はいしん

#1『はいしんしてみた』

「えーと…つながってる……?」


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・つながってるよー

・初見です

・全員初見定期

・かわいい

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「わ、わ、こんなにいっぱい……えっと、は、初めまして、真白って言います」


 困惑しながら、挨拶して、お辞儀をする。

 同接3万超えてる。なんで?


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・初めまして

・初めまして

・はじめまして

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「あの、その、えっと…」


 た、たくさん…ひとがたくさん…


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・かわいい

・かわいい

・慌ててる姿最高

・おちついて?

・ファンになりました

・すげぇ、同接どんどんふえてる

・登録者もどんどんふえとる

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 どうすればいいんだろ、どうすればいいんだろ、あ、えっと、とりあえず深呼吸して…えっと、そ、そうだ!今日やること言おう!えっと、そのあとは、えっと……ええい!なるようになれ!


「きょ、今日は…その…さ、最下層を散歩します……!」


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・落ち着いて?

・最 下 層 の 散 歩

・そりゃ、あのオーガをぼこぼこにしてたか

 らできそうではあるが

・かわいい

・おどおどかわいい

・小動物的可愛さ

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 ひうぅぅ…む、むりぃ…!


「ひうぅぅぅぅ…!」


 恥ずかしさと混乱で、よくわからなくなって顔を真っ赤にして、逃げる。

 はずかしいぃぃ!!


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・かわいい

・助かる

・寿命200年伸びました

・伸びすぎて草

・涙目助かる

・お顔真っ赤かわいい

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 底が深いダンジョンには、ある程度までのエレベーターがある。ある程度の深さまでは繋がっていて、私が知ってる限りじゃ、全てのダンジョンのエレベーターは最下層の一つ前まで繋がってる。

 かなり深い層で活動している攻略者には、なくてはならないもの。


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・こんなに長い時間ダンジョンエレベーター

 の壁を見たことない

・浮遊感とか大丈夫?

・深すぎない?

・どんだけ深いんだよ

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「えっと……この、ダンジョンは…『深淵の穴』、です」


 さすがに、無視し続けるのはだめな気がするから、あと、長い間狭い空間で一緒にいて少し慣れたから、答えられるものだけでも答えてみる。


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・深淵の穴ってーと、深いところだな!

・最下層こんな深かったっけ

・全部で400層あるのは知ってる

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 このダンジョンは日本で一番底が深いダンジョン。全部で400層ある。


「えっと…最下層、は、360層から、です」


 ここは、ちょっと特殊なところで、最下層とそれ以外の層の難易度がかなり違うダンジョンだ。

 いつも潜ってるダンジョンはここ。私以外にほとんど人がいないから、大好き。


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・ふっっっっか

・そんな深かったっけ

・大丈夫なの?モンスターかなり強いみたい

 だけど

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 ダンジョンって出てくるモンスターが違うだけで、ダンジョンごとのモンスターの強さは変わらない。層が深くなればなるほど、強くなってく。たまに例外があるけど。ここも、その例外のうちの一つ。


「いつも潜ってるから…だいじょうぶ…です」


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・深淵の穴の最下層って特級だよね

・いやいや、さすがにいつもは嘘

・そういえば、ましろちゃんはランクなにな

 の?

・最低でもSランクでしょ

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「えと、特級、です」


 答えたら、コメントが爆速で動き始めた。


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・特級まじンゴ?

・特級攻略者系新人配信者ましろちゃん

・配信者ランキングが動くぞ

・あのオーガ倒せる時点で動くだろ

・それはそう

・強くてかわいいとか最強やないか

・また一人、特級配信者が増えたのか

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 誰も疑わないのは、ランクを嘘をついて言うと、攻略者カードの失効とか、色々な罰があるから、普通はだれも嘘つかないから。




 そうやって、ちょこちょこ話してると、『ちん』と音が鳴って、扉が開いた。


「下層には、用がないから、走ります、ね…?」


 一応、警告。

 三喜ちゃんが、配信見てる人で画面の揺れに弱い人がいるって聞いたから。


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・了解

・画面酔い注意ってこと?

・多分

・避難します

・がんばえ〜

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 コメント欄を見て、良し、と一つ頷いて前を向く。


「じゃ、いきます」


 足に力を入れて、前に飛ぶように、一歩を踏み出す。

 二歩、三歩と進むうち、どんどん景色が流れてく。


「ん……」


 途中でオーク?が出てきたから叩いて飛ばす。

 コメントに目を向けると、景色と同じくらいの速さでコメントが進んでいた。


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・はっっっっっや

・恐ろしく早いダッシュ。誰でも見逃しちゃ

 うね

・目で追えるやつSランク以上だけだろ

・はやすぎてくさ

・ワァ………

・ロックオークワンパンすご

・お、化け物リスナー発見

・よく見えるな………

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 階段の前についたから、止まる。

 ぶわっ、と後ろから風が吹いて、髪が前に飛び出てくる。


「ここから先、が、最下層、です」


 下に続く階段を指差しながら、説明する。


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・暗

・ひえぇぇぇ………雰囲気えぐ

・怖すぎて草も生えん

・ほんとに大丈夫なの?

