第22話 バージレーション王国に向かいます

翌日、早速オーフェン様と一緒に馬車に乗り込んだ。


「サーラ、今日から約1週間かけてバージレーション王国に向かい、1週間程度滞在した後、また1週間かけて帰って来る。かなりハードで申し訳ないが、我慢して欲しい」


「私はオーフェン様と一緒にいられるのであれば、たとえどんなハードなスケジュールでも問題ないわ。それに今まで平民として働いていたから、体力なら多少自信があるし」


マドレアおば様のお店では、朝から晩まで動きまくっていたのだ。多少の事ならへこたれない。


「サーラ、ありがとう。長い間留守にしてごめんね。これからは、ずっとずっと一緒だから」


そう言ってギューッと抱きしめてくれるオーフェン様。この温もりが、たまらなく落ち着く。


馬車に乗っている間は、オーフェン様に色々な話をした。卒業パーティーでは、王太子や元父親に言いたい事をしっかり言えた事。オーフェン様のお陰で、全て上手く行った事。マドレアおば様のお店で楽しく働いていた事。少しだけ料理が出来る様になった事など。


私の話を、相変わらず笑顔で聞いてくれるオーフェン様。彼はいつでもどんな時でも、こうやって私の話をしっかり聞いてくれる。そう、ずっと孤独で辛かったあの時から、それは変わらない。


夜はホテルに泊まった。正直ホテルに泊まるのは初めてだ。元両親は旅行が好きだったが、私は一度も連れて行ってもらえなかった。いつも3人で楽しそうに出かけていくのを、部屋から見つめていた。


その為ホテルに泊まれるのは、嬉しくてたまらない。


「オーフェン様、見てください!お風呂がこんなにも大きいわ。それに、景色もとっても奇麗よ」


嬉しくてつい興奮してしまう。


「サーラはホテルに泊まった事が無いのかい?」


不思議そうに訊ねて来るオーフェン様。


「はい、元両親は旅行が好きでしたが、私はいつも留守番だったので」


私の言葉を聞き、大きく目を見開いたオーフェン様。その後、すぐに抱きしめられた。


「君が元侯爵から冷遇されていたのは知っていたが、そこまでとは…ごめん、嫌な事を思い出させてしまったね。さあ、晩ご飯にしようか」


気を取り直して、晩ご飯を食べる。奇麗な夜景が見える席を準備してくれたので、美しい夜景を見ながら、美味しい料理を楽しんだ。


その次の日は、オーフェン様の弟の第五王子が治めている国に滞在した。初めて行く異国に、これまた大興奮だ。オーフェン様より少し前に国を手に入れたらしく、まだ国自体は落ち着いていないらしい。それでも私たちを温かく迎えてくれた。


それにしても、第五王子はオーフェン様にそっくりでびっくりした。オーフェン様曰く、兄弟姉妹の中でも第五王子とは一番仲が良いらしい。2人並んでいると、どちらがどちらなのか分からないくらいそっくりだ。


有難い事に、私の事も気に入って下さり


「サーラ嬢さえよければ、いつまでも滞在してくれてもいいんだよ。それとも、この国に住むかい?」


なんて事も言ってくれた。そんな第五王子に対し、なぜかオーフェン様は物凄く怒っていた。


「サーラ、あいつには絶対近づいたらダメだからね。さあ、こんな国はさっさと出よう」


そう言って、翌朝にはさっさと馬車で出発する事になった。一体どうしたと言うのかしら?その後も色々な国を通過しながら、バージレーション王国を目指す。


今までずっとカステカ王国の王都にいた私には、全てが新鮮で毎日が楽しくてたまらない。


何だかんだであっという間に1週間が過ぎ、ついにバージレーション王国に着いた。さすが大国、とにかく人も多いし街もかなり活気づいている。


「サーラ、あれが王宮だよ」


丘の上に物凄い立派な宮殿が建っていた。見た感じ、カステカ王国の宮殿の5倍はありそうだ。オーフェン様はこんな立派な国の王子様だったのね!本当に驚きだ。


馬車は丘を登っていき、ついに王宮の門までやって来た。近くで見ると、やはり大きい。


「さあ、サーラ。行こうか」


差し出された手を掴み、ゆっくりと馬車から降りる。そして、王宮内に足を踏み入れた。中もやっぱり立派だ。あちらこちらに、物凄く高級そうな置物が並んでいる。


そして、これまた立派な扉の前で立ち止まった。


「サーラ、この扉の奥に僕の両親と兄夫婦がいるんだ。さあ、行こうか」


そう言ってドアを開けたオーフェン様。ちょっと、まだ心の準備が出来ていないのだけれど…急いで制止しようとしたのだが、時すでに遅し…扉が開いてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る