第27話 家族

文野は二人の子供の育児に忙しくしている。京介は4歳になり、4月から通う保育園も決まった。麻由子は、たまに風邪を引く程度で、京介よりも更に元気でスクスク育っている。母乳も良く飲む。京介もよく飲む方だと思ったが、それ以上に飲むのだ。「まあちゃん、プクプクしてる」京介がほっぺをつついて寝ている麻由子を起す「京介、折角寝ているのに起さないのよ?」「だって、まあちゃんかわいいからあそびたい」「麻由子は寝る時間なのよ」「ぼくはねないよ?」「京介も赤ちゃんの時いっぱい寝てたわよ。」「ぼくおぼえてない」「赤ちゃんだったからねぇ」「じゃあ、いまのまあちゃんは、ぼくとあそんだことおぼえてないの?」「そうね。京介は母さんのおっぱい飲んだことおぼえているかしら?」「うーんおぼえてない。ぼくものんだ?」「ええいっぱいいっぱい飲んだわよぉ。だから大きくなったの」「そうか、まあちゃんおこしてごめんね。ねんねして」今度は優しく小さい手で麻由子の額を撫でる「京介、ありがとう。良いお兄ちゃんね」文野は京介の頭を優しく撫でる麻由子がうとうとし始めて、すぐに寝付いたので文野は京介とリビングに移動した

「京介、母さんと遊ぼうか?」「えほんよんで」「良いわよ。どのお話が良いかしら?」「ぼくね、いっすんぼうしのおはなしがすき」「じゃあ今日はそれを読みましょう」京介は部屋からいっすんぼうしの絵本を抱えて文野の向かいに座る「京介、かあさんのひざのとこに来て」「ぼくはもうあかちゃんじゃないもん」「そうね。でもほら絵本を読む時に一緒に見たほうが楽しいわ。だから今はこっちでね」「うん」嬉しそうにちょっぴり恥ずかしそうに京介は文野も膝の間に座った。幼いなりにお兄ちゃんを意識している京介が可愛くて愛おしくて思わずぎゅっと抱き締める「おかあさん、どうしたの?」「京ちゃんが可愛いから。大好きよ。お兄ちゃんだからってだっこしちゃあいけないわけじゃないのよ?外国ではハグって言ってね、大人になっても抱きしめることが出来るの。はずかしがらなくていいのよ」「いいの?」「うん。京ちゃんが嬉しい時、悲しい時、寂しいなぁと思った時にはバグしてって言ってね。大人になってもそうよ?」「おとなになっても?」「ええ。でも家族だけね❗」「おとうさんも良いんだ?」「勿論、じぃじもばぁばもそうよ。格好いいと思った時にもバグして良いんだよ。」「わかった」嬉しそうに振り向いて立ち上がった京介は文野に抱きついた「おかあさんありがとう。だいすき」「嬉しいわ。さぁいっすんぼうし読むわよ」

しっかり絵本を読んで満足した京介は、目覚めて泣いている麻由子に、「まぁちゃん、だいじょうぶだよー。さびしかった?おにいちゃんがここにいるよ」一層優しく接してくれている。授乳中の麻由子と文野を見て、「ぼくもこうやっておっぱいのんだの?」「そうよ。お父さんは、ぼくもおっぱい出たらなぁ…。ってさびしそうだったわ」「おとうさんはおっぱいないよ?」「そうね。うふふお父さんに聞いてみて。」「うん」その日、帰宅した修司に「おかえりなさいおとうさん」早速京介は修司に質問モードだ「ただいま。京介どうしたの?」いつもより歓迎モードで、ちょっと嬉しい修司「おとうさんが帰って来たのがうれしいからバグして」「喜んで」と修司はやさしく抱きしめた。「京介、お風呂入ろうか?」「つかれてなぁい?」「京介とお風呂はいったら疲れが吹っ飛ぶんだよ」「わーいおかあさん、ぼくねおとうさんとおふろ」「そう、よかったわねぇ。」ニコニコして京介の頭を撫でる「修司さん、お帰りなさい。少し休んでからの方が良いんじゃない?」「大丈夫だよ。すぐ入るよ。ねぇ、ハグを教えたのって文野さん?」「ええ。そう。お兄ちゃんだからだっこしちゃいけないって言うのよ。誰が言ったのかしら?だからね、外国では嬉しい時も悲しい時も辛いときもバグして気持ちを伝えるのよ」って言って聞かせたの。「成る程、そこで、僕が帰って来て嬉しいわけね。」「あなたもいっぱいバグしてくださいね。」「今は?」「今?そうね。」文野はそっと修司を抱きしめる「文野さん、麻由子の匂いがするねぇ。顔を見てくるとしよう」修司はまだ何を言ってるか分からないが、小さい声をあげてきゃっきゃっをしている麻由子を抱き上げた。お風呂にはいる準備を済ませて京介が文野と側にやって来た

「京介は、どうしてお兄ちゃんはだっこしたらいけないって思ったの?」「おにいちゃんになったらだっこするのははずかしいって、おかしいって」「誰に言われたの?」「しらない人。こんなにおおきいのにまだだっこしてもらうの?っていわれたよ。」「お母さんはどうしたの?」「おかあさんはね、そのおばさんになにかいってたけどぼくおぼえてないの。でもそのままぎゅっとしてくれてた」「そうか。ならいいんだ。その人はハグを知らない人だからね気にしなくていいよ。」「うん。ぎゅっとしてくれたらうれしいもん。もったいないね」「本当になぁ。もったいないねぇ。お父さんは、すごく嬉しいよ」「さぁ、お風呂にはいっていらっしゃい。麻由子は母さんと待っていようね」修司からうけとると麻由子は修司に手を伸ばす「麻由子もお父さんとお兄ちゃんと一緒に入るか?」「修司さん疲れているのに」「わーい麻由子も一緒だあ」

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