・心配になってきちゃった

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 階段の先の感想とか、わたしを心配してくれるコメントが流れる。

 とくに、何かを返せず、階段を降りて行った。


「そういえば、なんで、階段全部15段なんだろう………」


 小さく、ずっと思ってたことを呟く。

 どんなダンジョンも、最初から最後まで階段の段数は15段だ。そして、聞いたところによると、階段の段差とか、縦幅はどこも同じらしい。横幅は違うみたいだけど。

 ちらっ、とコメントを見ると、私の小さな独り言でも拾って、反応していた。


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・たしかに

・どこもかしこも同じってのは意味わからん

 よな

・まあ、神様が作ったから

・ほなあたりまえか

・まあ、いちいち変えてたら死ぬほど面倒や

 もんな

・そう考えると神様に親近感湧く

・湧かねえよ

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 小さな呟きでもこれなら、下手なこと言えないな……炎上しちゃうもん。

 あ、そうだ。あのことも言っとかないと。


「えと、モンスターとか、その……よく、わからないから、その……」


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・なるほど?

・落ち着いて、ゆっくりでいいよ

・つまり、解説は期待すんなよってことね

・なるほど

・了解

・まあ、そんなに気になってないけども

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 言いたいこと当てられちゃった。


「そ、そう、です…」


 こくこくと頷きながら、答える。

 モンスターが気にならないのは、そうだよね。気になる人は、解説系の人のところに行けばいいから。


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山﨑三喜・じゃあ、真白ちゃんの倒し方と

     か、印象聞きたいな

・え、本物やん

・噂のサブチャンネルじゃん

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「あ、三喜ちゃん…!やっほ」


 前もって、三喜ちゃんに、配信見る時のアカウント名を聞いてたから、すぐに気づけた。なんだか嬉しくて、笑顔で手を振る。

 三喜ちゃん!わたし、精一杯頑張ってるよー!


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・かわ………

・うぐぁ!

・アッ

・我が生涯に一片の悔いなし

・し、しんでる…!?

・この笑顔で死ねたなら、本望というもの

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「えへへ…じゃあ、そうする…」


 コメントを見ずに、るんるんでダンジョンを進みはじめた。


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山﨑三喜・真白ちゃんかわ…………

・三喜さんも逝っちまった…………

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「あのオークは、普通のより、ちょっとだけ…硬い気がします」


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・ソリッドオークですね

・死ぬほど硬い上に生命力も高いクソモンス

 ター

・でも真白ちゃんにはちょっとだけ硬いオー

 ク

・ワンパン了解(震え)

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「このゴブリン、は、足が速い、です…だから、逃げられる前に、やり、ます」


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・ハイアサシンゴブリンですね

・死ぬほど速いし傷つくってくるカスモンス

 ター

・今思ったけど君Sランク以上だね?

・そのモンスターより速いのよ

・びびって逃げてもすぐに追いついてるの草

・目で追えなすぎる

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「赤いドラゴン、です。たまに、みかけます。おにく、とても美味しいです」


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・クリムゾンドラゴンですね

・火力お化けの強モンスター

・火力高いくせに鱗も硬いから、避けて通り

 たいやつ

・真白ちゃんからしたらただの美味しい肉

・ブレスを手刀で切り裂いて突撃

・後、ワンパン

・すげぇーーー(思考放棄)

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「この前、三喜ちゃんをいじめてたオーガだ…」


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・ひぇ…

・こわ…

・ギャップすごい

・あ、何かが開く音が…

・可哀想に……

・ようこそ

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 そんなこんなで、少し話しながらいつも通りモンスターを倒してたら、気がついたら五時間も配信してた。

 そろそろ、帰ろうかな。


「えと…そろそろ、帰る、から…配信、閉じます、ね…?」


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・了解

・たのしかった

・最高の配信だった

・伝説の配信だった

・お疲れ様です

・わかりましたー!

・おつー

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「えと、お疲れ様、でした。また、やるから、その……また、ね…?」


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・キュン死

・リアルで言われたい

・またねー!

・また見るよ!

・かわいい

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「ばいばい」


 て言って、配信を閉じた。

 なんだか、ちょっとだけ楽しかったな。

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