突発過去話~実はすごい同級生~

 高校入学。人によっては胸躍り、人によっては無感情な行事。俺は前者だ。


『―――であり、皆様が―――』


 校長の話はつまらなく、長いというのはどこに行っても同じらしい。ただ、誰も寝ていなかった。そして誰も校長の話を聞いていなかった。理由は―――


「なぁ、あれ…」


 偶然となりだった同じ中学から来た友人、佐藤武さとう たけしが、小声で話しかけてくる。


「なんで誰も何も言わないんだろうな?」


 この体育館の全員が注目しているであろう方を見ながらそう返す。

 目線の先には、腰まである黒髪を持つ、モデル並みの美人にべったりくっついている、白髪の小学生ほどの身長の、アイドル以上の美少女がいた。


「それでは各教室に移動してください」


 こそこそ話し合っていたら、入学式は終わっていた。


「行こうぜ、憐」


 清水憐しみず れんが俺の名前だ。


 教室に行き前の席の武と話しているとあの二人も教室に入ってきた。


「同じクラスなんだな」

「あんな美人たちが同じ教室とか、勝ったな」


 教室に二人が入ってきた瞬間、一気にクラス中の話題が二人に集中した。

 ただ、でかい声で話す勇者はいないから、あの二人の会話をぎりぎり拾えた。この時ほど、耳がよくてよかったと思うことはないだろうな。


『真白ちゃん、大丈夫?』

『んにゅう…』


 な、なんだ今のは…!?否定、なのか…?


「大丈夫か?憐」

「武…俺いまてぇてぇを感じてる」

「いや草」


 その後、入学後あるあるの自己紹介やら説明やらがあった。美人が山崎さん、美少女が峯田さん。峯田さんの自己紹介は庇護欲を直でぶん殴ってくるようなものだった。

 なぜ峯田さんが山崎さんにべったりなのかは、なんでも峯田さんが極度の人見知りの恥ずかし屋で、山崎さんのそばにいないと逃げ出してしまうかららしい。『は?かわよ』ってクラス全員が思ったらしい。


 気付いたら入学から一か月がたった。今日はダンジョン攻略の実習の日だ。内容はゴブリン討伐だ。


「とりあえずやりたい奴好きにやりなー」


 どうせ、ここにいるのは一回以上ダンジョンに潜ったことがあるのばっかりだから、かなり適当でも許されるらしい。

 真面目な奴、目立ちたい奴なんかが戦いに行っている。

 そんな時、突然横でゴブリンの声が聞こえた。


『グギャア!』


「!?」


 驚いて声がした方を見ると、山崎さんと峯田さんの後ろに赤いスカーフを巻いたゴブリンが居た。この階層にはいるはずが無い、初心者なんかじゃ手も足も出ないモンスターだ。

 周りは誰も気づいてなく、山﨑さんと峯田さんが気づいただけだ。


 助けないと、と走り出そうとしたその時、峯田さんの姿がブレたと思ったら、アサシンゴブリンが消えていた。


「え?」


 思わず、小さな変な声が出た。

 誰にも聞こえないくらい小さかったのに、山﨑さんは聞こえたらしく、俺の方を見た。


「えっと…」

「おーい憐!こっち来いよ!」

「お、おう!」


 別に何かしたわけでもないのに、逃げられる!と思ってしまった。


「……美人って怖いな」

「何言ってんだお前?」




 その後、山﨑さんと峯田さんは普通のゴブリンの魔石を提出したらしい。………峯田さんが持ってたアサシンゴブリンの魔石はどこに行ったんだ?

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