第9話急速に近付いた二人

何かが違うと感じた朝。

文野は起きたときから何か感じていた。何だろう?胸騒ぎのような、トキメキのような嫌な予感ではないは無いけれどもなんだかワシャワシャする感じ。今日は誠と10時に待ち合わせているが出掛けるの止めようか?一瞬思ったが今まで勘が働いて失敗しなかったとか実感したことが無かったので気のせいと言うことにした。

いつもの待ち合わせ場所のファミリーレストランで誠を見つける。「お早う。」「おはようございます誠さん」「コーヒーで良いかな?」「はい」ゆっくりとコーヒを飲んで席をたつ。車に乗る前にトイレを済ませて二人は店を出る「まずは見晴らしの良い山へ向かうよ」「はい」文野は地元では運転もしたが最近は社内の敷地内でだけ運転している。「路上に出ても良いんじゃない?」と言われるが怖いので辞退する「自信が無いので良いですよ。でもペーパーはいやなのでなんとか動かせてはいるってことで」と笑う「馴れたら平気だよ。文野さんは、落ち着いてると思うよ?」と職場の人にも言われている。助手席に乗ってあげるよと森山にも言われたが当の森山は免許を持っていない「危ないじゃない?」「立花さんと一緒なら俺平気。」営業の井上が手を挙げる「結構です。」即答で断られたそんな会話を思いだし独り笑う「何?どうしたの?」首を降って「何でもないです。思い出し笑をしただけよ」「そんなに愉快だったの?」「昨日職場で運転出来るかって話になったんです。地元では運転するけどこっちでは道がわからないから怖いって話したのよ。」「社内で車運転してるよね?」「エエ。少し移動させたりとかね。でも路上はおっかないから乗らないって言ったら森山さんが助手席に乗ってくれるって言うの。でも彼女免許を持ってないの。じゃあ失格だぁって笑い話。そうしたら営業の井上さんが俺が乗ってやるって言ってくれて。」「井上さんは免許持ってるでしょう?」「バイクのね。」「失格?」「散々からかわれて結局誰も乗れないじゃないって笑ったのよ。」「僕が乗るよ。」「えっ」「僕は乗れるよ。免許とって3年以上たってるし、道も詳しい方でしょう?」「冗談ですよ冗談。」「良いじゃない乗れば良いよ」「目的地についたら運転変わろうよ。」「本気ですか?」「本気だよ。この車は運転しやすいよ🎵大丈夫僕が付いているから」「はぁ。気乗りしないですけど」「実はスピード狂だったりして?」「安全運転第一です。」今日は何だか胸騒ぎがするんだけどなぁまあ気を付けていれば大丈夫だよね…。「さて、着いたよ。運転出来そう?」「何だか胸騒ぎがしてて気分的にのらないんですよ。まぁ、ゆっくり行けば良いですよね?」「そんなに心配なら今日はやめておけば?」「良いんですか?」「勿論。無理強いはしないですよ。」「じゃあ次回って事で。」「胸騒ぎがしてるの?」「ええ今朝から」「気分が悪いの?」「いいえ、落ち着かないって言うかなんでしょうね?自分でもよく分からないんです。だから胸騒ぎをしてるんですよ。大丈夫、具合は何も悪くないので」「第6感とか?」「普段はなんでもないので違うと思いますよ。(笑)」「そうかな?いつも見てるとどっちかと言うと用心深いからさ」「慎重なだけです。怖い思いをしたくないので」充分その影響受けてると思うけれどな誠は独り呟く「誠さん、もう出ますか?」「そうだね、ランチを予約してあるから。」「では、お手洗い行ってきます。」「そうだね、僕も行くよ」二人は車を離れ男女別々にトイレに並ぶ男性はさくさく進むが女性はユックリしか進まない。先に車へ戻ろうとして、そうだ帰り道につまめるあめ玉でもと売店へ「誠さん、お待たせしました。咲子さんへお土産ですか?」「いやぁ口寂しく無いようにあめ玉か、ガムを買っておこうかと。選んでるんだけどなかなか種類が多くて悩んでるところ」「まぁ、本当に色々ね。甘いもの、辛いもの酸っぱいもの、これなんでしょう?」「カレー味だって」「うーん長時間運転してると眠気覚ましになるのかしら?」「買ってみる?」「私はカレーは、食事で味わいたいです。」「面白だけどね?」「職場の皆さんに配ったら?(笑)でも気の毒な気がするから止めてください。」「意外と行けるんじゃない?」「罰ゲームですよ。」「面白いから買ってみるとしよう。」「本気ですか?」「うん、皆の感想を聞きたいし、一番は面白そうだからね」「悪魔ですね。」「これも勉強です」「まぁ、そう言うのなら止めませんけど」「勿論、普通のあめ玉も買いますよ。これは今から僕らが口にする分です。」「…。」「信じてない目だね?」「ええ、若干イタズラされそうで」「母じゃないからそんなことしないよ。」「あのイタズラ好きな咲子さんの息子ですよ。」「どっちよ?」「普通のは私が買います。その変わり種は誠さんが買ってください」「信用されてないな。僕は…。」「慎重と言ってください」二人はニコニコ笑いながら会計を済ませる

