プロローグ⑥
女神モニタールーム
モニター画面を見つめ呆然立ち尽くす女神アクアマリン
『え〜〜っと。ど……どうしよ〜〜』
一瞬パニックになり思考が停止する
『お、落ち着いて私』
いけない、と思いパニックになりそうになった自分を
無理矢理落ち着かせにかかる
しばらくうつむいて、これからを考える
とりあえず揉み消せ
心の声が聞こえた
『よしっ
まずは魔王の確認をしないと
もしかしたら間違いかもしれない』
そう自分に言い聞かせたアクアは
[転生者の間]
に向かう
少し早歩きになったが
ここで周りに異常を知らせる訳にはいかない
走り出しそうな足をグッとこらえて、落ち着きを装う
転生の間の扉前に立つアクア
ゴクッと息を飲む。モニタから見た魔王様は首がなかった
もしかしたら転生の間が血だらけの大惨事になってるかもしれない
そう思うと異次元であるとはいえ、片付けが大変だ
一瞬ゾッとするも、モニタで見た時は一瞬立ち上がった姿があった
『うん。大丈夫、きっと何かの見間違いよ
間違って魔王を転生してしまったなんて
きっと間違いよね』
目をつぶり、胸に手をおいて深呼吸をし、思い切って扉を開ける
『えぃっ!』
扉を開けると次元が歪み、アクアだけの転生の間に繋がる
何もない空間のはずなのに木漏れ日のような
暖かい光がさす転生の間に
首のないごっつい鎧を着た魔王様が転がってる
ショックで声も出ないアクア
ピクっと鎧が動き上体を起こし、座る首なし鎧の魔王様
『もしも〜し
生きておられます?』
とマリンが恐る恐る尋ねてみると
『なになに目の前が真っ暗!?』
鎧が怒声を上げてきた。
『うわっ生きてる
首ないのにしゃべってる〜〜』
アクアがドン引きしている
『んしょ』
スポッと鎧から首を出し周りを見渡す魔王様
『ん、ここは……、転生の間?なのか?』
見た事あるかのごとくに呟く魔王様。
『あ生きてた?
そうよここは転生の間なんだけど〜
なんで知ってるの?
異世界から来た転生者が
一旦ここで私達女神からチュートリアルを聞いて
チート盛られるとこよ』
とアクアが魔王様が知ってる事に違和感を覚えつつも説明した
『ふんっ。異世界から来た?無理矢理連れてきたんでしょ……』
『まぁそんな事よりもこの状況はどうゆう事?』
魔王様がアクアに説明を求める
『いや〜それが
あははは、なんというかね
まだすぐには戻れないというか』
申し訳なさそうに苦笑いをしつつ頭をポリポリとかく女神アクア
『へ?何を言ってる?戻すくらいのパワーは残ってない?』
不思議そうにアクアに問いかける。
『えーっと
ないんです
転生に使うパワーの源は全部つかっちゃっいまして
えへへ』
愛想笑いの女神様
『勇者朝陽が集めたみんなから少しずつ頂いた幸せの力
それを源にして
あの子へ還元しているんだけど
魔王ちゃんと戦う前に
ガッツリ使って回復したの
転生する分だけを残してたんだけど
それをあなたに使ってしまったので
帰る力が残っていません。ごめんね〜アハハハハ』
そういうアクアを
心底呆れた目で見る魔王様
言葉にならず、しばらく無言が続く
魔王様は考える
普通なら転生してもパワーが残っているもんなのだが
この女神は何故使い切ってる?
失敗する、という事は想定してないとしても
パワー自体がなくなる事なんて無理矢理使わないと
そうはならないはず……なんだが
アクアをじっと見つめる魔王様
魔王様をじっとみる女神アクア
んとね
とアクアが話始める
『とりあえずなんだけど、朝陽には真の魔王を倒す旅に出てもらおうと思う
それでパワーを溜めてもらう
そしたらあなたと入れ替える事が可能だわ』
とアクアが言った事に驚愕の顔をする魔王様。
『ちょっと今なんとおっしゃいましたか?真の魔王って?
いやいや何を言ってるのかな〜?
