その頃ほんとの勇者朝陽は

場所は異世界、勇者朝陽の本体がいる所。

 

『きゃ〜これになに〜かっわいい〜〜』


巨乳僧侶事、ルアが動くクマのぬいぐるみ、

スライムがINしたぬいぐるみ事、クマイムを見つけて抱きしめる。直後


 『ぎゃ〜なにこれ〜こわい〜〜』


クマのぬいぐるみの中に入れたれたスライムが目鼻口から飛び出る。

強く押したらダメな子なんです。エクトプラズマのようである。

そんなルアを横目に


 『ちょっと朝陽、どういう事なの説明しなさいよ』


ツンデレ賢者、ライナが朝陽に詰めかかる。


ドワーフ族長の娘、鍛冶士ワグはまだ気絶中

筋肉ダルマ盾戦士グルガンは僧侶ルアに言われて逃げるクマイムを

追いかけている。


 『ん。あ〜実は……』


時間は少し遡り、魔王様が朝陽の目の前で消えた直後

パーティメンバーがまだ気を失っており、朝陽も茫然と立ち尽くしているときだった

女神アクアからの声がして


 『あ、朝陽、あのね、んと、ちょっとした手違いが起きてあなたの代わりに魔王ちゃんが

 こっちに来てしまいました。アハハ。でね、もう一度あなたをこちらに呼びたいのだけど

 必要なエネルギーが消費されてしまったのよ。ごめんねー』


 『それであなたには申し訳ないのだけど、新たな魔王が復活してくるので

 そいつを倒して地上界を救い、そして地上界に住む民から幸福のエネルギーを集めて

 あなたが帰ってくる為に必要なエネルギーを貯めてほしいの』


 『こちらの手違いで無理をいうようだけど、できれば事を急いで欲しい。なんせ魔王ちゃんの

 魂のいく先がないのであなたの世界であなたの体に入ってもらってるのよ。

 それじゃあなたも不安でしょ?あっちであなたの体が好きにされるのは冷や汗ものだと思うの。

 なので〜早く討伐しちゃった方がいいと思うのよね〜なにさせるか分からないわよ』


と女神アクアからの信じられない一言で青ざめる朝陽。


 『え ? え !? エェェェェェ〜 !!』


顎が外れそうになる朝陽。


 『なんてこった。想像するだけで恐ろしい。帰ってみたら逮捕されているとか前科者になってる

 とか、そんな事になってないだろうな?朝比奈先輩に嫌われていたらどうしよう……

 というか日本が俺によって征服されてるとかないよな??』


朝陽の頭の中で最悪しか浮かばない。


 『まずい、まずい、まずいまずい、早くなんとかしないとだ』

 『それで新しい魔王といか裏ボスみたいな奴はどこに?』 


焦る朝陽にアクアは


 『あなた達が今いてる魔王城から更に北の豪雪地帯、その森にダンジョンが

 設定されているわ。まだ目覚めたばかりなので動き始める事はなく力を貯めている

 状態に近いわね。その隙を狙っていくといいわ。』


 『さっきあなた達の王国には女神からの神託として、魔王が討伐されたが

 更なる魔王が目覚め、勇者朝陽はそのまま討伐に行ったと伝えておいたわ』


『それから民にも同じ話が伝わるように教会にも神託を告げ、広めるようにするから

 これでかなりのエネルギーを貯めれると思うわ』


そんなやりとりの詳細を賢者ライナに説明するといきなり


 『ふざけんな〜』


とライナに殴られた。HP少なかったら死んでた。


 『あんた、世界救ったら直後に即帰るつもりだったのか!!』

 『みんなに何も言わずに?ふざけんじゃないわよ!!』


ライナが怒ってる理由は朝陽に対してだった。

そう朝陽は魔王討伐後にその場で即転移させて欲しいと女神アクアに申し出ていた。

それは朝陽がこの異世界への思いが強くあり、魔王討伐後の世界を見ると帰りたくないと

いう思いが強くなる事が怖いという思いからだった。

しかしそれは朝陽の勝手な我が儘であり、仲間からしてみれば

さよならくらい言わせろよって事である。


 『ふっざけんじゃ……ないわよ』


語尾が小さくなり涙目になるライナ。


