電車は走るよ〜
『お兄ちゃん、起きて〜』
妹御が呼んでいる。
『ん〜あぁ〜。むぅぅ』
ベッドでなんとか起きようとしている朝陽こと、魔王様。
私低血圧なんだよ〜
朝は弱いのです
そう思いながらなんとか起きる努力をしていると
バンっっっ
勢いよく扉が開いて妹の月依が
『起きて〜〜〜〜〜』
心臓が飛び出るかと思った。
『ほら、早く起きてご飯食べないと。今日からお仕事行くんでしょ』
『あぃ』
目を擦りながら起きる魔王様
退院して朝陽の家に戻るないなや、急に時間と曜日にしばられる生活になった
この世界の人間というのは物凄くちみつなルールに基づいて生活しているようだ
この時間がこうだ、とか、この日だからこれがある、とかね
分かりやすく生活がしやすいのかもしれないけど、ちょっと窮屈だな〜
朝陽は月曜日から金曜日までは会社と言う所に行き、働くみたい
魔族も仕事はするが、皆が同じ時間に同じ場所に赴くと言う事はしない
なんか洗練された軍隊みたいなのだ
しかし、それがあるからこのような恐ろしい科学という文明が発達した
とでも言うのかな
『また〜遠く見てぼーっとしてる、ささっと食べてね』
妹御に怒られた。
『イタダキマス』
朝ご飯うまー
ほんとこの世界のご飯はうまいな〜
ずっと食べていたい
ご満悦で食べ終わり
出社する準備をする魔王様
昨日の夜から何度もイメージトレーニングしたおかげで
出社準備は完璧。
これから電車に乗るのだ!
これが一番楽しみなのだよ
朝陽は電車という物に乗り会社に行く
電車の乗り方は昨晩朝陽の知識と家にあった
電車の車窓から〜っていうDVDで見た
とても優雅な旅なのだ
素晴らしい発明だ!魔界に戻ったらぜひ取り入れてみたい
1個くれないかな〜
『いってらっしゃい。気をつけてね』
月依に見送られて家を出る。
駅までの道も何度も歩いた。
もう迷子にはならん!
駅が見えてくるにつれ人がどんどん増えていく
なんだ、人間が多いな
やはり電車という物は人気なんだな
まぁその気持ちはわかる
あれだけ素晴らしい箱が勝手に動いて
目的地に連れて行ってくれるのだ
感嘆しかないよな
ご機嫌で駅に入っていく魔王様なのだが
目に入る光景に驚く
『な……なんだ』
思わず絶句する。
人間が、人間がこんなにも駅に
こんなに多くの人間が電車を待っているの?
いやいや、ちょっと人気すぎない?
みんな同じのに乗るのか?
そんな人の多さの不思議に戸惑いながら電車を待つ魔王様
魔王様の電車の知識は、普通に 電車 と検索した知識であった
そう、朝のラッシュ、満員電車、というキーワードではないのだ
戸惑いながらも
電車キター
歓喜の声を心の中で叫ぶ魔王様
ドアが開いた瞬間
え?え?いっぱいだよ?
すでにいっぱいだけど?
え?乗るんですか?これに?
いや、え?あ?ちょ?ちょっと待って〜
流れに押されて電車に吸い込まれていく魔王様
ぎゃ〜〜〜つぶれる〜
ちょっと押すな!コラ!
もみくちゃにされる魔王様
なんか、なんか違うよこれ
私の知ってるやつとちが〜う
あ、足踏まれた!
私の足を踏むとはこやつ
場所が場所ならぶっ飛ばしてるとこだぞ
と睨む魔王様
思った以上の揺れに立った状態では踏ん張るのが精一杯
初めて乗る電車が満員電車となった魔王様
死ぬ〜〜助けてくれ〜〜〜〜
駅につき流れるまま下され
フラフラになりながら駅を歩く
な、なんだこれ。もしかして特訓なのか?
あれに耐えて何かを得るのか
スキルレベルが上がるのか
わ、わからん
素晴らしい科学が発達した文明なのに
なぜあのような事に耐えているのだ
修行じゃないとしたら説明がつかない事態だ
やはりこの世界の人間は侮れんな
勇者が生まれる訳だ
会社に着くと朝比奈先輩が待っていてくれた
『おはよう朝陽くん』
朝比奈先輩からの言葉に朝陽の体が高揚するのがわかる
私もこの人は好きだ
とても温かいのだ
朝陽の心に影響されていたとしても
この温かいのは別にいいのだ
『おはようございます、先輩』
と朝陽は挨拶するらしい。
私はもうちょっと軽い感じでいいと思うけどな〜
『久しぶりで戸惑うこともあるでしょうけど、のんびりいこ』
そう言って魔王様を連れてとある部屋に
コンコン
『入ります』
そう言ってドアの中に入る朝比奈先輩に続く魔王様
真似をして開いてるドアを叩いてみたらびっくりされたが
病み上がりという事にして納得してもらった
今のはダメなのね
一つ学んどこ
椅子に座るおっさんと何やら話をする朝比奈先輩
後ろで見てる魔王様
何やら偉そうだな
朝陽の記憶で検索してみると課長という生き物らしい
種族での地位の話になる、みたいだな
後ろで待てという話なのでそーっと見ていると
朝比奈先輩と課長という人間が揉めている様子に見えた
む?朝比奈先輩に対してあやつちょっと態度が悪くないか?
お互い熱くなっているな〜
私にはなんの話かわからんし見てるしかないが
ちょいちょいこっちを見てくる辺り
恐らく朝陽の、私の話をしてるっぽいな〜
多分何か気にかけてくれているのだろう
朝陽はほんとに幸せ者だと思う
この世界の人間はこういう感じなのかな
私が絶望した人族とは違うな
いや、朝陽はあちらの世界でも仲間がいた
共に私に挑んできた様子を見る限り
こちらと同じような生き方をしていたという事になるのかな
人間か……
嫌な記憶が、絶望した記憶を思い出してしまう
『それじゃ行こうか朝陽くん』
と朝比奈先輩に呼ばれてハッとする魔王様
『はっはぃ』
部屋を出る先輩について出る魔王様
聞けば朝陽の仕事の事だったらしい
まぁ難しい事はわからんが別部署に移動するらしく
先輩に下につき教えてもらえる事になったみたいだ
それはそれはとても良い事だ
ただそれについて色々と課長と言う人間から
文句というか嫌なことを言われたみたいな事を言ってた
なるほど、あの野郎は私が処す
そんなこんなで仕事場につく魔王様
たくさんの人から労いの言葉をもらい
いろんな人を紹介され、暖かく迎えられている様子がわかる
私が嫌っていた、戦っていた人族にも
こういう世界があったのだろうか
どこの世界にも嫌な奴はいるし
いい奴もいるのは分かる
それを他種族に当てはめるなんて
人と接しなければ、人にならなければ
思いもしない事だな
自分の中でいろんな誤解や認識が少しずつ変わっていっていく事に
困惑しつつも、困っている時に差し伸べされている手は種族には関係ないんだと
思い始める魔王様でした。
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