第6話踊り娘隊現る3

「悪い子…!」

少女はその色素の薄い白い髪を靡かせながら、ゾンビを倒していく。だが、その手には、剣も銃もハンマーも、およそ攻撃をするためのものは握られていなかった。

驚くことに、少女は踊っていたのだ。彼女が踊る姿は見る者の心を惹きつけて止まなかった。現に、ゾンビも襲うことなど忘れたように魅入っている。少女がステップを踏むと同時に彼女の踏んだ場所から闇が生まれ、それは自我をもっているかのように、ゾンビに覆いかぶさる。少女の踊る姿に魅了されているゾンビたちは、逃げることもせず、ただただ闇に喰らわれるだけである。


一通りゾンビを倒し終えた少女がイドに向き直る。天使と見まごうかのような少女である。

「あ、ありがとうございます…!」

「どういたしまして。それで、何故?」

「…ゾンビから逃げるために…。」

すると、少女は、やれやれと呆れたようにため息をついた。

「私が聞いたのは、何故、武器も何も持たずに外に出たのか、よ。」

「……ゾンビと戦う気がありませんでした…。」

「ふうん。」

少女は、イドに対しての興味を無くしたように、目線をイドから外した。そして、赤い双眸を物憂げに細める。

イドは、この少女のことを知りたくて、話しかけてみた。

「俺は、イドです。貴方は…?」

「……………。」

完全スルーされた。


気づけば、エイミーは、マリナに洗いざらい話していた。

「エイミーさん、イドさんの所へ行きましょう。」

「イド…。」

エイミーが囮になったとはいえ、街中にゾンビが居る。イドがちゃんと生きているのか怪しかった。

エイミーの思考を見透かしたかのように、マリナが口を開く。

「大丈夫ですわ。イドさんのもとヘはが行っておりますわ。今頃、貴方を心配しておりましてよ。さあ、イドさんのもとへ参りましょう。」

あの子は必要最低限の話しかしないものですから、イドさんはエイミーさんの安否は知らない筈ですわ。私は必要最低限の情報だと思うのですけれど。あの子の基準は分かりませんわ。

「はい…!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る