第5話警戒しつつも気になる人

「おはようございます」「おはよう」今日もいつも通りの出勤風景

「おはよう。立花さん、今日時間ある?」「寺内さん。おはようございます。何事ですか?」階段を昇る文野とは逆に下りてきた寺内は検品業務のアルバイトをしている大学生だ「今日朝からバイトで午後講義ないからランチ行かないかと思って」「あぁゴメンね。お弁当持ってきたのよ。折角誘ってくれたのにゴメン」「そうか、立花さんはお弁当か…」「じゃあ俺もお弁当買って来るから近くの公園とか外で食べない?」「外で?ちゃんと食べられる場所なら良いですよ?」「わかった。じゃあ12時になったら直ぐに降りてきてね‼️」「分かりました。」いつものように伝票と計算にミスがないかチェックしていると「立花さん、寺内君と親しそうに話してたけどもしかして…。」「えっ?なんでしょうか?」「いい雰囲気だったって聞いたわ」「別にお昼に誘われただけです」「ランチデート?」「そんなことはないと思います。寺内さんは大学で私が専攻していた学科と似通っているので相談だと思います」「相談があるって寺内君言ってた?」「イエ。でも他に心当たり無いですから」「脈なしだなぁ…」同僚の森山が呟く「何ですか?」聞き返す文野「何でもないよ」

お昼時間「お昼時間外出します」「行ってらっしゃい」文野はお弁当ポーチに財布と携帯を入れて席を立つ「珍しいわね?立花さんが外へなんて…。」「寺内君に誘われたらしいですよ。」「寺内君ってバイトの?」「来年うちに来るって話じゃない?」「へえ内定したんだ」「噂によると大手食品会社の社長の孫らしいじゃない?」「ええ、どこの?」「誰でも聞いたことがある会社らしいわ」「凄いじゃない。同期で一番の寿退社?」「そうかなぁ、文野は大学の専攻が同じだから相談事じゃないかって言ってた」「無いわ。」同時に3人が揃えた「やっぱり?でも文野は無頓着と言うかかなり鈍いのでみんな友達って感覚ですよ?」「きっと気付かずに終わったコイバナたくさん有りそう」「同感」また3人の声が揃った「戻ったら様子を見よう。良い、聞き出しちゃあ駄目よ❗️わかってる?」みんな黙って頷く「課長、わかってますね?」「僕はそんなハラスメントまがいなことしない。どうせなら僕の居ないところで進めて欲しいプロジェクトだよ」迷惑を全面に打ち出した表情で応えた

「立花さんこっちこっち」両手を振り上げて文野を招く寺内「何事だぁ?」社員の井上が高野を見る。そこへ文野が駆け寄るところを見た「立花さん❗️何で?」「うるさいぞ。井上」石田主任が静に答える「だって立花さんと寺内君が一緒に並んで歩いてる」「一緒にランチって言ってたぞ」「オッケーしたんですか?」「何で昼飯食うのに俺の許可が要るんだ?遅刻せずに戻ってくれば何の支障もないだろうが?」「だって立花さんですよ。」「バイトが誰と飯を食おうと俺の知ったことか、それに朝から勤務してもう就業時間は済んでるんだ。騒ぐな」社の5階にランチルームが有り、持参のものも社食利用者も一緒に食べることが出来る。違う部署や同期達と楽しめるように社屋を建てるときに考えられた部屋だ。社員が一斉に利用できるスペースだ外向きにカウンターが有り景色を見ながら食事が出来る「なぁ、さっきの立花さんて総務の彼女だろう?バイトと付き合っているのか?」販売部の片山が同期の井上に声をかけた「まだ付き合ってないと思うよ。俺も今日はじめて見たから」「おい。無責任な噂を広めるな❗️」「広めて無いです」二人が答える「そうやって話していることが広めることになるんだ二人に支障が出たらお前達の責任だぞ」「そんなに?」「なにも知らない奴が気軽に話しているうちに根も葉も無い噂話になるんだよ」「…。考えすぎでしょう❗️」「とにかく、当人達がなにも言わない事を他人が口出しするな‼️と言ってるんだよ」石田にさとされ二人は頷いた「愛されてるな二人とも」「えっ❗️」「近藤部長…。」直ぐ後ろには総務部長が立って3人を見下ろしている「お疲れ様です」石田主任が挨拶する「2人の事を考えて叱ってくれたんだぞ」「はぁ…。」二人は今度こそ食事を始めた「ヤバイ、飯に集中だ。これ以上関わらない」片山が呟いた

