魔界カフェ?④

『まっこいつらの事、よろしく頼むよ』


 と私は魔女に頭を下げた。こいつらだけだといつか人に魔族である事が

 バレて敵視されかねんからな。優秀な頭が必要だわ。


 『あんたも困った事があればいつでも言ってきなよ。力になるよ』


と魔女が言う。

 

 『この世界でこの姿の状態で困る事ってなさそうだけどな〜平和なとこだし』

 『あんま言うとフラグ立ちそうなのでやめとこ、そういう事態になれば頼むよ』


 少なくとも朝陽のいるここは大きな争いがなく毎日死に直面する事がない

 それが当たり前である事に誰も感謝しない世界、ほんと羨ましいよ

 いやちょっと待てよ、裏の世界に顔が聞くと言う事はコンビニに並ばないような

 美味しい物がまだまだあるんじゃないだろうか!?

 そこら辺は頼んでおくべきか……

 あっそうだ


 『そういや、あんた魔法は使えるのかい?』


 と私はふと疑問に思った事を聞いてみた。


 『いや使えないよ。この世界には魔法という概念がない。

 誰も魔法なんて使えないからね。

 大気や大地に魔力の元となる、魔素が存在しないのだろう。

 木々や人には少しならあるかもしれないが何かを実現するほどの

 量はないんじゃないかな。私は見た事がないからね

 精霊なんかも姿を現さないとこを見てもそうなんだろうと思うよ

 もちろん私の勝手な推測だけどね。計測できるものでもないしな

 私も、あんたもだけど体内に残ってる魔力でちょっとした魔法くらいは

 使えるかもしれないがほとんど手品の域だろうね』


と魔女が教えてくれた


 やはりそうか。一人の時間に何度か魔法を試してみたが

 全く使えなかった。朝陽の体だからなのか?と思ったり

 女神に取り上げられたのか?と思って恨んでみたりもしたが

 そうじゃなかったか


 『それじゃスキルや体技は使えるんだよね?』


 と私が聞くと


 『あ〜それは使えるよ。私もあの子らもそのままの姿でやってきてるからね

 自分の体技なんかは魔力に依存してないようなスキルなら問題ないよ

 人並み外れた力もそのまんまさ』


 と魔女が言う。


 それは羨ましい限りだ。今まで出来ていて出来なくなった事が

 多いと不便を感じる事が多々あるからな〜


 『と言う事はラトワネ、あんた達もその辺は一緒なのか?』

 

 と私が聞くと


 『はぃ、私のスキルである見る事と聞く事をどこまででも伸ばせる

 情報探知の力や羽出せば飛ぶ事も可能ですよ

 モウは小さくも大きくもなれますし、マウは魔力に依存しないパワーを

 引き出せます。ビルくらいなら全然破壊できますよ』


 自分が持つ力は異世界に放り出されても変わらず使えるって事か


 『そういうあんたはどうなんだい?体が別の物ってどんな感じなんだい?』


と魔女が不思議そうに聞いてきた


 『不便、そのものさ。魔法はもちろん、ほとんどのスキルも体技も使えない

 ただの人に魔王である私の意識なんだから金縛りにあったような感じだよ

 と言っても魔法もスキルも体技も使う事ないから別にいいんだけどね

 ちょっとの間だけだと思うと我慢できるよ』


更に魔女が


 『いやそれも気になるが、トイレやおふ……


 『聞くな!!!!!!』


 と私は魔女が面白いです半分で聞いてる事がわかったので

 その質問は遮らせてもらった

 魔女が笑ってやがる


『あははは、ごめんごめん。怒るなよ。今度うまいもんでもご馳走するからさ』


 うまいもんだと!?


