第6話好きなんだろうな

咲子の機転のおかげで高野は文野とデートする機会を得た。「動物園ですか?」文野が電話口で呟いた「嫌ですか?動物園。私は一人でも見に行きます。」「天気が良ければ良いところですよね?」文野は明日の天気予報が傘マークがでんと表示されていたのを思い出しながら「天気に左右されない映画とかが無難では?」と答える「雨の動物園も良いんですよ傘をさしながらゆっくり動物を見るんです」「…。分かりました。では,10時に園の入口で」「迎えに行きますよ?」「イエ結構です。待ち合わせって良いでしょ?」「分かりました。では明日」そう言って高野との電話は切れた「雨の動物園かぁ…何を来ていこうかな。雨に汚れたくないし、う~ん」一方、動物園に決めた高野は雨の動物園の楽しさを文野に教えてあげようと息巻いている

9時45分「おはよう。立花さん」「おはようございます。高野さん」私服の高野は少しラフなポロシャツとジーンズである「高野さんのラフな格好初めてです。」「いつもネクタイ姿だから。立花さんはスッキリしてますねぇ」「パンツスタイルは出勤時にも余り着ないですから。でもお休みは結構ジーンズを着たりします」「では中に入りましょうか」めいめいで傘をさして

動物達を見る「ほら猿山は有名ですよね」「雨に濡れて風邪引かないのかしら?」「寒い時期ならそれなりにケアがあるようですよ。今の季節はシャワーを浴びてるようなものでしょうね」「そうなんですね。雨の動物園って人が少ないですね。寂しい感じですね「でも静かだしゆっくり観察できて良いでしょう?」「そうですね。」昼時間には見終わった二人は「この後どうします?」「そうですねぇ、食事をとってどこかへ移動しましょうか?」「僕は車なのでどこへでも行きますよ?何処に行きたいですか?」「おまかせしちゃあいけませんか?」「分かりました。景色のよいところへ行きましょう。ではお昼ご飯から…。」「あのう、お願いがあります」「何?」「私、ファミリーレストランへ行きたいです」「ファミレス?何でまた」「行く機会が余りなくて、近所にも無いので利用するチャンスがなくて…。」「オッケーですよ。洋食系、和食系、中華料理系パスタ系色々ありますよ」「お任せします」「では和食の店へ生きましょう」高野は和食中心のファミリーレストランへ文野を案内した「麺類、寿司、丼物色々ありますよ。何が良いですか?」メニューを一緒に覗き込む「では天ぷらセットを、高野さんは、どれにします?」「う~ん豚カツセットでお願いします」女性スタッフはオーダーを読み上げて戻っていった。その合間にお茶とおしぼりが届いた「天ぷらって一人暮らしだと作らないんです。実家では作ることもありましたけど、仕事の昼に食べるには慌ただしいでしょう?なかなかチャンスがないの」「そうか。一人暮らしなんだね。学生時代に住んでいたアパートから女性専用のマンションに移ったんです。でも全然知らない人ばかりで交流もないんです。管理人もいるし,不便はないんですがお隣の方は行き違わないので顔を見たことがないんです。多分あちらもこっちの事をそう思ってるんでしょうね」「心細いですか?」「いえ職場では仲良しもいるので大丈夫ですよ。」「僕はずっと同じところに住んでいるのでそんな想いしたことがないんですが、困ったことがあったらうちへ連絡してください。母も文野さんと話すの楽しみにしてますよ」「分かりました」「あのう、つまらなくないですか?」「えっ?どうして…。」「僕は会話も上手くないし、気もきく方じゃないですから退屈してないですかを」「私つまらない顔してる?「わからないです。文野さん気を使ってるかも…。」「めんどくさい人ですね❗️咲子さんにクレームつけとかなきゃ」「何で母に?」「お薦めだって言ってたでしょう?」「すいません」本気で申し訳ないという表情に「誠さん、私は嫌いな人とデートする程人間ができてません。動物園ではしゃぐ彼方は素敵でしたよ。私も楽しかったです。そうは見えませんでしたか?」文野はニッコリ笑って「もっと自信を持ってください。私は誠さんのこと好きですよ。」「母の紹介でデートしてもらえたのだから自信なんて持てないです」「いくら友人のお薦めでも好きじゃない人とデートしません。