第13話 思わぬ副産物で大儲けです

 

「えっ……えっ?」


 膝を抱えた姿勢のまま、ユーノ(球状)が山なりの軌道を描いて空中を突き進む。

 僕のもう一つのユニークスキル、”シンカー”は正常に発動してくれたようだ。


 体重 (ピー)㎏のユーノをワンハンドスロー出来るとか、”シンカー”には筋力強化効果もあるらしい……凄い!


 ク、クアッ?


 メタリックなガーゴイルくんも、さらなる魔法攻撃か、剣を使った物理攻撃が来ると予想していたのだろう。

 まさかものすごい勢いで人間が飛んで来る事は想定外だったらしく、どことなく困惑した表情で前足を伸ばし、ユーノをはたき落そうとする。


 だが、甘いっ!


 ぎゅんっ!


「ぬほっ!?」


 妙な鳴き声と共に、ユーノが空中で軌道を変える。

 鋭く曲がって落ちた彼女は、伸ばされたガーゴイルの前足をすり抜け、胴体に命中する。



 バッキイイイイイインンッ!


 クアアアアアアアアアッ……!?!?



 困惑の鳴き声を上げ、メタリックガーゴイルが砕け散る。


「むぎゅっ!?」


 ごろごろごろ……ドガッ!


 ガーゴイルを粉砕しても勢いが止まらないユーノは、そのまま床を転がると洞窟の壁を粉砕してようやく停止する。


「きゅう……」


 ”なんか硬い魔力”を展開していたことが幸いしたのか、衝撃で目を回しているが傷一つないようだ。


「よしっ! 僕の作戦は完璧だな! ”シンカー”……確かにこれは20勝(?)を目指せるっ!

 たぶんだけど、丸ければ何でも投げられるらしいな……初めてユーノの無駄脂肪が役に立ったぞ!」


 がばっ!


「こらこらっ! そ~いうお役立ちはユーノちゃん求めてませんっ!」


 スタン状態から回復したのか、ユーノはその場で立ち上がると腕をぶんぶん振って抗議の意思を示す。


「いや待ってユーノ……君は女神スキルを封じられてもなお、絶大な攻撃力を発揮できることを示したんだ!」


「これこそ、女神千年の歴史においても画期的な出来事!

 僕とユーノの愛情コンビネーションが結実したんだよ (適当)!」


「愛情……コンビネーション……わたしとノインとの」

「なるほどっ! ノインのおかげでユーノちゃん、もう一段階進歩したってことだねっ!」


 案の定乗ってきたユーノにビシッと親指を立てる。


 ……冗談はさておき、このスキルコンビネーションは使えるかもしれない。

 いざという時、奥の手として使おう……スキルの発動手順に最適なユーノの体重まで。

 きっちりとメモリークオーツに記憶する。


「これで研修カリキュラムはクリアだよね……んっ?」


 そろそろ帰ろうか……そう彼女に声を掛けようとした時、なにかに気づいたのかユーノがしゃがみ込む。


「なにこれ……キラキラと光ってる?」


 ユーノが粉砕した洞窟の壁……そこからこぼれ落ちた光る石片が気になるようだ。

 ユーノが見つめる間にも、石片から漏れる七色の光は強くなり……更に背後の崩れた壁も同様に光り出す。


 ……まさか、この輝きは。


 最高級の武具に使われている伝説の金属。

 とてつもない価値がある白銀の貴公子……その名は。


「ミスリル銀!?」


「……はえっ?」


 僕の驚愕の叫びとユーノの困惑の声が、同時に洞窟内に響いたのだった。

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