一方、外に出た二人は5分ほど歩いたところにある公園のベンチに腰かけた「良い場所を見つけましたね?」「さっきコンビニでおにぎりを買ったときに店員さんに教えてもらったんだ。午前中だと親子連れがいっぱいだけど、お昼前に買い物して帰るんだって手も洗えるしここは木陰だしバッチリでしょう?」「ええ。本当に。さあ食べちゃいましょう」そう言って包みからお弁当を取り出した「寺内さん、これどうぞ」文野はラップに包んだおかずを渡す「僕の分?」「いいえ。いつも詰めたあとに残ったおかずをなかまうちでが交換してる分」「へぇー総務の人ってみんな仲良しなんだね?」「味見してもらったりしてもっと薄味が良いとか自分の好みを話したりするのよ❗️」「皆、弁当作るんだ?」「たまには買うこともあるし外勤のある日は行く先にあるテイクアウトを買ってつまんだりするのよ」「俺も入りたーい」「寺内さん、お料理するの?」「するする。でも母親が言うには手を掛けすぎだって。不経済だってさ」「良いお母様ね」「そうかな?口うるさいけど」「有りがたいじゃない。寺内さんの事を思って言ってくれてる」「ウン、まあ嫌いじゃないけどさ」「あっこれ旨い。どうやって作るの?」「これは遠山さんに教えてもらったレシピなの美味しいでしょう。直接本人に聞いてみたら?きっと教えてくれるわ」「そうする」「ところで,寺内さん本題は?一緒にご飯を食べるならランチルームでも良いわけだし,何かあるんでしょう?」「そうだね,ウン。単刀直入に聞くけど,立花さん,お付き合いしてる人いる?」お弁当箱を片付けて寺内の顔をじっと見て「居ません。私は今のところどなたともお付き合いする予定はありません」「では予定変更してみたら?立花さんだって学生時代とか彼氏いたでしょう?」「そうですね。ゼミの先輩とか。アルバイト先の方とか楽しかったですよ」「俺とはどうかな?」「お友達じゃあいけないんですか?」「友達より一歩抜け出したいかな❗️僕が学生だから?」「勿論、それもあります。私は、いずれ地元へ戻ろうと思っているので,将来を考えて行動する時期に来ていると思います」「まだ決めつけるのは早いでしょうに❗️」「私は不器用なので切換がうまく出来ないんです。お友達は沢山いると嬉しいですが恋愛はこの人っと思えないと無理です。寺内さんは年齢も近くて話も面白くて興味深いですが恋愛とは違う気がします。」「どうしてもダメ?」「折角、声をかけてもらったのに申し訳ないです」「あぁそう言う重い答えは良いから。謝らないで」「今後、話しづらくなりますか?」「立花さんが良いならこのままで」「本当に?ありがとうございます。お嫌でなければ今まで通りでお友達付き合いをお願いします」文野は頭を下げる「いやぁ、俺が変なこと言い出したからさ」「変なことではないですよ。気持ちは嬉しいです。ただ今はその気が無いので。こちらこそ良い返事ができなくて…。」「じゃあ今まで通りで行こうね。よろしく」「こちらこそ」どちらからともなく手を差し出して握手した

「さあ、戻ろうか。皆がきっと探ろうとするだろうね。どう言おうか?」「何も言わないのはまずいですか?プライベートなことだし」「面倒なので、振られちゃったって言おうか」「お料理男子を目指してるなら料理を教えて欲しいとか良いんじゃないですか。」「二人でこそこそする?」「お母様を驚かす為にって言い訳駄目ですか?」「使えるかもね。シンプルで良い。」「だからみんなからお料理習うと良いですよ❗️女性だけじゃなくて男性も料理好きな方いますから」「おおごとにならない程度に目指します。料理男子」「ええ。頑張って」「早速遠山さんに教えてもらわないとね」「そうね。さて戻らないと。遅れちゃうと目立ちますよ❗️」二人は早足で会社へ戻った「そう言えば寺内さんお仕事終わったんじゃ…。」「いやぁカバン置きっぱなんで戻らないと。」「そうなのね。」

午後の業務が始まった。「外寒くなかった?」「良い天気だったから全然」「そう」「どうかした?」「ううん別に。」変わったことも無くスムーズに仕事が終わり退社する

「お疲れ様です」文野は早足で駅へと向かう「立花さん」女性の声だ「文野さん」「えっ」振り返ると高野咲子が車から顔を出した「まぁ咲子さん。お元気ですか?」「ええあなたもお元気そうで」「はい。先日はアイスクリームご馳走さまでした全員の分出していただいて…てっきり最後のだけだと思っていたら全額だったので3人で驚いたんです」「楽しかったからつい、失礼にならきゃは良いけど」「とんでもないです」文野は手を振って否定した「母さん,載ってもらって下さい。立ち話もおかしいよ」「そうね。文野さんどうぞ載って下さい」咲子がドアを開けて空いてるシートへ誘う「えっあっはい」慌てて車内に引き込まれる「ねぇ。これから予定ある?」「いえ特には。あの…。」「誠、車を出して」「シートベルトしてくださいね文野さん」「はぁ…。」仕方なくベルトをつけて座り直す「良かったわ文野さんに会えて」「あのぅ、今日は一体何が有るんですか?」「お食事したかったのよ。あなたと」「はぁ…。」「お疲れ様です立花さん、突然の無礼を許してください」誠はハンドルを握っているので前を見ながら声をかけた「お疲れ様です。高野さん」「ねえ、何か食べたいものなーい?」「特別にありません」