誠さんは私ことをどう思ってるんですか?」「好きに決まってるじゃないですか」自棄になって答える「では両想いですね。ちゃんと付き合いましょう?」「ちゃんと…。良いんですか?」「それじゃあ止めます?」「イエ付き合いたいです」「では料理も来ましたし、食事しましょう。それからドライブへ連れていって下さい」「はい」力の入った通る声で誠が答えた「まぁ良いお返事」文野は思わず呟いた。美味しい食事を済ませてドライブへと向かった「見晴らしの良い箱根でも行きますか?」「長距離の運転辛くないですか?」「仕事で走り回っているからね。大丈夫です」「辛くなったら代わりますね。」「文野さん運転できるんですか?」「まぁ失礼ねぇ。免許証持ってるわ。たまに検品所のそばの空き地で運転の練習してるんです。たまに助手席に誰か座ってもらって…。」「そうなんだ。文野さんが運転してるイメージわかないなぁ」「みてらっしゃい。上手で驚くから‼️」「それは楽しみですね🎵」「なんなら運転代わりましょうか?」「いや今日は僕に譲ってください。」「仕方がないですね」先程よりグッと会話が弾む様になった。多少渋滞のところもあったがスムーズに箱根に到着した「今朝の雨が嘘みたいにいい天気になりましたね」「本当に」「秋になったら紅葉を見に来ましょう」「そうですね」「予約しておきますよ」「何の予約?」「他の人と行かずに僕とだけ行く予約です」「…。意外に束縛するタイプ?」「箱根の紅葉はです」「分かりました」帰りは文野が運転を代わると申し出たのにもかかわらず断固誠の運転で帰りついた。「今日はありがとうございました。明日はゆっくり休んでくださいと言ってもお仕事が入ってるかもしれませんが」「イヤ、休みます。それより来週の予定は入っていますか?」「特にはないと思います」「ではうちに来ませんか?急すぎるかな。」「そうですね。でも咲子さんともお友だちですし、イエ待って、好きな人のお母さんになっちゃいますね。態度を改めるべきですか?」「母はこのままが良いんじゃないかな?」「そうですか。」「改めて聞くけど文野さんは僕と付き合ってくれるんですよね?」助手席の文野の手をそっと握る「私は、いずれ実家に戻るつもりでいたので、友達以上恋人未満でのお付き合いで良いかと思っていました。誠さんはその先も考えているんですよね?」「急ぎすぎてる気は自分にもある。でも文野さんを他の人に渡したくないんだ」「未だ1回のデートですよ。決めるには早すぎじゃない?」「仕事中の文野さんを僕は見ていた。母とのやり取りも見てた。文野さんが傍に居てくれたら幸せなんだ」「…。お宅に伺うのは少し待ってください。」「嫌ですか?」「咲子さんに会うのは嫌じゃないです。でも誠さんは私のどこが良いのか、悪いところはないのか?私だって誠さんの事は好きですよ。優しいし、気配りもできて。でもそれは恋人としての意識じゃないかも。未だ1回のデートで良し悪しなんてわからないでしょう?お互いに見切り発車って危険ですよ」「そうですか…。僕はずっと見てたからね。」「買い被りすぎです。欠点もいっぱいみて欲しいです」「欠点も魅力のひとつじゃない?」「だから、それは何度も会って、たくさんの時間を過ごすことで気付くことじゃないですか?」「そうかなぁ、僕は自分の直感を信じる。文野さんは違うの?」「はぁ…。私は不器用なのでゆっくり見極めたいです。だから即決断する気にはなれません。大切なお友達と恋人をいっぺんに失うかもしれませんし。単に欲張りで自分が傷付きたくないだけです。」「文野さんは自分をそういう風に見てるの?」誠は文野の手を強く握りなおして「僕は自信を持ってる。でも文野さんの不安を減らすには時間が必要だとは思う。だから毎日会いに来ます。」「毎日ですか?」「そう。毎日顔を見に来ます」クスッと笑って文野は「でも明日はゆっくり休んでください」「イエ、明日も会いに来ます。特別出掛けなくてもいいんです顔をみて声を聞いて…。」「強引なところもあるんですね」「そりゃあ、文野さんを自分の彼女にするのに必死なんで」「彼女?」「そう」言って文野にキスをした。「嫌ですか?」「特には…。」「じゃあもう一度」誠は文野を引き寄せてキスをする。今度は少し長めに

