一般人

 5番ダンジョンの前に、かなりの人だかりができていた。皆、目的は一つ。それは、世界初の公式攻略者パーティであり、数多くの登録者を抱えたダンジョン配信者達を見ることである。

 かくいう俺も、それが目的でここにいる。

 この人数を見れば、彼らがどれだけ影響力があるかがよくわかる。かたや強きアイドルに、かたや玄人に、かたや独特の雰囲気に、かたや異常な自信の面白さに、かたや何もかも普通のくせに実力だけはおかしいギャップに。それらに魅了された奴らが集まっていた。もちろん、俺もそんな奴らの中の1人だ。

 そして、ここにいる全員が、推しを一目見るという以外に、もう一つ目的があった。それは、推しの仲間は仲間たり得るのか、というところを見にきたのだ。だが、6人パーティのうち5人はダンジョン配信者。調べればいくらでもしれる。けれど、1人だけ配信者でない、一般人がいた。いろんなダンジョン配信に度々出てくる神出鬼没の変人が。その変人を値踏みしにきたのだ。

 実力は?人柄は?口調は?性格は?などなど。もちろん見るだけじゃわからないが、だが見てみないと納得できない。


「遅いな」


「ああ。もしかしたらファンの大群に捕まってるんじゃ?」


「あり得るな…」


 遅いと漏らしたこいつは俺の友人だ。


「まったく…興奮するのはいいけど、離してやれよな」


「それな」


 勝手に決めつける。適当に理由をつけて愚痴りたい気分だ。本当に遅い。


「なんだかざわざわし始めたな…」


「いよいよ登場か?」


 良識のあるファンとして、ダンジョンの入り口の前には一本、道を開けてある。その一本道の向こう側に、人影があった。


「凄い人数ですね…」

「ライブか何かのようだのう」

「ははは!俺たちのファンってことだろう?!」

「す」

「普通のことしか言えない奴は静かにしてて」

「テメェこの野郎…」

「はっはっはー!そうだそうだクソ平凡一般メガネー」


「あれが…」


 恐らく、世界最強の戦力を持った組織…

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