第4話 苦痛でしかない夜会に招待されました
オーフェン様に話をした翌日、早速宝石を持ってきた。両親に買ってもらった宝石はさすがにバレそうだったので、エイダン様から誕生日プレゼントで貰った宝石を中心に持ってきた。見事にアメジストばかりだ。
「オーフェン様、早速宝石を持ってきましたわ。これは売れるかしら?」
持ってきた宝石をオーフェン様に渡した。
「これは、エイダン殿下に貰ったものかい?」
「ええ、そうです!なぜか誕生日には、必ず私にアメジストの宝石を贈り付けて来るのです。そのせいで、アメジストが大嫌いになってしまいましたわ」
正直見るのも嫌なぐらい嫌いだ。とにかく、こんなもの早く売ってしまいたい。
「なるほど、分かったよ。それにしてもさすが王族だな。結構品質がいい。正直この宝石だけで、平民なら5年は暮らして行けると思うよ」
「まあ、そんなに暮らして行けるのですか?」
「ああ!でも、資金は多ければ多いほどいいからね。換金出来るものは換金していこう。それから、エイダン殿下との婚約破棄なのだが、その件に関しては僕に任せてくれるかい?いい方法があるんだ。取り合えず、卒業パーティーで婚約破棄をしよう。それまで辛いと思うが、準備期間と思って耐えて欲しい」
「そこまで色々と考えて下さっているのね。ありがとう、オーフェン様!」
卒業パーティーで婚約破棄か。後少しで、この苦痛しかない世界から解放されるのね。そう考えると、嬉しくてたまらない。
オーフェン様と楽しく話をした後は、再び教室に戻る。授業が終わり、いつもの様に図書館に行こうとした時、エイダン様に呼び止められた。
「今度夜会があるんだ。残念ながら、君をパートナーとして連れていかなければいけない。ここに詳しい日時は書いてあるから、読んでおいてくれ。当日迎えに行くから、早めに準備をしておくように」
そう言って手紙を渡して去って行ったエイダン様。夜会か…行きたくない…
でも、この夜会がきっと最後になるだろう。そう思ったら、なんだか乗り切れるような気がして来た。
夜会は苦痛だが、とにかく今は平民になる為の準備をする事が先決だ。早速図書館で平民についての本を読み始める。なるほど、針仕事なども女性の仕事なのね。針なんて触った事が無いけれど、一度やってみよう。それに料理や洗濯、掃除なども行わないといけないらしい。
有難い事に、料理や洗濯、料理の仕方も書いてあった。よし、この本を写しておこう。そしていざ平民になった時、この本の写しを見ながらこなせばいいんだわ。
そうだ、休日はメイドの掃除や洗濯風景を見学して、目でも覚えよう。料理は…何とかなるだろう。とにかく後3ヶ月、やらなければいけない事が沢山ある。頑張らないと!
屋敷に戻ると、早速自分で着替えを済ませる。ふと厨房を覗くと、忙しそうに料理人たちが料理をしていた。包丁はあんな風に使うのね。なるほど、ああやって料理を作るのか。
厨房の入り口から、こっそり料理人の料理風景を眺める。
「お嬢様、そんなところにつっ立っていては邪魔です。そろそろ晩ご飯の時間ですので、食堂にお越しください」
「ごめんなさい。わかったわ。すぐに行くわね」
急いで食堂へと向かう。既に両親が座っていた。
「相変わらずお前はトロいな!まあいい、今度の夜会、エイダン殿下と一緒に行くのだろう?いいか、くれぐれもエイダン殿下の機嫌を損ねる様な事をするなよ!」
機嫌を損ねるなと言われても、私がエイダン様の前に現れただけで、既に機嫌が悪い。そんな状況で、どうしろと言うのかしら?
その後も何度も何度も「エイダン殿下の機嫌を損ねるな」というお父様。結局料理の味も分からないまま食事を済ませ、自室へと向かった。そう言えば、湯あみも自分でするのよね。
いつもメイドたちがしている様に、浴槽にお湯を溜め、服を脱いで自分で体を洗う。なんだ、湯あみって意外と簡単ね。こうやって少しずつ出来る事を増やしていく。
湯あみの後は、エイダン様から貰った招待状を開封した。正直見たくもないが、見ない訳にはいかない。何々、夜会は2ヶ月後、王宮で行われるのか。随分先なのね。でも、まあいいわ。
きっといつもの様に、お母様が張り切ってドレスを準備するのだろう。オーフェン様の瞳に合わせた、紫色のドレスをね。
そうだわ、最後の夜会なのですもの。今回は私の好きな色のドレスにしましょう。そうね、エメラルドグリーンのドレスがいいわ!宝石も私の瞳の色に合わせて、ルビーにしましょう。
早速お母様に提案したのだが…
「何を図々しい事を言っているの?ドレスも宝石も私が決めるわ!あなたが口出しするなんて、10年早いのよ!」
そう言われてしまった。そうよね、よく考えたら、あの人が私の意見を聞いてくれる事は無いのだった。分かっていたのに、本当に私ってバカだ…
とにかく、これで最後の夜会になるはず。後1回苦痛に耐えればお終いだ!いつも通り、壁にもたれて耐えるしかない。そう自分に言い聞かせるサーラだった。
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