第20話 サーラを虐めた罪は重いぞ~オーフェン視点~

第五王子の協力の元、カステカ王国の国境付近まで来た。


「いいか、極力犠牲者を出したくない。一気に攻めて、さっさと落とすぞ!」


こうしてカステカ王国との戦いの火ぶたが切って落とされた。ただ、今まで平和ボケしていたカステカ王国軍に比べ、戦い慣れている我がバージレーション王国軍。正直相手にならない。あっという間に、王宮まで攻め込んだ。


正直あっけなさ過ぎて、サーラ含め平民は王宮を制圧した事に、気が付いていないかもしれない。


「オーフェン殿下、王族を拘束しました」


「分かった、ありがとう。後、この名簿に載っている貴族共も、全員縛り上げて王宮に連れて来い!」


そう、僕が渡したリストには、サーラを虐めていた令嬢の家、さらにウィヴィッズ侯爵家の名前もある。僕は基本的に平和主義だ。サーラに手を出していない貴族共を、どうこうしようとは思っていない。


もちろん、僕に逆らえばその時は対応するが、既にこの国の貴族たちは白旗をあげている。そんな彼らに何かしようとは考えていない。でも、サーラを虐めていた奴らは別だ。徹底的に潰してやる。


数時間後、リストに載っていた貴族たちが全員集められたと言った連絡が入った。早速、貴族や王族を縛り上げられている広間へと向かった。


僕が部屋に入ると、かなりの数の貴族と王族が縛り上げられ、震えている者、涙を流している者、真っ青な顔をしている者など様々だ。


「皆の者、ご機嫌はいかがかい?僕がこの国を攻めた張本人、バージレーション王国の第三王子、オーフェン・サザル・バージレーションだ。そこの君、僕の事知っているだろう?」


1人の令嬢に話しかけた。そう、この女は僕の可愛いサーラの頬を叩き、階段から突き落とした女だ。


「も…申し訳ございません…存じ上げません」


涙を流しながらそう言った令嬢。


「そうか、それなら、これならわかるかい?」


貴族学院に通っていた時にかけていた、分厚い眼鏡をかけた。すると何人かの令嬢と、さらに王太子も反応した。


「君は、バザダフィ男爵家の…」


そう叫んだのは王太子だ。


「そうだよ、僕はね。ずっとどの国を攻めるか探していたんだ。そして、たまたまこの国にたどり着いた。僕は国で、ある女性に恋をした。その女性は誰よりも心優しく、美しい女性だった。それなのに、君たちは!僕の可愛い彼女を傷つけた。だから、僕は君たちを許さない!」


そうはっきりと告げた。


「僕は先日この国の王になった。そして僕の愛する彼女は、僕と結婚してこの国の王妃になる。心優しい彼女がお前たちの今の姿を見たら、きっと僕に助けてやってくれと言うのだろうな。だから彼女の知らないうちに、お前たちを始末する事にしたよ」


一気に震えだす貴族や王族共。


「お言葉ですが、私たちが何をしたというのですか?正直身に覚えがございません!」


1人の夫人がそう叫んだ。


「そうだな、君には身に覚えがないだろうな。でも、君の娘には身に覚えがあるはずだ」


真っ青な顔をした令嬢が、ポツリと呟いた。


「まさか…サーラ様?」


「サーラだって!待ってくれ。サーラは私たちの娘だ。どうして実の両親の私たちまで裁かれるんだ!」


そう言って叫んだのはウィヴィッズ侯爵だ。


「娘?さっさと勘当したくせに、何が娘だ!あなたが今までサーラにして来た仕打ちを、僕は絶対に許さない!でも、僕は心が優しいから、命だけは助けてやる。そうだな!僕の産まれた国には、奴隷制度があるんだ。お前たちを、バージレーション王国の奴隷商に売り飛ばす事にしよう。どうだい?優しいだろう?」