 『ご、ごめん。この世界が好きすぎて元の世界に帰りたくなくなるのが怖かったんだ』


朝陽の言葉直後に気まづい沈黙が続いた。


 『そこどけて〜〜〜〜』


僧侶のルアがクマイム追いかけて突っ込んできた。

ドジっ子設定が絵になる人物である。

朝陽とライナを巻き込んでクマイム向けたダイブしてくるドジっ子僧侶のルア。

寝ていた鍛冶士のワグが目を覚まして巻き込まれる。


 『ちょっと何すんのよ〜!気をつけてよね!!』


ライナがイラッとしてルアに当たるが


 『アハハ〜ごめんね〜ライアちゃん怖い顔しないの』


そういうルアの無邪気な笑顔に少し場が和む。

結局捕まったクマイムは今、巨乳僧侶の胸元に収まっている。

うらやま……いや、けしからん奴だ


同時刻、地上界、教会に女神の神託を告げようとアクアが準備を終わり

全ての教会への接続が終わり、神託を告げている最中の事だった。


 『私は女神アクアです。あなた方の勇者が魔王の討伐に成功しました。しかし

 魔界には更なる魔王が復活し、以前の魔王より凶悪で強力な力を持っている事が

 わかりました。』


そう、ここまでは順調。


 一度落胆させて、そこから勇者が討伐に向かったと言えば

 歓喜し賞賛され、民も一安心するだろう。その時に幸福なエネルギーが増幅されれば

 朝陽を早く元の世界に帰し、魔王ちゃんを呼び戻せる。よしこれで決まりね。


 その内容を告げようとした瞬間だった


『でもだいじょ……


 ん?あれ?神託放送が切れた?あれれ、おかしいな。


アクアが不思議に思い、マイクをポンポンしてる時だった


 『地上界に住む、虫けら共よ。我は魔王。地上、魔界、そろそろこんな呼び名を辞めようと思う

 全て魔界、そう呼べる世界を創るべく、今、この瞬間から行動に起こそうかと思う』


 『地上に住む者どもよ。安心してくれていい。私の部下達が君達を苦しむ事もなく

 その存在をなかった事にしてくれる。感謝してくれていい』


その瞬間だった。空が真っ赤になりあらゆる場所に魔物が出現し、更に凶暴化して暴れ回った。


 女神界モニタールームで絶句しているアクア。


 『どうなってるのこれ?誰、私の放送チャンネルを奪った魔王って。新しく目覚めさした魔王は

 知識は乏しく、こんな事はできないはずだわ。それにまだ目覚めて間もない状態で

 動く事もできないはずなのに……』


慌てて教会への再接続を開始しようとするも乗っ取られた放送権は戻ってこない。

朝陽にコンタクトをとるアクア。


 『ねぇ朝陽、聞こえる。今の話、そちらでも聞こえたかしら?』


僧侶ルアがアクアの神託を聞こうとお祈りをしてその話を聞いてる最中だった朝陽パーティ。

急にアクアからの声がパーティメンバーに聞こえてきたので驚いた。


 『今の魔王と名乗った人物を私は知らないわ。先ほど朝陽に説明した魔王とは別物よ』

 『どうなってるのか全くわからないの。そちらでの変化は何かないかしら?』


と言われても困る朝陽達。最初この魔王がアクアの言う魔王だと思っていた朝陽達であった。

そもそもアクアが地上界が今どうなっているのか検討もつかない状況。


 『其奴は恐らく、魔界の奥底に幽閉していた最悪の魔神でしょうね』


背後からの声に全員が思わず武器を構え振り向く。


 『誰だ!』


そう朝陽が剣を向けると、そいつはここにたどり着くまでに一度戦った

魔王親衛隊執事と名乗った悪魔だった。


 『お前は、確か一度……決着をつけにきたか?』


以前の戦闘では決着は付かず。と言うか相手に戦う意思がなかったのだ。

だがかなりの強者であると朝陽は感じていた為、記憶していたのだった。


 『馬鹿な事を。私は魔王様の執事だと言ったでしょう。戦闘要員ではないのですよ。そう言ったでしょう』


背中に羽を纏った黒い執事姿の悪魔がそういいながら笑う。


 『では何しにきた!』


朝陽がまくし立てる。

 