「では,私の好みで、誠、お願い」「わかったよ。文野さん巻き込んでごめんね」「巻き込んでないわよ?未だ」咲子は笑って言った「巻き込むって何ですか?凄く怖いのですが」おそるおそる文野は尋ねた「今日は一緒にご飯を食べたいだけなの。うちは誠しかいないから女の子と食事することがなくて…。」「女の子じゃないでしょ❗️若い女性でしょうに」「そうね。失礼しました」「本当に巻き込んでごめんね」誠は二度謝った「巻き込んでないわよ」咲子も二度同じことを言った。

結局3人は咲子のお気に入りの中華料理店で食事を取った「美味しいですね。プロって味です」文野は感心しながら食べている「お料理は好きなの?」「いえ、人並ですよ。普通の家庭料理くらいは、出来ないと独り暮らしは出来ませんから」「親御さんは?近くにいらっしゃるのかしら」「イエ実家は遠いです。私は大学に通うために上京してきたので」「大学からこっちなの?」「ええ。」「もう慣れた?」「特に大変だと思ったことはないですよ?友人も出来ましたし、職場にも恵まれていますし」「そう。未だしばらく現状維持かしら」「ボーイフレンドはいるの?」「今は居ません。友人達と過ごす方が楽しいですから」「ふーん。君ならもてるんじゃない?」「さぁ。よくわからないです。そんなに興味のわく人いないので」「タイプは?」「う~ん真面目な方かな?」「他には?」「さぁ。好きになった人がその時のタイプですよ。」「難しいわね❗️」「きっかけですよね?全然興味が湧かなかった人が急に気になるかもしれないでしょう?」「そうかなぁ…。」高野は不思議そうな顔をしている「高野さんは、一途なタイプなんですね?」文野は高野の顔をじっと見る「そ、そう言う訳じゃないけど。」「クスクス。高野さん、純粋なんですね?可愛い。」「か、可愛いって。僕の方が歳上なんだけど?」「おやおや…」「母さんまでなんて顔してるんですか❗️」「我が息子ながら可愛いなと思ってね」「母さん❗️」「愉しそうですね」「ええ。娘がいたらこんな風に愉しいのかしら。ねえ、文野さん、うちの誠、お薦めよ。大企業じゃないけれどこの後会社を守っていかなきゃいけないし、あなたの様にしっかりして、度胸のある人に支えて欲しいのよ」「母さん、どさくさ紛れに何て事を言うんですか‼️」「あら、誠のタイプでしょう?文野さんは。」さらりと言う咲子「どうかしら、文野さん、うちの息子」「そうですね。咲子さんのお薦めなので取りあえずデート位はしてみますか?」「取りあえず?」「デートって付き合う前にも食事したり出掛けたりすることも含まれると思うんです。どうしますか?」「お願いします」あっさりと誠は文野とデートをゲットした。「では週末に会いませんか?」「土曜日は同僚達と料理する予定なんです。課長のお宅で6人集まる予定です」「6人も?」「余程広いキッチンなの?」興味深く咲子が会話に入ってくる「はい。新築で、お父様と二人暮らしだそうです。」「お嫁さんは?」「未だみたいです」「まぁ、文野さん、気に入られたら困るわ。断れないの?」咲子が真剣な顔をしている「実は、メンバーに候補者が居るんです。お父様と相性を知りたいと言う候補者が協力依頼がありまして。参加することになったんです」「まぁ、うちと一緒ね」咲子が笑う「えっ。そうなんですか?」文野は不思議そうな表情だ。「女性は何人行くの?」「4人です。でも.みんな課長と候補者の味方ですよ。」「私が行きましょう。」高野は口を挟む「はぁ?」突然何を言い出すのかと言う表情の文野「立花さんは僕と予定があるって事で迎えに行くんです。」「そんな事したら二人が付き合ってるってことになりますよ」「だってその予定でしょう?」当然と言う顔の高野「まるで、マーキングだわ」咲子が笑ってる「電話を掛けて下さい。何度か…」「電話?」「普通.何度も掛かってくると誰かと予定があるって思いますから。電話だけで充分ですよ。」「それもそうね」納得の咲子「誠、残念でした。電話なら私でも掛けられるわ」「ええっ、母さん…。」「でも、男の声の方がリアルですよね?誠さん」「そ、そういう事。残念なのは母さんの方だよ」「まぁ、残念。でも誠,これで文野さんの電話番号聞けるじゃない?」「ま,まぁね…。私の電話番号はこれです。文野さんデータ送信します。」「ありがとうございます。発信するので登録お願いします」文野は高野の携帯へ発信して番号を登録を済ませた「咲子さんの番号もお願いします」高野が咲子の番号もデータで送ってくれた「私も文野さんの✨ゲットだわ。ねぇ、たまには連絡して良いかしら?」「ええ。どうぞ」「ありがとう。ヨロシクねぇ」「こちらこそ。」


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