最大の勇気
病院のベットで上半身を起こして、妹、月依(つきよ)の頭を
ナデナデしている魔王様。朝陽こと、魔王様の太ももあたりの
布団の上に顔を埋めたままの月依。
泣き疲れたのだろうか、眠ってしまったようだ。
妹か〜いいもんだな〜
少し前まで魔界でゴロツキばかり相手していたので
まったりした空気が久しぶりだからなのか
朝陽の意識下に影響されてしまったのだろうか
そんな事を考えながらも、どっちでもいいか〜と
まったりした空気を味わってニヤニヤしていた時だった
またしても部屋のドアが、
バンっ!!!
っと開き、物凄い勢いで女の人が入って来た。
だれだ?と思い朝陽の意識から該当する人物を検索していると
母親である事がわかった。
妹の次は母上か。
勇者朝陽め、愛されてるの〜
そんな事を思いながら
満面の笑みで
『母上、しん……
と言った瞬間だった
バチンっ!!
『心配させて、この子は!』
ぶはっ
思いっきり頬をビンタされ
意識が遠くなって一瞬神様が見えたので
軽く挨拶してしまった。
『な……何するんですかー!母上』
戻って来た魔王様の魂。
命の危険から思わず叫んでしまった。
『は、母上?あんた頭打っておかしくなったの?』
キョトンとしていた母だが
『でも生きていてくれてよかったぁ〜』
と泣き出す。
そんな姿を見ては何も言えなくなってしまった魔王様。
妹や母を見てると、家族の事を心配するのは
人でも魔族でも同じなんだと改めて思い知ってしまう。
当たり前だが、戦闘の背景にはそういう事がお互い
付きまとう。わかっていた事だが事実を認識してしまう。
泣き止んだ母が
『朝陽の事でお父さんを思い出してしまって
あなたも、もしかしたら……って嫌な考えが
頭の中を駆け回って、すごく怖かったのよ』
父上、と聞いて朝陽の意識から父親を検索する魔王様。
ん?真っ黒なモヤが掛かっている。
これは怒りなのか?
父親像が見えなかったのだが
母親が、意識がなかった時の話や
これからの話を色々説明してくれていたので
そういう話から母親の愛情を感じ
暖かい気持ちなっていた為
さほど気にならなくなっていた。
母親と妹の月依が一旦帰った。
久しぶりに暖かい空気に触れて
悪くないもんだな〜と思いながら、人族に対する
いろんな気持ちと相まって何かと考えさせらていた魔王様。
数時間後、軽く水分を接種できるようになり
補助と杖ありだと、立ち上がれるように回復していた
勇者朝陽の体。
一息ついて窓の外を眺め
平和で綺麗な所だな〜と遠い目をして
ここに来て今まで以上に思い悩む魔王様。
この体である最大の壁にぶつかっていたのだった。
ずっと我慢していたのだが、そろそろ限界が来ており
それについて様々が思考が頭の中を駆け巡り
覚悟を決めなければいけないのだが
どうしても、どうしてもいまいち踏ん切りがつかない。
『過去最大の勇気が必要になる時が今だというのか!』
ボソッと心の声が漏れている魔王様
布団をグッと掴み、歯を食いしばり
クソっぼやき、冷や汗を流し、これ以上の苦悩はない
そういった表情であった。
最大の難関というのは
そう……トイレの問題だった。
いや、自分で行けるのだトイレくらいなら。
なんといっても、この体。勇者朝陽の体は男である。
わ〜わ〜なんとかならんのか〜これは〜〜
私は、私は
と泣きそうになるも
もうどうにもならない問題で
これからそれと戦わなくてもいけないと
最大の勇気を振り絞っている最中だったが
もう漏れそうなのである。
『クソっ勇者朝陽め!覚えていろ!』
覚悟を決め、涙を流しながらトイレに向かう魔王様。
シクシクシクシク
泣いてる間についてしまった、トイレ。
入り口に立ち、覚悟を決め
『やってやるさ!これくらい!!』
そう叫びながら男性用トイレに入っていく魔王様
事がすみ手を洗いながらシクシク泣いてる。
うぅ〜これ慣れるんですか?
こういうリアルなのなしにならないんですか〜〜〜
早く自分の体に帰りたいよ〜〜
涙を流しながら顔を赤らめなんとも言えない気持ちのまま
自室へとトボトボ歩いて帰る魔王様。
後にこの日の事を魔王様はこう語る。
どうやって自分の部屋に帰ったか覚えてはいない
という事だそうです。
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