今までぜいたくな暮らしをしていた貴族や王族たちにとって、平民以下の奴隷など、死よりも苦しいだろう。でも、今まで散々サーラに酷い事をして来たんだ。一生かけて、償ってもらう。


「こいつらを奴隷商に売る準備をしろ」


近くにいた家臣に指示を出す。


「お待ちください!奴隷だなんて!」


そう叫んでいるが、知ったこっちゃない。一生惨めったらしく生きて行けばいい!次々と連れていかれる貴族や王族共。その時、元王太子が目に付いた。そうだ、こいつの存在を忘れていた。こいつは奴隷にはしないんだったな。


「待て、元王太子のエイダンだけはここに残せ!」


僕の指示で、元王太子だけがここに残された。


「君はあれほどサーラに酷い事をしていたにもかかわらず、サーラに再び婚約してくれと迫った様だな!一体どういうつもりだ!」


僕の言葉を聞き、唇を噛みながら睨みつける元王太子。


「僕はずっとサーラを愛していた!愛していたからこそ、冷たく突き放したんだ。そして、孤立無援になった状況で結婚し、その後は大切にするつもりだった!そうする事で、サーラは僕に依存するはずだったんだ!そうか、お前がサーラに近付いたから、僕の計画が狂ったのか!」


は?こいつ、何を言っているんだ。愛していたからこそ、冷たく突き放しただと?ふざけているのか?


「それじゃあ、君はサーラから冷たくされた時、どう思った?嬉しかったかい?さらにサーラのせいで、ずっと1人ぼっちだったら、君はどう思う?それでもサーラに依存するのか?」


「それは…」


下を向いて黙り込んだ。


「君は7年もの間、サーラを苦しめ続けた。サーラはずっと人の温もりを求めていたんだよ。でもね、僕は君には感謝しているよ。君がサーラに冷たくした上、さらに周りにも嘘を吹き込んでいたからね。完全に孤立していたサーラを手に入れるのは簡単だったよ!ありがとう。だから、君は奴隷にはしない。この王宮でずっと生活してもらおう」


「どういうつもりだ!」


僕の発言が信用できないのか、怪訝そうな顔でこちらを睨んでいる。


「もちろん、サーラには二度と会わせない。でも僕とサーラが愛し合う姿を見せてあげるよ。正直サーラの笑顔を君なんかには見せたくはないが、特別だよ。僕に向けられるサーラの愛情を、指をくわえて眺めているといい。冷たい地下牢でね」


そう、自分には決して向けられないサーラの笑顔を、ただ眺めていればいい。それがどれほど辛いか、あの男にわからせてやる!もちろん、本物の姿を見せるつもりはない。映像型の道具を使って、地下牢にサーラの様子を流してやる。そうだな、最低7年は見せつけてやるか。7年経ったら、その時またどうするか考えよう。


「ふざけるな!サーラは僕のものだ!お前なんかに触れさせない!絶対に!」


物凄い勢いで僕に叫ぶ元王太子。どんなに叫んだって、無駄なのにね。


「随分興奮している様だ。さっさと地下牢に連れて行ってやれ」


僕の指示で、地下牢に連れていかれる元王太子。


さあ、全て終わった。近いうちにサーラを迎えに行こう。もちろん、その映像も地下牢に流してやる予定だ。


サーラ、全て片付いたよ。もう君に酷い事をした奴らは、1人を除いて近いうちにこの国を出て行くだろう。残りの1人も、決して君に会わせるつもりはないから安心して欲しい。


待っていてね、サーラ。残っている仕事を全て片付けたら、迎えに行くからね。



~あとがき~

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

断罪が終わった数日後、サーラを迎えに行ってプロポーズしたオーフェン。とりあえず、サーラを虐めていた奴らは全て退治しました。


どのタイミングになるか分かりませんが、断罪後のエイダン視点も書きたいと思っています。

※もしかしたら、番外編で書くかもです。


もう少し話が続きますので、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

よろしくお願いしますm(__)m

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