第30話 新居を構える計画
「おはようございま~す。杉山で~す。お義父さん、お義母さんお邪魔します」修司は玄関の引戸を開けて居間に向かった
「お疲れさま、修司さん。」「おはようございます。お義母さん」「文野は道場の換気をしに隣に居るのよすぐ戻るわ。楽にしてください」「はいありがとうございます」早速ダイニングの椅子に腰かけた「お腹空いてる?朝御飯の支度しているの」「何かお手伝いしましょうか?」「あらありがとうでも修司さんは御仕事帰り道でしょう。楽にしてて良いわよ」「戻りましたー」玄関から文野の声が聞こえる「お帰りなさい修司さん」「ただいま。お義父さんは?」「すぐ戻るわ。食事の支度しておいてくれって」「はいはい」昌代は4人分の食器を揃えている「手を洗って手伝うわ」文野も支度の手伝いをする「お仕事は何事もなく?」「うん。大きな問題も怒らなくて良かったよ」「香月先生は?」「すぐ帰った。お弁当が美味しくて感動したって騒いでいた」「オーバーね。でも美味しく召し上がって頂けたのなら結構なことです」「ああ。ついでにうちの妻自慢をしておいた」「まぁ呆れた。」「念には念を入れて置いた。」「外国生活で、家庭料理が味わえなかったんでしょうね。久し振りにお弁当を食べたのが愉しかったのよ。きっと」「そうかもね」「帰ったぞ、お待たせ。おお修司くんお疲れさま」「おはようございます。お義父さん」
「さぁさ、朝ごはんにしましょう!」食卓にはいつもの倍に4人分の食事が準備されていた「たまには、こうやって4人で戴くのも良いものね。なんだか楽しいわ」「そんなちょっと前まで3人だったでしょう?」「あら減ると凄く感じるのよ?」「ずっと3人だったからな。文野には結婚して欲しいと思う反面寂しいものだな。まぁ子供は巣立つもんだからな。文野が居る風景に慣れすぎていたんだなと最近思うよ」「僕は賑やかで良いと思いますけどね。こうやって時々一緒に食事して楽しいですよ。お義父さんの町内会の話しとかお義母さんの女子会の話しとかいつもと違う内容って勉強になります」「そぉ?それなら嬉しいけれど」
「今日はお休みなので、こちらで昼迄お世話になっても良いですか?」「勿論よ。文野は私と買い物行きましょうよ」「良いわよ。修司さんは休んでてください。お父さんは、留守番で良いのかしら?」「今日は道場の整備の業者が来るんでな隣と行ったりきたりだよ」「忙しいのね。」「まあね。たまには忙しい日もあるさ」食事を終えて修司を2階の文野の部屋に寝かせてから文野は食事の片付けをして母昌代と買い物に出掛けた。車を出すので少しはなれた大きなショッピングセンターへと足を延ばす事になった。結婚前は時々二人で買い物に行っていたが最近は両親が遠慮してなかなか行く機会が無かったのだ。「たまには良いわね」母が嬉しそうに呟く「一緒に行きましょうって声をかけてるのに良いわよって断るから…。」「だって、文野は結婚したんだし、いつまでも今までの様にベッタリじゃあ行けないと思って…。父さんに言われたの?」「ううん。お友達にね。距離を取ることが長く仲良しで居られる秘訣だって言われて、お友達も色々な思いがあったから失敗しないように教えてくれるの」「女子会の良いところでもあり悪いところでもあるわねぇ」「でも、少し慣れてきたのよ父さんと二人の生活にね」「修司さんは私達が道場の上に住むことを急いでも良いと思ってるの」「どうして?二人だけの時間て必要でしょう?あなた達はお付き合いする期間が少なかったでしょう。ゆっくりとペースを保った方が良いのでは?」「ご心配掛けてご免なさい。でもね私達、このままの気がするのよ。ずっと二人だけかもしれないしね」「あら、まだ子供産めるわよ❗」「うん年齢もあるし可能性は高くないと思うの」「そんなこと無いわよ。あなたきっと良いお母さんになるわ」「うん。でも修司さんは子供ができても道場の2階に住んで生活出来るし賑やかで良いからって。」「有り難いわねぇ」「だから母さんからも父さんに話してくれない?」「本当に良いのかしら?」「修司さんが望んでいるの」「そう。本当はね父さんも同じことを考えているらしいの」「えっそうなの?」「前に断った手前言い出しにくいらしいけど」「なぁんだそうなの。良かった。なら話しは早いわ」「マンションも借り手が見付かったのよ」
