第12話 ”シンカー”の”進化”(えっ!?)
ドドドドドッ……
巨大な爆発に伴う振動が洞窟を揺らす。
こてっ……
炎と煙が収まり、こんがりと焦げたユーノが音もなく倒れ伏す。
「ふぅ、なんとか助かった……それにしても攻撃魔法の効かない特殊個体か、イレーネ所長も厄介なモノを用意してくれたなぁ」
「だけど、逆に物理攻撃に対する耐性は弱くなっているはずだから……そこを突けば!」
油断せず、ガーゴイルの動きを探る。
「ちょ、ちょちょちょっ!? メイン盾となったわたしに対する心配の言葉は!?」
がばっ!
何事もなかったようにふるまう僕に不満でもあるのか、砂浜に打ち上げられたデスオクトパスのようなキモイ動きで体を起こすユーノ。
「あ、おはようユーノ、早いね」
「おはようじゃな~いっ!」
「ほらほら、ユーノちゃんちょっと焦げてるよ? 膝をすりむいてるよ?
”僕の可愛いユーノになんてことを……くそっ、こんな傷ついて……もうお前、許さないからなっ!”……て感じで動かないわたしを抱きしめ涙を流す場面では!?」
「いやユーノ、女神ちゃんな君がこれくらいのダメージでどうにかなるわけないじゃん」
「僕に心配してほしいなら、腕の一本くらい吹き飛ばないと……風情がないよ風情が」
「そこそこ焦げてるのに風情とか言われた!?」
「早く脱皮しなよ脱皮」
「脱皮!?!?」
……別に僕はユーノを雑に扱っているわけではない。
なんやかんや言っても、女神ちゃんは神が遣わした上位生命体 (たぶん)……人間とは比較にならない頑丈さを有し、少々のダメージなら立ちどころに治ってしまうのだ。
キラキラキラ……
話している間にも癒しの魔力がユーノを包み、ぽろぽろと
僅か10秒後、すっかりお肌つるつる、綺麗になったユーノが姿を現した。
「うっ、この燃えカスって環境に悪そう…………あっ! ユーノ、無事でよかったよ!!」
だきっ!
「いまさらそのセリフっ!? 女神ちゃんのリスポーン跡は自然に優しいから! 草木も伸びるから!」
ちっ……お望みのセリフを言い、感激して抱きつくフリまでしたのに、注文の多い女神ちゃんである。
「なるほど……畑に植えて爆炎魔法を撃ち込み続ければ作物が育つというわけだね♪」
「とんでもない扱い!?」
ユーノと軽妙な会話を楽しみつつ、僕はガーゴイルの様子をうかがう。
魔法を跳ね返したヤツは、祭壇の上に座りじっとしている。
なるほど、こちらの攻撃に反応するタイプか……魔法の効かない敵にどう対処するか、帝国戦略研究所の研究員として応用力を試すという事だろう。
僕の”進化”で極大魔法を試す……という選択肢も取れるけど、もしヤツがそれすら跳ね返した場合、ユーノバリアを使っても
ここは、もう一つのユニークスキルで……魔法防御に特化したヤツの対物理防御はそれほどでもないはず……一つの”策”が、急速に頭の中で形を成していく。
「もうっ! いくら女神ちゃんが頑丈でも限度があるよ! 聞いてるノイン!?」
「……ごめん、ユーノの回復時間を稼いでたんだ」
「あとほら、ヤツを見て……ユーノの魔法を跳ね返すのに力を使いすぎたのか、動きを止めている。 今がチャンスだ」
「えっ……そうだったの? さすがノイン、凄い深慮近謀だね!」
チャンス、というのは本当だけど、適当に放った僕の言い訳にあっさり騙されるユーノ。
ちょろいにもほどがある……。
無理に難しい言葉を使おうとして間違っているのが彼女らしい。
「よしユーノ……ヤツを倒す凄い手を思いついた」
「身体じゅうに堅めマシマシ魔力を展開して、膝を抱えて丸くなってもらえる?」
「うんっ! こう?」
僕の言葉に素直に従うユーノ。
こう言う所はかわいい子である (いまさら)
役に立たないと思われていた僕の”シンカー”……胸部に
「僕のこの手で、投げられるはずだっ!」
むんずっ!
ぶんっ!
「……へっ?」
僕は丸くなったユーノを右手で引っ掴むと、全体重を乗せてガーゴイルに向かって放り投げた。
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