第21話 全てが急展開過ぎて頭が付いて行けません

「う~ん」

ゆっくり目を開けると、立派なシャンデリアが目に付いた。びっくりして飛び起きると、目の前にオーフェン様がいた。


「サーラ、目を覚ましたのだね。よかった」


ギューッと抱きしめてくれるオーフェン様。そうだわ、オーフェン様が帰って来てくれたのだった。それから…


一気に記憶が蘇った。そうだわ、オーフェン様がバージレーション王国の第三王子で、この国の国王になったのだと。そして、私はそんなオーフェン様と!


「サーラ、急に倒れたからびっくりしたよ。体調の方は大丈夫かい?とにかく、すぐに医者を呼ぼう」


「オーフェン様、大丈夫よ。ビックリしただけだから」


医者を呼ぶよう指示を出そうとしたオーフェン様を止めた。


「それよりも、ここは王宮なの?」


パッと見たところ、とても豪華だが見た事が無い部屋だ。


「ここは離宮だ。サーラにとっては、王宮はあまりいい思い出はないだろう?さすがに新たに王宮を建て直す事は出来ないが、全面的にリフォームする事にした。とりあえず、それまでの間は、離宮で暮らそう」


「オーフェン様、ありがとう。そこまで私の事を気に掛けてくれているのね。でも私は大丈夫よ。オーフェン様と一緒なら、どんな場所でも暮らしていけますわ」


たとえどんなに辛い場所であっても、オーフェン様と一緒ならその場所ですら、幸せな場所に変わる様な気がした。


「ありがとう。サーラ。でもさすがにあの元王太子が、君と生活するために準備した寝室を使う事は出来ないよ。とにかく、大規模なリフォームを進めているから、少し狭いがここで我慢して欲しい」


「わかったわ。とにかく私はオーフェン様と一緒なら、どこでもいいわ!それで、王族や貴族たちはどうなったのですか?」


優しいオーフェン様の事だから、殺しはしないとは思うけれど…


「王族と一部の貴族たちは、僕の兄弟達が治めている国で、それぞれ生活をしてもらう事にしたよ。もちろん、それなりの生活を保障してね。ちなみに君の元家族や君を虐めていた令嬢たちも、それぞれ別々の国に行ったから安心してほしい」


そう言ってにっこり笑ったオーフェン様。


「そうでしたか。それでは、もうあの人たちはこの国にいないのね。我が国の貴族や王族まで気に掛けてくれて、ありがとう。いくら私に酷い事をしていたからと言って、さすがに殺されたりしたら嫌だなって思っていたの。でも、皆他国でそれなりの生活が送れると聞いて、ホッとしたわ」


「サーラ、君は本当に優しんだね。あんなクズ共にも情けを掛けるなんて…」


少し困った顔で笑ったオーフェン様。


「それで、これからの話なのだが、僕の家臣たちをこの国で生活できるよう爵位を与える事にした。もちろん残っている貴族たちには、そのままの爵位を与えるつもりだ。そして先日、僕が新たに王になった。さらに1ヶ月後、新国王として国民に挨拶をする予定になっている。既に誰にどんな爵位を与えるかは決まっているのだが、正式な授与は、その時に一緒に行う予定だ」


もうそんな所まで話が進んでいるのね。なんだか、急展開過ぎて目が回るわ。


「サーラ、大丈夫かい?続きを話してもいいかな?」


明らかに動揺している私を気遣ってくれるオーフェン様。


「ええ、大丈夫よ」


私の返事を聞いて、再び話し始めるオーフェン様。


「1ヶ月後の挨拶には、君も僕の妃として参加して欲しい。それから、一度父上と母上にも会ってほしい。バージレーション王国の場合、結婚するには両親の許可がいるんだ。もちろん、家の両親は反対しないから安心して欲しい。とにかく1ヶ月後の挨拶までに、許可を取る必要がある。バージレーション王国までは片道1週間かかるからね。とにかく時間が無い、明日には出発しよう」


「あの…明日?」


王妃になる事は何となく覚悟していた。もちろん、オーフェン様の両親にも会いたい。でも、こんなに急だなんて。心の準備が出来ていない。それにエイダン様の時の様に、嫌われたらどうしよう…


「サーラ、急がせてごめんね。でも、あまり時間が無いんだ。ただ結婚式は半年後に行う様手配するから、少しは時間があるよ」


そう言って、にっこり笑ったオーフェン様。半年後って…全然時間が無い気がするのだけれど…


「そうそう、この国の名前を決めないといけないんだけれど、何がいいかな?僕は正直国の名前なんて全然興味が無いから、全く思いつかなくて。でも、カステカ王国のままでは嫌だろう?サーラは何がいいと思う?」


ギャーーー

今度は国の名前ですって!とにかく、全てが急展開すぎて付いて行けない。


「実は明日この国を発つまでに、決めようと思っているんだ。それに、国民にお披露目する時に着るドレスも決めないといけないんだよ。やらないといけない事が沢山ありすぎて、目が回りそうだ。早速今からデザイナーを呼ぶから、ドレスを決めようか」


そう言うと、さっさとデザイナーを呼び出したオーフェン様。正直ドレスの色はもう決まっている。もちろんオーフェン様の瞳の色と同じオレンジだ。デザインは、デザイナーに全て一任した。


「サーラがデザインを決めてもいいんだよ」


そうオーフェン様は言っていたが、はっきり言ってそんな時間はない。色だけでも決めさせて貰えたので、十分満足だ。


その後はオーフェン様と一緒に晩ご飯を食べた。久しぶりに食べるオーフェン様との食事が嬉しくて、ついおしゃべりに花を咲かせてしまった。その為、国の名前を決める事が出来なかった。


悩んだ末、結局国民を含め皆で決める事で話は纏まった。とりあえず2週間名前を募集した後、いくつかの名前に候補を絞り、私たちがバージレーション王国から帰国した後、他の貴族と一緒に多数決で決める事になった。


「また面倒な事を…」


と、オーフェン様のお父様、じゃなかった、家臣のバザフが嘆いていた。ちなみに、マドレアおば様は私の専属メイドとして、バージレーション王国に一緒に付いて来てくれるらしい。


まさか、マドレアおば様がオーフェン様付のメイドだったなんて、かなり驚きだ。とにかく明日は朝が早い様で、ゆっくり休む様にオーフェン様に言われた。


今まで平民として自分で湯あみをしていたのだが、今日からマドレアおば様率いるメイドたちが洗ってくれている。


「なんだか変な感じね」


そうぽつりと呟くと


「何を言っているのですか!サーラ様は王妃になられるのですよ。そもそも、元侯爵令嬢でしょう。早く慣れてください!」


そうマドレアおば様に言われた。急に言葉遣いも変わり、呼び方も“ちゃん”から“様”に変わったのだ。違和感ありすぎて、変な感じがする。


やっと落ち着き、ベッドに潜り込んだ。物凄くフカフカで、5人は寝られるのではないかと言うくらい、大きなベッドだ。


とにかく今日は色々とありすぎて疲れた。オーフェン様が帰って来てくれただけでなく、プロポーズまで受けた。さらに平民から王妃になるなんて。本当に、人生何が起こるかわからないものね。


でも、オーフェン様とこれからずっと一緒にいられる。そう思ったら、嬉しくてたまらない。とにかく今日はもう寝よう。おやすみ、オーフェン様。


オーフェンの事を考えながら、ゆっくり目を閉じたサーラであった。

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