が良い』か。頭脳明晰であの容姿だなんて、スペックが高い。スゴすぎる。


「へえ、じゃあ、涼にとって詩乃は?」


気づけば俺は熱気を帯びていた。




しかし、


涼は冷静な態度に、俺は我に帰った。


「は?いや別に仲のいい知り合いって感じだけど。なんだ急に。」


ヤベ、つい熱くなってしまった。


涼が真顔で見つめてくる。


嫌な予感がする。


「アレ、もしかして」


少し沈黙をはさんで涼がニッと笑みを浮かべる。この後の展開が頭をよぎる。

ヤバいヤバいヤバいヤバい。この展開は…。


「ん、そ、そっちこそなんだ。」


とっさに冷静な態度を装う。

頼む。バレるな。

バレるな。

バレるな。


そんな願いも虚しく涼からは予想通りの言葉を発した。




「お前、詩乃のこと好きだろ。」




時間が止まったように空気が固まる。


あー。終わった。

顔がすごく熱い。

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