 『許す』


 咄嗟に反応してしまった


 『それじゃそろそろ帰るよ。邪魔したね』


 と私が魔女に言うと


 『魔王さま〜帰っちゃうんですか?』

 『かえっちゃうんですか〜』

 『かえっちゃうんですか〜』


とラトワネ達が寂しそうに聞いてきた


 『また来るよ』


 私はそう笑顔で伝えた


 『絶対ですよ。来てくださいね』

 『きてね〜』

 『きてね〜』


 私は、ああと返事をして部屋を出て行こうと思った時だった


 『魔王さま〜ほんとにまた来て下さいね』


とラトワネが抱きついてきた


 『ごめんなさい、ごめんなさい、でも〜』


 マウとモウも飛びついてきた

 

 『ちょっ!!痛いって』


 寂しいのもわかるがまた来ると言ってるのに

ラトワネとマウ、モウにもみくちゃにされてる時に


 『楽しそうだね、私も入っていいかい?』


魔女が笑いながら言ってきた


 『しょーもない事言ってないで助けろ』


 私はなんとか3人を突き放して店を後にした

 店を出てすぐ


 『しつこいな〜嫌だって言ってるじゃないですか!』


と女性の怒る声が聞こえてきた。


 この声は、と思い声のする方を見るとやはり朝比奈先輩だった

 む、酔っ払いの若者かナンパなのか?絡まれるご様子

 先輩の窮地。助けに行かねば


 『それ以上この人に近づくなバカ物が!!!』


 と私が割って入ると阿呆どもが私に向かってきて

 ベタな展開が始まった

 殴りかかってくる勢いだったのでさっと交わして

 足引っ掛けて転ばせて、威嚇して気絶させといた

 

 これでわかった事があった

 体技は持ち合わせてないが体の動かし方がわかる

 魔王であった時の体捌きは私の意識の中にある

 一度乗れるようになった自転車はずっと乗らなくても

 頭の中に乗れるイメージが残っててる、そんな感じか


 『先輩大丈夫ですか?』


 と私はちょっとカッコつけて言ってみた


 『朝陽くん、ありがとしつこかったけどこの人大丈夫なのかな?』


と朝比奈先輩が倒れてる酔っ払いを恐る恐る見ている


 『酔っ払って倒れてるだけでしょう。息してますし大丈夫っしょ』


 と私は適当に流しておいた


  『それよか先輩こんなとこで何してるんですか?』


と魔王様が聞くと


 『なにしてるんですか?じゃないよ、君を探してたんじゃない』


と朝比奈先輩が頬を膨らませて言う


 あ〜かわいいな〜この人は、とついニコニコしてしまう


 『何をニコニコしてるんだよ。しかし君といるとこういう事多い気がするな〜』


と先輩がじ〜っとこっちを見てる


 『なぁんかあるのかな?一体なにが起こってるのかな〜』


と朝比奈先輩が魔王様を見つめてる


 あっやばっ、ちと使いすぎたか

 と思い私は目を逸らしてしまった


 『目をそらすあたり、何かやましい事があるのかな?フフ』


 意地悪な先輩が出てきてしまった

 私をいじめたい衝動に駆られてる目をしてる


そんな時だった


 『魔王さま〜忘れ物ですよ〜〜』


 ラトワネが私の忘れた鞄を持ってきてくれた


 『あ、あありがと、ござぃます』


 先輩の手前変な言い方になってしまった


 『はぃ、どうぞ魔王さま、また来てくださいね』


 そう言って手を振りながら店に戻っていった


 「へ〜素敵な人ですね〜マオウサマッテヨバレテルンデスカ』


 先輩が若干軽蔑した目でこちらを見ている


 『え?いやなんていうかその〜ですね〜』


 やば〜魔王さまってわざと呼ばせてるなんて思われたら

 ちょっと変な奴だと、変わったプレイが好きな奴だと勘違いされてしまう!


 『そんなご趣味があるとは知りませんでしたねー』

 『人が心配して探してる間になぁんか楽しそうで何よりですねー』


と朝比奈先輩がプイっとそっぽ向いて歩いていく


 『ああああ違うんですって〜』


慌てて追いかける魔王様

 

 『あら、いいんですよマオウサマ

 そちらのお店でごゆっくりなされてきて下さい』


そのまま早歩きで駅へと向かう朝比奈先輩を必死で追いかける魔王様


 『違うんですって〜〜〜〜』


 誤解を解くのに3日かかった。

 勇者朝陽へ、

 すまないね、恐らく先輩を怒らせたらマオウサマって言われる

 と思います


続く

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