第15話 風が吹けばギルドが困るサイド・財テク失敗
「うはははぁぁあ! 見たかねこの俺の財テクぅぅ!」
「さすがっす! 大儲けっすポンコさん!」
ここは王国のギルド本部。
執務室の椅子にふんぞり返り、ギルドマスターのポンコは得意絶頂状態だ。
「ふんっっ! ノインのヤツは帝国戦略研究所に加入したようだがぁあああぁ」
「所詮は役所ぉ……法外な移籍金は設定できむぁあああいっ!」
「ヤツの移籍金が高騰する前にぃ……この俺様の華麗な財テクでっ!
一撃で買い戻すのだああああっ!」
ズドンッ!
「「「おおっ!!」」」
ずっしりとセンド金貨が詰まった革袋を机の上に置くポンコ。
すかさず取り巻きたちがはやし立てる。
「こぉこにある先週分の利益だけで数十万センドぉ……強欲な女どもへの借金もこれで完済!」
「「「おおおおおおおっ!!」」」
「しぃいかも、頼れるコンサルタント(笑)によればぁ! ミスリル銀の相場は世界的に上昇中だぁああ!
切れまくる頭脳でぇえええ! ”10倍ればれっじ”を掛けた俺様わぁ! 来週には数千万センドの大金持ちよぉ!」
「「「うおおおおおおおおおおおっ!!」」」
「「「これでノインのヤツを買い戻せますね!」」」
「ぐわはははははぁっ! 所詮奴は駆け出し冒険者! 1000万センドも出せばどこの組織だろうがノシ付きで差し出してくるにきぃまっているのだぁああ」
少しは頭のいい人間がギルドに居れば”10倍レバレッジ”の時点で、あっ……(察し)となるものだが、不幸にもこのギルドにはバカしかいないのだった。
帝国戦略研究所がノインの移籍金を5000万センドに設定したことなど知る由もなく、先物取引の業界紙を握りしめるポンコ。
彼は勝利を確信していた……海の向こうで恐るべき事態が起きたことを知らず。
*** ***
「馬鹿なぁ!! そんな馬鹿なぁあああ!!」
翌週、早朝のギルドマスター室にポンコの絶叫が響き渡る。
業界紙にはでかでかと”帝国で史上最良のミスリル銀鉱脈見つかる! 世界的な品薄感は解消か”の文字が踊る。
哀れポンコが飛びついたミスリル銀の先物相場は、先週の半値まで暴落していた。
「ま、まぁ大丈夫じゃないっすかポンコさん!
半分まで落ちたんでしょ? どうせまた上がるんだから追加で買えば大儲けっすよ」
「エーイぃいいい! お前は頭がいいなぁ! その通りだぁあああ!
ここで引くなど玉無しチキンのすることよぉぉぉぉおおおお!
追加購入だぁああああ!」
翌月彼らは気付く。
レバレッジで膨らませた購入資金には返済期限があることを。
かくして、先物取引に失敗した冒険者ギルドはノインを買い戻すどころか、莫大な借金を背負うことになったのだった。
「何故だあああああぁあああ! 何故借金が出来ているぅ!? 出てこいコンサルタントぉ!!」
結論……規約はよく読みましょう。
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