 『分からないのですか?馬鹿ですね〜。どう考えてもあなた方の不思議に思ってる事の答えを

 持ってるからわざわざ出てきたんでしょう。今魔王と名乗った人物について、ですよ』


全く〜と言う感じでため息ついて話悪魔。


 『其奴は大昔に魔界を我がものにしようとし当時の魔王様の部下や魔界に住む自分に

 従わない住人を虐殺し続けて、当時の魔王様率いる万の軍勢に取り押さえられ

 魔界の奥深くに幽閉されていた魔神だと思われます。

 私はその声を聞いた事がありますからね。どうやって脱獄したのかわかりませんが

 厄介な奴が出てきてしまったな、と言う感じですね。当時の魔王様達ですら捉える事しか

 できなかったと言われるほどの強者です。そして狂っているのかと思うくらいの残酷さを

 持ち合わせています。 地上界は今荒れていると思いますよ』


『さてどうしますか?勇者朝陽さん。こいつは今恐らくこの魔界にいるでしょうね。

 恐らくですが、今は女神の力で復活したと言う裏ボス設定の魔王を討伐するか配下にするか

 まぁそちらに向かっていると思いますよ。なんせ強いやつを許しませんからね』


頭の中がパニック状態の朝陽。自分と魔王が入れ替わっている所から

トントン拍子で最悪な状態が進展していき、何を最優先すべきなのかが

分からなくなっている。

 

 『それよりも私が敬愛する魔王様は一体どこに?消える瞬間は見たのですが

 どこへ飛ばされてしまいましたか?魔界に気配が感じられませんが?』


悪魔が魔王様の心配していたので朝陽が詳細を話す。

敵対していた魔族との話し合いが続いている事に違和感がありまくりな朝陽。


 『なるほど〜これは大変な事になりましたね。馬鹿女神のせいで余計な心配の種が

 増えてしまったと言うわけですか』


しばらく考え込む悪魔。

朝陽達も地上界の心配と魔王討伐、魔王を名乗る魔神と言われる人物の討伐。

朝陽に至っては自分の体が魔王様に乗っ取られている事実。

今この状況を打開する案が出てこない。そもそも話がこじれ過ぎている。


全員が、う〜んと唸っている。


そこで鍛冶士のワグが


 『地上界を信じましょう。私の父率いるドワーフ族が簡単にやられるはずがありません。

 王国騎士団も健在のはずです。恐らく同盟が結ばれエルフも巻き込み活性化していると

 思われる魔神の手下達を必ず撃退してくれるはずです!』


力強く発せられた言葉に朝陽の意思は決まった。

そしてそれを聞いていた悪魔も。


 『いいでしょう。勇者よ。私たちも手を貸しましょう。どうせ彼奴(あやつ)は我々にも攻撃を

 してくるでしょうし。私の敬愛する魔王様にも早くご帰還頂きたいですし、その為にも

 彼奴は邪魔な存在とも言えますし、現魔界の戦力+それを退けたあなた方勇者パーティの力と

 協同すべきだと思われます。彼奴の行き先はわかっています。同行して頂きましょう』


まさか悪魔からその提案が出るとは思ってなかったが、同じ結論に達していた

朝陽にとっては話が早い。断る理由もない。


相手は復活したと言われる魔王、そして世界の魔界化を狙う魔神。

その為に魔王軍との協同。おかしな事になってるが、心強い味方が増えた事に

違いはない。パーティーメンバーも依存はなさそうだ。


女神界モニタールームで見守るアクア。


 『完全にかやの外になってしまったわ。ごめんね朝陽。世界をお願いね』

 『私にもできる限りのサポートさせてもらうから、無事でいてね』


魔神が復活した訳、魔王が女神の力によって目覚めさせられた事

そんな話は初耳だった。朝陽の中に不安材料が多くなっていく。

何よりも心配なのは現世の自分の体が魔王によって支配されている事である。

事件だけは起こしてくれるなよ〜頼むからね。

心の中でそう呟きながら魔王城を後にする

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