「さて、出発しますか?」「はい」シートベルトをしっかり閉めて発進した直後、道路の先で凄い音がした。

「何?」「凄い音がしましたよ?」「ちょっと見てくる」「誠さん、危ないかも」「でも怪我してる人がいたら助けなきゃ」「でも」「大丈夫。ちゃんと戻るから」止める文野の額に軽くキスをして誠は車を降りた。振り向いて「文野さんはここにいて」そう言うと誠は駆け出した「ああ神様。大事になりませんように」文野は独り呟くドライブインのなかからも人が飛び出している現場の様子を遠くから不安そうに見つめる「何があった?」「怪我人は?」救急車や警察、消防にも連絡は、入れた様でドライブインのスタッフが建物か、車のなかで待機するように声をかけている

1時間後、道路は即閉鎖されたが文野がいるドライブインは何事もなく済んだ。物凄い音はがけ崩れが原因であった。幸、崖だったので捲き込まれた車も人もなく大事にはならずに済んだ崖の下は、海なのでこのあと調査されるとの事だった。無事道路は通れるようになった

「無事で何よりでした。誠さんったら飛び出して行こうとするからビックリしたわ」「ごめん。僕は、子供の頃からボーイスカウトとか入ってたし、救急救命士になろうと思ってたこともあってね。じっとしてられないんだ。」「なるほど。」納得顔の文野「えっ何?」誠は不安そうに文野を見つめる「誠さんは、ボランティア精神が旺盛なんですね。世話焼き過ぎて誤解されたこと無いですか?」「さぁ?」「きっと無意識なんですよ。でも気を付けないと災難に巻き込まれるかもしれない。」「そんなこと無いと思うよ。今まで気になることは起きてないし」「本当に?気付いていないだけだと思いますよ?私も勘違いしないように気を付けます」「えっ、それはどういう事?」「さっき,車を離れるときの行動です」「あれは本気だよ。勘違いじゃないから‼️」「そうなんですか?」「格好いいなと一瞬思ったんですけど…。」「そこは勘違いにしないでよ」真っ赤な顔をして誠が力説するのが可愛く見えて仕方がない「わかりました。では、本気だったと言うことで、私も安心しました」

「からかってるでしょう?」「何の事ですか?」「もう文野さんはそうやって僕をからかって遊んでるよね?」「そう見えますか?心外です」膨れっ面の誠を見てニコニコ余裕の文野だが、「お腹が空いちゃいました。ランチまだ大丈夫ですか?」「連絡はいれてある。でも急ごうか。」誠は拗ねていたことを忘れたように車を走らせた「やっと着いたよ。この店が予約した所だよ」その店は見た目は絵本に出てきそうな可愛い外観で色もパステルカラーを使って実に可愛らしい

