第11話 卒業パーティー当日を迎えました
卒業パーティー当日
外は雲一つない晴天だ。まるで私の門出をお祝いしてくれている様に。でも、まだ油断はできない。私のふるまい1つで、婚約破棄できるかどうか決まるのだ。とにかく、上手く婚約破棄をした後は、お父様から勘当してもらわないといけない。
大丈夫よ、きっとうまくいくわ。オーフェン様から貰ったネックレスを強く握る。オーフェン様、どうか私の事を見守っていてください。そっとそう願った。
「お嬢様、そろそろ卒業パーティーに行くご準備を」
「ええ、分かっているわ。ある程度自分で準備するから、最後の仕上げをお願い」
「かしこまりました。それではまた後ほど参ります」
有難い事に、うちのメイドは物凄くやる気がない。そのため、自分が楽できる提案をすると、喜んでそれに従うのだ。早速着替えをしていく。ドレスも何とか自分で着る事が出来た。
本来ならコルセットでギューギュー腰を締めるのだが、こんなものは要らない。正直付けなくてもバレないしね。
どうして貴族はあんな苦しいものを好き好んで付けているのかしら。全く理解できない。ある程度着替え終わったところで、メイドがやって来た。さすがに髪形などはメイドがやってくれる。
やはりティアラまで頭に乗せられた。どこかの国の王女でもないのに、ティアラだなんて…それも卒業パーティーで。きっと笑い者になるでしょうね。
今日も全身紫コーデの完成だ。鏡に映る自分を見て、吐き気を覚えるが、でもそれも後数時間の辛抱。そう思えば、この苦痛も耐えられる。
玄関に向かうと、なぜかエイダン様が待っていた。
「おはよう、サーラ。僕が贈ったドレスは気に入ったかい?やっぱりサーラは、紫色がよく似合っているよ」
私が大嫌いな色だとはっきりと告げたのに、よくそんな白々しい事が言えるものだ。
「おい、サーラ!何をボーっとしているんだ!殿下にお礼を言いなさい!エイダン殿下、申し訳ございません。サーラは少しボーっとしているところがありまして」
早くお礼を言え!とギャーギャーお父様が騒ぐので
「エイダン様、このような高価なドレスや宝石を送っていただき、ありがとうございました」
深々と頭を下げ、お礼を言った。
「喜んでくれたみたいでよかったよ。それじゃあ、行こうか」
そう言うと、また手を差し伸べて来た。仕方なく手を取り、馬車に乗り込む。ちなみに卒業パーティーには、卒業生とその保護者が参加するのが一般的だ。そのため、今日は陛下や王妃様も来る。もちろん、家の両親もだ!
とにかく失敗は出来ない。再び気合いを入れなおした。
「サーラ、今後の事なのだが、卒業パーティーを終えたら、すぐに王宮で生活してもらう様手配した。さすがに今日からという訳にはいかないけれど、明日から王宮で生活してもらうから、そのつもりで」
「そうですか…」
正直婚約破棄するのだから、今日でも明日でもどうでもいい。とにかく今は、婚約破棄を成功させる事で頭が一杯なのだ。
しばらく走ると、学院が見えて来た。今日の会場は、学院内の大ホールだ。昨日卒業証書は受け取っているから、今日はパーティーのみ行われる。
エイダン様にエスコートされ、会場に入った。会場に入ると、私の姿を見てあからさまに悪口を言う令嬢たち。そして始まった卒業パーティー。
オーフェン様の作戦では、どうやらこの学院の中に協力者がいるらしい。その協力者が、うまく誘導してくれると書いてあった。
でも、どうやって誘導するのかしら?
その時だった。
1人の令息が私に指をさして、叫んだのだ。
「サーラ・ウィヴィッズ!お前の様な女は、エイダン殿下の婚約者にふさわしくない!エイダン殿下はお前との結婚を、心底嫌がっている!それなのに、お前はエイダン殿下に泣いて縋りつき“エイダン様と結婚できないなら死んでやる”と脅しているそうではないか!そんな女を、このままエイダン殿下と結婚なんかさせられない。今この場で、婚約破棄を受け入れろ!」
令息は叫んだ瞬間、私の方を見て小さく頷いた。そうか、この人が協力者なのね。会場は一気に騒めきだした。
「確かにこの令息の言う通りですわ!サーラ様、いい加減婚約破棄をしてあげてくださいませ」
「そうですわ!エイダン殿下がどれほどあなたを嫌っているか、あなただってわかっているでしょう」
「本当に、図々しい女!それにしてもその衣装はなに?どれだけエイダン様好きアピールをしているのかしら!恥ずかしい女ね」
令息の一言で、一気に私に婚約破棄を迫る令嬢たち。
「エイダン殿下からも言ってやってください!婚約破棄をしてくれ!と」
協力者の令息がエイダン様に詰め寄る。周りからも期待の眼差しがエイダン様に向けられている。なるほど、この状況ならきっと、エイダン様は間違いなく私に婚約破棄を申し出るはずだわ。
「そうだな!サーラ、僕は君の事が大嫌いだ。だから、婚約破棄をして欲しい」
皆に聞こえる様、大きな声で叫んだのだ。お父様が慌ててこちらに走って来るのが見えたが、もう遅い。
さあ、ここからが私の出番ね。
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