なんか何も出てこねぇから手慰めに番外編〜異世界召喚された〜

 ダンジョンだとかスキルとかがある世界。そんなん神様がいないわけなくて。且つ意外と身近なのだ。




「おん?ここはどこぞ?」


 神の部屋、と言う名前の真っ白空間に田中はいた。まあ簡単に言うと神に呼ばれたってこと。


「こんにちは、田中さん」


「うぃすうぃす、おっすおーっす。なんすかね」


 軽い。


「私は、あなた方で言うところの、神です」


「おーうゴッドなんじゃ」


 はっはー、なんて笑いながら指を刺す田中。田中の世界は実は異常なほど神が身近で、異世界のこの神が関係してる世界は神が地上と関わってるのは何万年何億年も前の話レベル。その差のせいで、神はチラッとむかついた。


「えぇ、超常の存在です。もっと敬ってもバチは当たりませんよ?」


「はははー。じょーだんじょーずやな!」


 一般人、と言っても何の力も持ってない人なら、全員腰抜かす程度の神力を出した異世界の神。それに対する田中の反応は、100%の茶化し。満面の笑みからのサムズアップはきちんと煽ってる。


「………今からあなたには、私の世界に来てもらいます」


「魔王討伐?てんぷら——じゃねぇよバカがテンプレか」


 異世界の神は思う。『あ、人選ミスったな』と。


「そうです。今から私の世界を脅かす魔王を討伐する旅に出てもらいます。と言っても、私が召喚したのではなく、国が勝手にやった事なので、そこはご了承ください」


魔王討伐それ終わったら帰れんのー?」


「はい」


「おけおけりょーかい。わっちに任せとケ☆」


 不安しかない女神だが、召喚されると言うことは才能はあると言うことなので、そう言うものとして諦めた。


「では、スキルを付与するので」


「いらんっすね。もってっから」


「は?」


 実は、この女神、さっきは召喚に関与してないなんてほざいたが、ばちぼこに関わっている。

 今回連れてくる予定だった世界は、今読んでるみんながいるこの世界からの筈だったが、めちゃくちゃ似てる田中の世界と間違えたのだ。

 うーん駄女神。


「え、あ、ほんとだ…じゃあ間違えたってこと?………ま、まあ良いです。どうせ魔王討伐してくれたらいいし、そのあと帰らせるし」


「うーん駄女神」


「じゃあ、頑張ってください」


 駄女神、キレる☆————

 本当のこと言っただけなのに草、なんて本気で思ってる田中は、まあどーでもいっか、と考えた。雑である。

 世界間違えて召喚しちゃいました、に対する文句にキレるのはかなり理不尽だが、まあだって駄女神だし、と勝手に1人で納得した田中なのであった。




 眩しいなぁ、なんて思いながら瞼を閉じず、光が収まるのを待つ雑男、田中。

 一般人だと目を開けてると普通に視力いかれるくらいの光量なのに、閉じないあたりおかしい。

 光が収まっていき、見えてきたのは召喚系の異世界ラノベの王道な所。あたりを見れば男子高校生と女子高校生が男1女2で居る。さらに周りには、騎士と王様とお姫様とあと王子様。

 てんぷら超えてテンプレ超えて天丼マンと、田中は思った。どう言うことかはわからないし多分特に意味は無い。


「混乱している所、突然で申し訳ないが、貴殿らには魔王を討伐してほしい」


 王様の言うことって大抵こんなんよなぁなんて感想を抱いたのは、田中だけのよう。そりゃそうだ。

 田中は思った。あ、これ優等生っぽい男子高校生がどこか聞いて誰か尋ねて、この世界の礼儀作法とか知るわけねぇのにそこまで考えることができない盲信系アホかませ騎士が突っかかってくるやつだ、と。テンプレは一度は見てみたいと思う派の田中は、わくわくしてた。

 お?言うか言うか?来るか来るか?って。


「こ、ここはどこですか?あの、あなた方は…」


「貴様!何だその態度は!」


 お!来た!とテンション爆上げな田中。ただ一つ、違うところが。それが騎士が突っかかったのが田中だと言うこと。

 まあそりゃそうだと。全身で『テメェら誰やねんてかここどこやねんあの駄女神そいやなんの説明もしとらんやないかてか早してくんねぇかな』オーラを醸し出しながら謎にワクワクしてるんだから。