「借り手?」「売っても良いんだけど道場の上に移れるか分からないから貸すって話なの」「でもそんなに道場の上が良いの?」「だって勤務先に近いでしょう?私の実家だから宿直でも帰りが遅くなっても安心だからって…。」「過保護じゃない?」「とっても過保護よ。子供が出来たらどんなに過保護な父親になるかしら?」「ちょっと心配ね」「それに子供が出来たらお父さんに剣道を教えて欲しいって」「まぁ」「他人の子供は教えなくても孫なら自由な時間に教えて貰えるって」「お父さん張り切っちゃうわ❗」「ボケ防止にもなるでしょう?」「そうね」と昌代は笑った
香月薫は商店街を歩いていた。料理は出来ないのでお昼と夕御飯の食料を物色していたのだ「うーん和食が食べたいけれどお弁当はどんなものがあるのかしら?」惣菜店で揚げ物や煮物がパック詰めされて並んでいる「うーん。レンジはあるから冷めても温めて食べられるし、天ぷらにしよう」篭に入れた「野菜の煮物も美味しそう…。」あれこれ悩んで竹の子の煮物を選んだ。お金を支払いマンションへ戻る途中はたと気が付いた。ご飯がない❗スーパーマーケットは、とっくに通りすぎた。戻るか?この近くにコンビニがあったはず…。❗しかし、無惨にもお握り類は完売。弁当はあるがご飯だけと言うのが時間帯のせいか売り切れであった。
迷った挙げ句に店を出てきた。どうしよう…。
パンとは合わないし…。
「何してるの?」「えっ。あぁこんにちは、たしか木島さんでしたっけ」「そうだよ。香月先生、今日は非番なんだね」「非番?勤務明けです。」「だから非番でしょ?」「良平?どうするの?私達先に行くわよ」ジロッと薫を見てから女性と子供が歩き出した「ああすぐ行く」
「あのぅご家族ですか?」「うん。人見知りなんだよ気にしないで」「はい」
「それで先生は、何を?」「お昼のご飯を買いたかったのにご飯がないことに気が付いたが、コンビニは売り切れで」「あぁそうか木島は背負っていた鞄からおにぎりを二個取り出して薫へ渡した」「えっでもこれはあなたのご飯でしょう?」「良いんだ俺の分は他にもあるし、間に合うよ」「ありがとうございます。せめて1個はお返しします」「善意は素直に受けるんもんだよ。先生」「しかし…。」「今度は食事ご馳走してよそれで良いから。じゃあ時間ないから俺行くわ」木島は急いで店内に入ってしまった「素直にかぁ…。杉山先生にも初日に言われたっけ。私って素直じゃないのか。」大きな溜め息をついてマンションへ戻る
「香月先生?」「はい?」「初めてお目にかかります杉山修司の妻です」「はっ杉山先生の奥様がですか、先日は大変御無礼いたしました。本当に申し訳ない事をいたしました」「もうその事は忘れてください。真島先生からもご丁寧に謝罪されてます。先生自身には何の非もないですよ」「いいえ。ちゃんと周りに確認するべきでした。私の落ち度です。それなのに杉山先生は、指導医を続けて下さり、先日は美味しいお弁当まで戴いてありがとうございます」深々と頭を下げる薫に文野は戸惑っている「どうしたの?お知り合い?」後から荷物をカートにのせて高齢の女性がやって来た「修司さんが指導医をしている研修医の香月先生です。」「こんにちは。文野の母です。まあ修司さん指導医をしてるの?優秀なのね」「大学の恩師に頼まれてと言っていましたけど」「これからどちらへ?」「買い物の途中です。色々揃えたくて」「そうなの、ここは日用品を揃えるには便利なところよ」「杉山先生のお宅はこの辺なんですか?」「イイエ私の実家の近所なの。修司さんにご用?今実家で休んでいるわよ」「イイエ。昨夜は、急患が有ったので全然休まれてないと思います。ゆっくり休んで頂きたいです」「そうなの?ありがとう。香月先生もしっかり休んで下さいね」そう言うと二人は行ってしまった
「今日は色々な人に会う日ね。あやのさんというんだ杉山先生の奥様。新婚って言ってたけど凄く馴染んでいるというか落ち着いてるな。優しいし。私にはなれないタイプだな」 大きく深呼吸してやっと家に帰りつく
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