第35話おとなりさん
香月 薫の立花家での生活は愉しく過ぎていく。アパート探しはやはり1年未満の契約は、難しく、マンスリーマンションの空きも同時に探している状況だ「香月先生、部屋見つけたよ?」いきなり声を掛けて来たのは木島であった「木島さん 部屋って?」「俺の隣の部屋だけどね」「隣?」「やっぱ嫌かな?」「いえそんなことは無いのですが、いきなりだったので」「時間有るならこれからでも行ってみる?」「はい」薫は早速着替えて木島の案内するアパートへ向かった。5階建てのアパートには【よしアパート】の看板が掛かっている。見つかった部屋はまだ5年もたっていないと思われるアパートの2階の真ん中の部屋である木島は部屋の案内を始める「駅から徒歩で10分。車じゃないから駐車場も使わないでしょ?」「はい」「近くにスーパーもあるし、商店街もあるよ。香月先生、チャリは?」「チャリ?」「自転車だよ」「乗れますよ❗」「そりゃそうでしょう。自転車なら5分で病院へ行けるよ」「良いですね。全く問題無いです。ここに決めます。木島さんありがとうございます。」あっさりと決めてしまう薫に「間取りとか他と比べなくて良いのか?」木島の方が心配する「これ以上の好物件は無いですよ。」薫は断言する。実際、10ヶ月位しか居られないのだ。マンスリーマンションより低価格で住めるし全く問題ないのだ「それじゃあ不動産屋を紹介するね。付いてきて」そう言うと木島は部屋に鍵を掛けて歩きだす。薫は慌ててついて行く。5分も掛からないところに良郎不動産と言う看板が掛かったビルの1階にそれはあった「ちはー」木島は馴染みらしく親しげだ「あら、良平さんいらっしゃい」「俺の隣の部屋借り手見つかったから手続きよろしく」「あら早いのね?」「じゃあ香月先生、俺はこれでー」「良平君お茶くらい飲んでいけば?」「俺勉強有るから」と薫と事務員を残して出ていってしまった「相変わらずねぇ」事務員はニコニコして薫を席に案内する。手続きが済んで明日にでも越せるようにと鍵を預かってきた。まずはお掃除だ。明日は休みだし、朝から掃除と引っ越しの準備だわ。
立花家に戻ると「部屋が決まりました。出来るだけ早く片付けて引っ越ししますね。本当にお世話になるばかりでありがとうございました」「あらぁ…決まったのぉ。ずっとうちに居てくれて良かったのに」本心から残念がる昌代「寂しいが仕方あるまい。薫先生が休まる場所が一番だぞ。たまには遊びに来てくれるんだろう?」辰治が声をかける「勿論です。私にとっては実家と一緒です」「まあ嬉しいこと言ってくれるじゃない?」嬉しそうに昌代が笑う「本心です」文野が嫁に出た後にまた娘が嫁入りする様な寂しい気がする立花夫妻だった
翌朝、朝食をとって早速アパートへ掃除に向かう。鍵を開け中にはいると昨日は気付かなかったが台所には冷蔵庫が設置してあった 「冷蔵庫?何で?有るのかしら?」呆気にとられた薫の元へ「お早う❗香月先生、来てるんでしょう?」と木島の声が掛かる「お早うございます。木島さん」「早いね。まだ8時だよ」少し眠たそうだ「朝から煩かったですか?ごめんなさい」「大丈夫俺はもう起きてたし。反対側は朝7時には仕事に出てしまうからもういない」「そうでしたか…。あそうだ、冷蔵庫があるんです。」「ああ前の住人の置き土産だよ」「置き土産ですか?」「きれいにしてあるだろう?良かったら使ってよ。洗濯機も置いてあるよ。」「まぁ本当。良いんですか?」「邪魔なら不動産屋にいって処分して貰いなよ」「いえ有りがたく使わせて貰います」「部屋もきれいにされてるんです。お掃除してくれたんですか?」「ここの不動産屋は定期的に掃除するんだよ。」「助かります。軽く掃除機を掛けて拭き掃除したらきれいですからすぐ越せますね」「今から荷物運ぶ?手伝うよ」木島は手伝いを買って出た「良いんですか?折角のお休みじゃないですか?」「大丈夫。勉強して体が鈍ってるんだ。運動だよ。」力こぶを見せてにっこり笑う「ありがとうございます。ではお願いします」薫は拭き掃除まで終わらせ立花家に戻った「あら木島君、久し振りね。皆さん元気?」昌代は木島の顔を見て声をかける「はい御無沙汰してます。師匠もお元気そうで何よりです」木島は礼儀正しく挨拶をする「ああ良平君には入院した時に大分世話になったからな。