「いやーん、槍負けないでほしいっぴ〜」


 そう言ってデコピンで槍を砕いた。

 いつでもどこでもどこまでもふざけたいらしい。器用に槍だけ砕いたのもふざけた範囲なのはそれそのものがそもそもふざけてるけど。


「なっ…!」


「にぬねの?」


 ナメくさってるこいつ、とは女子高校生の片方の感想。

 周りが驚愕してる中、田中が楽しそうな口調で話し始める。


「なんでもええんではよ話してもらってええですか?」


 王様が、我を取り戻し話を続けた。

 王様の話は長すぎたから、要約すると『世界を脅かす魔王を倒してほしい、けど最初から放り出さないよ、王城うちで鍛錬してくれな』とのこと。

 ここで田中、急にめちゃくちゃ面倒になって叫び出す。


「魔王討伐RTA、はっじまーるよー!」


 からのガンダッシュ。魔王の場所も知らないし、探知そう言う技能も異能もスキルも何も無いのに、どこに行ったんだとその場の全員が思った。

 この後のこの高校生達はまた今度、と言うことで。




 田中の作戦はこう。『魔王の場所わからんけど雑に世界中回ったらおるじゃろ』

 脳筋すぎる作戦。普通は、と言うか普通じゃなくても時間がかかるそれは、田中からしてみれば一番早い方法なのだ。

 なぜかって?この作品のタグ見てみな?主人公最強、つまりそういうこと。


「ゆーがまおーですかー?」


「うわぁぁぁぁっ!?!?!?!?」


 大絶叫したのは、銀髪赤目の、いかにも吸血鬼みたいな美少女。

 読書に集中してる時に目の前に逆さまで変な初対面の男が出てきたら誰でもビビる。


「え、にゃ、な、なにが、え?」


「はろーはろー!それで、あなたが魔王ですかー?」


「そ、そう、ですけど…」


「ふーむ、なるほろ?」


 とてもじゃ無いけど世界の敵では無いであろう目の前の魔王。なるほど魔王っていっぺぇいるだなぁと思った田中。


「んじゃ、世界脅かしてますかー?」


「そ、そんなことして無いです…」


 ビクビクしながら返答してくる姿を見て、ああなるほろ人見知りなんじゃねぇ、と何から目線な感想。


「そ、その、多分、あなたが探してる魔王って、あっちにいるやつ、だと、思、います…」


「おぉ、あっちか!どうもどうもあんがとう」


 頭を撫でて飴ちゃんをあげてお礼を言う田中。これは完全にちっちゃい子への対応。

 その後、目にも留まらぬ速さで教えてもらった方角へ進む田中。

 吸血鬼ちゃんは「ふえぇぇ〜…」って情けない声あげながら座ってたベッドに倒れ込んだ。100年以上引きこもってる人見知り吸血鬼には、田中の相手はきつかったようである。




「ひゃっはー!貴様が世界を脅かすタイプの魔王だなァ!」


「何だ貴様は、勇者か?」


 いかにもな城の壁に飛び蹴りで突入。ダイナミック登場をかました田中。運のいいことに魔王の目の前に出た。


「お、お下がりください魔王様!」

「ちっ、常識知らずは苦手なんだよ…」

「あら、強そうな子。私は好きよ?」

「召喚されて初日のはずなのだがな」


「わぁ四天王だ。ここまで四天王してる四天王いるんじゃね」


 まさに四天王。忠誠心高そうな魔族は最初に出てきそう。クールな魔族は2番目に出てくる暗殺者系っぽい。お手本のようなおねいさん系のサキュバスは3番目に出てきてめちゃくちゃ絡めて使いそう。なんか強そうな魔族は四天王最強として、4番目に出てきてシンプルフィジカルで苦戦させられそう。田中はそう思った。


「それで、ゆーが世界脅かしてるタイプの魔王デスカ?」


「正確に言うならば、戦闘が好きなタイプの魔王だ」


 確かにすきそーと呟いた田中。


「なるほんろ、つまり戦いたいだけだ、なるほどなるほど」


 納得なるとく、と手を叩く。


「ならやろうぜ!わいがボコボコにしたる!」


 魔王軍全部相手だし、0.1くらいは出してもええな、と呟いた。


「ほう…たった1人で、とは言えんな。格が違う」


「あたし達も戦うってこと?魔王さま?」

「そりゃそうだろう。魔王様も言っただろ?格が違うんだあいつとは」


「な、舐めやがって…魔王様への態度を正してくれる!」

「舐められるのは癪なんだ…」


 それから3時間戦い、決着がついた。


「ふ、ははは!手も足も出ないじゃ無いか!」


 仰向けで、大の字で倒れてる魔王。その周りに四天王も倒れていた。


「結局0.5まで出しちゃった☆」


「くっそ、何だよあの強さ…意味わからねぇよクソが…!」

「ま、魔王様、不甲斐なくてすみません…」

「化け物すぎでしょお〜…お姉さん疲れちゃった〜」

「はははは!清々しいほどボコボコにされたわ!」


 ボロボロの魔王達と、傷ひとつない田中。

 皆んな、いい笑顔である。


「ま、楽しめたんなら充分やでな。何時でも呼んでくれたら来るけん、世界敵にすんのやめなや?」


「ははは、しょうがない。勝者にそう言われれば従わざるをえんなぁ」


 駄女神クラリスからの依頼内容は魔王の討伐だったが、シンプルに良いやつだと言うことがわかった田中は、とりあえず殺さんとこ、と考えた。あの女神の世界を脅かす魔王は倒して、今目の前にいんのは戦いが好きな魔王である。実質討伐成功と一緒やろ、と考えた田中なのであった。

 ちなみに、どうやって呼ぶか、どうやってくるかは、召喚された時に世界を跨ぐ方法を知ったから簡単にできるので、それを応用するのだ。魔王の魔法の念話と田中のスマホを繋げ、いつでも連絡をできるようにし、それに合わせて田中がやって来ると言うものだ。

 田中は実は、とち狂ってるほどの才能持ちなのである。




 その後、高校生達は、魔王が無害となり、むしろ友好的な存在になったため、自由な身になって帰れるようになったが、特に未練もないとかで帰らなかった。

 そして田中は、「この後のダンジョン攻略遊ぶ約束あっから、かえりまー」と言って帰って行った。


〜完〜

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