「大丈夫?」文野の唇から瞼、額と軽くキスをする「可愛い。いとおしいんだ。」「そろそろ帰ります。おやすみなさい」文野は車を降りてマンションの敷地へ入っていく「明日、昼に連絡します」と声を掛けて誠は車を出した「嫌じゃなかったな、いきなりキスをされて驚きはしたが優しいキスだった。上手なキスだったな。もしかして馴れてるのかしら?」文野は少し嬉しいような不安のような複雑な気持ちになった「ここが私のダメなところだよね。楽しかったのに直ぐ不安になる」自己分析はかなり低い、厳しい文野である。部屋に戻るとベッドに座って今日のことを思い出す。今朝は雨のなか傘をさして動物園を回った雨に濡れた猿たちを見てて実は猿の方が私たちを見てるのかも。親子連れはさすがに少なかったが賑やかな友達のグループや二人連れやら様々だった「私達はどう見えたかしら?箱根の景色もきれいだったなぁ。大学の頃当時のボーイフレンドと来た以来だった。誠さんも以前お付き合いした人とよく行ったんだろうか。以前の交際相手にヤキモキしてもどうしようもないのに。」自分の不安に呆れながらでも又会いたい気持ちにもなる。文野は初めての感情に戸惑っていた。「もしもし文野さん?」「あっはい。」ボーッとして着信音に驚く。誠からだった「今大丈夫?」「ええ、今日はありがとうございました。楽しかったです。」「こちらこそとても楽しかった。明日連絡するつもりだったけれど声が聴きたくて電話しちゃったよ。」「私も声が聴きたかった」「本当に。嬉しいなぁ」声のトーンが上がったと思えるほど誠の声が楽しそうだ「恋に落ちたってこういうことですかね?」「えっ何?」「イエ何でもないです。独り言なので気にしないで下さい。」「ところで明日、映画でも行かない?」「映画、良いですね。何があるんでしょう?どんなのが見たい?」「楽しめるのが一番だけど怖いもの、暴力物は避けたいですね」「ラブストーリとか?」「イエ、好きじゃないです」「そうなの?」「コメディとアクションが適度に混ざってる感じのが良いですね。」「洋画の方が良いよね?」「どちらでも」「僕に任せて良いの?」「誠さんがどんな人なのか知りたいのでお任せします。私は嫌なものは嫌って言うタイプなので誠さんにも私がどういう我儘をするか知って欲しいんです。もうすでに我儘が入っているんですけれどね。」「オッケー、では9時にさっき下ろした所ね」「電車でも良いですよ?」「明日も天気悪いから車で行ける映画館で見よう。」「分かりました、お願いします」文野は子供の頃から他人のペースに驚く合わせる事が普通であった。決して流されているわけではないがもめて長引く位なら妥協案を受け入れるタイプだ。今回は完全に誠の案に乗る感じだが一向に嫌ではないのだ「不思議だわ。やはり、誠の事を好きなのかな?」独り呟く

今まで殆ど知らなかった男性を好きになるって有るのかしら?先日、職場のアルバイトに告白されてその気が無いと言ったばかりなのにな…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る