「可愛いですね。良くこう言うお店を見つけましたね?」「うん、幼馴染みの子がこの間持ってきた土産がこの店の物でね。美味しかったんだ。外観で驚いて、中に入って驚いて味に驚いたって言ってた(笑)」「なかにもびっくりするのね。早く行きましょう。ワクワクします」ドアベルをならすように入口に看板がある。誠はベルを二回押した。すると中からひげもじゃの男性が現れた「合言葉は?」「合言葉?えっ何?」「予約した高野誠です」文野が答えた「ああ予約ね」にっこり笑うと男性はドアを開き「予約の高野さま」と声をかける「いらっしゃいませ高野さま」と声は聞こえるが顔は出さない「当店は個室になっておりますどの部屋になさいますか?」「えっ部屋を選ぶんですか?」文野も首を傾げる「部屋によって料理コースが決まります」「あら、料理はどこに載ってるんですか?」「日替わりのみなのでメニューはありません」「料理は選べなくて食事する部屋を選ぶんですねぇ。なかなか斬新です。」「お料理はきっと御満足頂けます」「余程自信があるんですね。誠さんお部屋どれにします?」「うーん斬新すぎて頭がついていけない」「まぁ…。」クスクス笑う文野に「君が選んで良いよ。」「そうですか?では、浦島太郎でいきたいとおもいます」「かしこまりましたこちらです」スタッフの男性は思ったより若い男性でささとふたりを浦島太郎の部屋へ案内してくれた「直ぐに料理をお持ちします」と言って部屋を出ていった「ユニークな所ですね?」「ユニークなの?僕はついていけてないからずっと戸惑っているよ」「そのようですね。でも折角ですから、楽しみましょうよ。」「うん、そうだね。でも料理も何が来るやら…。」「面白いインテリアですね、お話に出てきそうな飾りや絵が壁にかかっているわ。料理もきっと和食でしょう。」「来たことあるの?」「イイエ、初めてですよ。」一頻り部屋を眺めて落ち着いてきた誠は「他の部屋も見てみたいね?面白そうだ。」「次のお楽しみじゃないですか?」「成る程。又ここへ来たいと思わせるのか。料理が楽しみだ」運ばれてきたのは和食の膳であったがなかなかどれも上品で美味しかった。もっと驚いたのは先程のスタッフと違って浦島太郎の格好をしたスタッフが配膳に来たことだった「呆気に取られた顔をしてますよ?」「もうこれは呆れるしかないでしょう?面白過ぎだよ。」「他の部屋を見ることはできないの?」誠は帰りにダメ元で聞いてみた「申し訳ありません。出来ません。次のご利用をお待ちしております」最初のひげもじゃのスタッフはどうやら7人の小人の格好だったらしい。「では、又来ます」そういって二人は店を出た

「愉しかったですね。」「驚いたけど食事は美味しかった。子供がいくと大喜びしそうだね?」「そうですね。」帰り道ランチの店が面白くて話が途切れることもなく眠気覚ましの世話になることはなかった「夕方はうちに来ない?」「突然尋ねたらご迷惑では?」「今から連絡するよ。多分、予定はなかったと思うけれど」「ご迷惑でなければ少しお邪魔させて下さい」「了解」3時過ぎに自宅へ連絡すると父親もゴルフが終わって戻ると連絡があったらしく4人で夕食をということになった。「何かお土産を買っていきましょう。」「和菓子の美味しいところがあるんです。余り有名ではないのですが、私のイチオシなの」「母達が喜ぶものにしよう」「そうね。」二人で和菓子を数種類選び箱に詰めて貰った文野はそれとは別に洋菓子も一緒に選んで箱に詰めて貰った「それは?」「お手伝いの皆さんにおやつです」「皆さん喜びますよ」「だとうれしいです」「文野さん話があります」「はい。なんでしょう?」「僕と結婚してください」「…。あ、あのもっとじっくり考えてからでも…。」「僕はずっと考えてきたよ。毎日のように会って他愛もない話をして一緒にいると楽しんだ。君は違ったの?」「愉しかった?」「同じだと思います。」「結婚はまだ考えられない?」「うまく付き合えるでしょうか?」「勿論さ。うちの両親は文野さんをいつ迎え入れるか考えてる」「えっ」「僕がなかなかプロポーズしないから代わりに口説こうとしている」「まさか。」「だからね。邪魔される前にちゃんとプロポーズしたかった。」「邪魔って…」「答は貰えないのかな?」「えっとー私も誠さんと一緒に居たいと思っています。今日は特に勇敢な誠さんを見てしまって、格好いいと思っちゃいました」「じゃあ、オッケーで良いの?」「勿論です。よろしくお願いします」「」「」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る