第5話踊り娘隊現る2

「怪我はありませんこと?」

それは、美しい少女だった。艷やかな黒髪を靡かせながら、踊る姿は、見る者の視線を釘付けにした。


「ふう。やれやれですわ。」

ゾンビを一通り倒し終えると、少女がエイミーーに向き直る。

「あ、ありがとうございます…!」

「どういたしましてですわ。」

「あの、あなたは…?」

「…わたくし、マリナと申しますわ。」

「私は、エイミーです…。」

「貴方、どうして、外に出ていましたの?」

「逃げようと思って…。」

そう言った時、マリナの翡翠色の双眸が、エイミーを射抜いた。

「本当に、そうですの…?私には、誰かの囮になっているかのように見えたのですけれど…?」

「すみません。そうです…。」


イドは、ゾンビに囲まれてしまった。エイミーが引きつけてくれたとは言え、ゾンビは街中に溢れている。

べチャリ、べチャリ、べチャリ、べチャリ。

聞き慣れてしまった恐怖でしかない音が四方から聞こえる。

万事休す。イドは、目を閉じた。

が、その目は、次の瞬間、驚愕に見開かれることになる。

イド浮遊感を感じた。見目麗しい少女がイドを抱きかかえていた。俗に言う、お姫様だっこである。少女は、およそ人とは思えないほどの跳躍力をもって、ビルの上に移動した。そして、イドを降ろすと、先ほどイドが居た位置に着地する。

「悪い子…!」

そう呟き、ゾンビを倒し始める。

が、その手には、およそ攻撃をするためのものは握られていなかった。

彼女は踊っていた。彼女が踊る姿は、美しく、見る者を魅了する妖しい魅力があった。

現に、ゾンビは襲うことなど忘れたように、魅入っていた。

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