今日はどうした?」辰治も出てきた「薫先生の引っ越しの手伝いですって」「おお、ご苦労さんだな。うちの車で運ぶか?」「いえ。僕のワゴン車持ってきましたので。それに載せていきます」「相変わらず気が利くな良平君は」「洗濯機と冷蔵庫が置き土産で置いてあるんで買わなくて済みました。あとはカーテンとか買いに行くんです。」「あらカーテンはうちで使ってないのを持っていきなさいよ」「でも…。」「折角だからそうすれば?」「そうよ。有るのは使えばいいのよ❗私のお下がりばかりだけど。」「文野さん❗」文野も顔を出した「師範代、こんにちはー」「良平君お手伝いだって?私も手伝うわよ?」「そんなとんでもない」薫は慌てて手を振るが「遠慮しないで。あっ修二さんは出勤してるから居ないのよ。私だけ。暇潰しよ。良いでしょう?」殆んど強引に参加するらしい「文野さん。ありがとうございます。」「食器はせめて2人分あれば良いかしら?」「そんな昌代さん。ダメですよ」「これから買うんでしょう?10ヶ月間使う為に買うのはもったいないよ。うちは大人数の分有るから貸してあげるよ」「他に必要なものは?」「炊飯器とお鍋を…。」「有るわよ。持っていきなさい」結局家財道具は殆んど立花家から貸せて貰うことになった商店街でタオルや必要な日用品を購入して新しい部屋に入った。早速カーテンを取り付ける。「ベッドは?」「はっ忘れてました❗でもお布団はあるので床に引いて眠れますから」「そうねお布団があればとりあえず眠れるわね。馴れてないと大変よ?大丈夫なの薫さん?」
「冬は寒いよ。フローリングだからさ。」と木島も心配そうだ「折りたたみならどこかに有ったような…どこだっけ。母さんうちに折りたたみベッドあった?」「うちには無いわよ。」「とりあえず運びますね。」木島は荷物を載せたワゴン車に薫をのせて出発した「私は心当たりを探すわ。先に行ってて下さい」文野はマンションに戻り修二の荷物を確認する。やはりあった文野が住む前に良く研修医が泊まったりしたので簡易ベッドを用意していたのだ
「マットレスは私のを使って貰おう。このままじゃあ痛いわ。」修二に連絡して折りたたみベッドを貸し出す事になった辰治の車で折りたたみベッドをと文野のマットレスを載せてよしアパートへ届ける。折りたたみベッドは案外重いが修二が中心になって運んでくれた。部屋に運び込むとマットを引いてお布団をセットすれば随分と部屋らしくなった「キレイな部屋ね。良く掃除されてるわ」「はい有り難いことに直ぐ入れました。昨日のうちにガスと電気と水道も不動産屋が連絡してくれて朝一で使えるようになってました。」「手回しが良いのね?」「木島君のとこだろう?」「えっ?」「あら、知らなかったのねぇ?」「良郎不動産は、俺の実家がやってる。親父が社長、兄貴が専務、昨日対応したのは兄貴の嫁さんだ」「それで親しげだったんですね。」「まあね」木島は照れ臭そうにそっぽを向いた「照れちゃって。良平君は昔から面倒見の良いお兄ちゃんだったもの」文野が良平を誉める「普通だよ」「いえ。本当に今回のことではお世話になりました。皆さんありがとうございます。後日改めてお礼をさせてください」「良いわよ。お礼なんて。修二さんの大事な後輩だもの。」「そうだぞ。気にせんで良いんだ。さてわしらはそろそろ引き上げるぞ。文野」と辰治「はーい。じゃあ後はよろしくね。良平君」辰治と文野は部屋を出ていく「ありがとうございました。」薫はドアから出てお辞儀をしている。「手伝うことまだある?」「いえ。大丈夫です。後は食料の買い出し位なので一人でやれます」「電気コンロもあるし材料さえあれば直ぐ作れるね」「あの晩御飯作るので食べてくれませんか?引っ越しの手伝いのお礼に」「いいね!ごちそうになるよ」「はい。期待していてください」「買い出しは俺の車で行こう。ちょっと遠いけど大きいスーパー迄出掛けよう」「ありがとうございます。よろしくお願いします」二人は引っ越しで汗だくなので一旦シャワーを浴びて着替える事になった「一時間後に部屋の前で‼️」
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