第11話 チュートリアルでモンスター退治に行きます(定番)

 

「はいこれ、ユーノにプレゼント!」


「わわっ!? 可愛い首輪! ノインありがとお!」


 僕が差し出した”紫電の首輪 (一度付けたら外れない呪い付き)”を、何の疑いもなく身に着けるユーノ。


 あいかわらずちょろい女神である……これで (主に僕の)セキュリティ対策は万全だ。

 女神スキルが暴走した時だけじゃなくて、部屋を散らかして片づけないときにもスイッチ押すか……しつけは大事なのだ。


「それで……今日はモンスター退治に行くんだよね?」


 僕に手綱を握られたことに気づくこともなく、無邪気に聞いてくるユーノ。


 帝国戦略研究所に就職した僕たちは、1週間に及ぶ研修を終え……最後のカリキュラムとしてモンスター退治を行うことになっていた。


「そうだね、イレーネ所長からはなるべくいろんなスキル……特にユニークスキルを使い、この記録水晶メモリークオーツに記録しておくように言われているよ」


「らじゃ~っ! そんな強いモンスターじゃないんでしょ?

 女神スキルは制限されてるけど、フツーの魔法は使えるから。 ユーノちゃんにお任せ!」


「うん、頼りにしているよ」


 ユーノの言葉に適当に相槌を打ちつつ、僕はイレーネ所長から手渡されたファイルをめくる。

 この最終カリキュラム……ターゲットはCランクモンスターのガーゴイル。


 ユニークスキルが2つ使える他は、まだまだ初級レベルの僕だけど……ユーノの魔法もあるし、普通なら”進化”を使えば楽勝だろう。


 だけど、”マッドな”イレーネ所長の事である。

 どこに罠が仕込まれているか分からないぞ……いざという時はユーノをメイン盾にしよう。


「ティルナノーグ山に吹く風颯爽と~♪ えいえいお~!」


 調子の外れた鼻歌を歌ってご機嫌なユーノの後を追いつつ、僕は慎重にダンジョンを進んでいくのだった。


 ***  ***


「地図によるとそろそろ最奥だ……ユーノ、警戒!」


「ほいっ! やっぱボスがいるのはダンジョン最奥の広間って決まってるよね♪」


 2時間後……僕たちはダンジョン最深部に到着していた。

 上のフロアは人工的に作られていたけど、最深フロアは自然の洞窟を利用しているらしく、どこからか水の流れる音が聞こえてくる。


 突き当りを左に曲がり、大きな空間に出る。

 どうやら、ここが目的地のようだ。


 広間の中心部には祭壇のようなものが置かれ、その上に石像が鎮座している。

 上半身が翼を持った鳥、下半身が屈強な人間の姿……恐らくあれがボスモンスターのガーゴイルだ。


 僕たちが広間の入り口に立ったのに、石像に動きはない。

 何かしらの行動をトリガーに動き出すタイプか?

 慎重に様子をうかがっていると、待つことが苦手なユーノが動く。


「ふふん、ガーゴイルなんてユーノちゃんの魔法で一撃なんだから!

 先手必勝! 食らえ、イオニック・バーストっ!」


「ちょ、ユーノ!? 相手の出方が分かんないのに……」


 ドウッ!


 止める間もなく、ユーノが魔法を発動させてしまった。

 ガーゴイルは石で出来ているので、爆裂魔法は理にかなっているけど……。


 クアアアアアッ!


 魔法の発動を検知したからか、ガーゴイルが立ち上がり鳴き声を上げる。

 そのはずみに、ヤツの体表に亀裂が走り……。


 ぱきいいんんっ!


 乾いた音を立て、砕け散る石の表皮の下から現れたのは……ギラリと輝く金属製のボディ!


「なにぃ!?」


 カキインッ!


 真っすぐに伸びたイオニック・バーストの黄色い閃光は、ガーゴイルの表皮に跳ね返され、こちらに戻ってくる。


「わたしの魔法を、打ち返したぁ!?」


「くっ……!?」


 小物っぽい叫び声をあげ、立ち尽くすユーノ。


 僕は慌てて彼女に駆け寄るとその華奢な肩を掴み……。


「ノイン!?」



 ……迷わず彼女を盾にした。



 ズドオオオオオオンッ!!


「へぶうっ!?」


 洞窟の広間を、爆炎とユーノの小汚い悲鳴が包んだ。

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