魔王様は私なんですけどぉ?そんな真のとか裏のとか
何その裏のボスがいました的設定は?』
そうは言ったものの
女神達は何でもする事をよく知っている
『いるわよ真の魔王とか、裏ボスとか。結構いるのよ』
とアクアが言う。
『やめて〜マジでやめてよ〜
どうせ私より強いとか言うんでしょ』
ふてくされる魔王様
『当然そうなりますよね
まぁほらそうでないと、ね』
ちょっと嬉しそうなアクアがそう言う。
残酷な事実だわ
よくある設定とはいえ、魔王として君臨してきたはずが
もっと強いのいますよ?
なんて簡単に言われてしまった各魔王達はこんなにも
ショックなのかしら
井の中の蛙状態なのね
ぶつぶつと文句をいう魔王様
『でもまぁあなたがいなくならない限りは出てこない物なのよ
真のなんとかってのは』
とアクアが言うと
『出てくるとかこないとではなく
お前らがそうするんだろ』
ふてくされている魔王様
やたら物分かりがいい魔王に
疑問を持つアクア
『あなたなんでそんなに詳しいの?
あなたの姿って魔界の住人にしては
こうなんて言うか異質よね?
こっち側に詳しいのもおかしいし
あなた何者なの?』
そう言うアクアに魔王様は
『元……女神』
しょぼくれた感じで答える魔王様
その返答に驚きを隠せないアクア
どういう事かしら
堕ちた女神の話は聞いた事がない
アクアも魔王様をお互いがブツブツ言って自分の世界に入っている。
『私はずっとここで待ってるのか?』
と不意に我に返った魔王様がアクアに問う
『え?えぇ。あ、いや、違っ
あ、あのねここに長くはいられないのよ』
とアクアが答えさらに
『ぅ、うんとね
朝陽が新たに出現した魔王を倒すのにどれくらい時間がかかるか
分からないじゃない?
その間、ずっとここにいたら
この何もない空間でいつになるか分からない時間を
過ごしたらおかしくなってしまうわ』
とアクアが言う。
『まぁそうだよね
で、私はどうするの?』
と魔王様
『あなたにはね、
異世界、人界へ行ってもらうわ!』
満面の笑みで答えるアクア
目が点になる魔王様
『いやいやダメだろ?』
と手を両方に振りながら
それはナイナイって感じの魔王様
だがアクアはこう言った。
『違うわよ。あなたには本来朝陽が戻るはずだった場所へいってもらうわ
そこでしばらく過ごしていてほしいのよ。それで色々辻褄も合わせられるし』
とアクアがもみ消し作戦の全貌を語り始める
『すまん、人間界なんて無理すぎる
ほんとに無理』
絶望する魔王様
『そんな事言わないで、ね?お願い
色々いい事もあるって
たぶん
それに
あなたも異世界で暮らしていけば朝陽と相待って
パワーの溜まりが早くなるわ
そうなると早く帰れるし』
とアクアが下手に出る喋り方で魔王様を説得にかかる
うぅ……と項垂れる魔王様
『本当に?早く帰れるんだよね?信じるからな!』
アクアに詰めかかる、魔王様
『もっもちろんよ
女神が嘘言わないわ!』
いまいち信用に欠けるアクアが自信満々に言ってる姿を見て
どうしようもなく不安な魔王様だが
もうその流れからどうしようもなさそうなので
仕方なく受け入れる事にした
『物わかりが良くて助かるわ〜さっすが魔王様ね
では、ここは転生の間なのです。と言う事であなたが行く世界についての
説明を致しますね。
それとあなたにも、もちろんスキルの授与をするわね』
アクアは今から行く日本と言う世界の説明をする。
魔力がないので大規模な魔法は発動しない事や
モンスターや魔人、ましてや勇者なんて存在しない。
王がいて姫がいる世界ではない、争い事は多々あるが
人を傷つけると罰せられるから、そうなると帰りが遅くなる事などなど。
『それじゃ、あなたにスキルを授けます。
定番ですが、言語理解、そして常識程度の知識と理解。
魔王であったときの威圧が縮小されるけど使えるようにしておくわ。
魔法は使えないけど、身体能力は使用する体の全開まで使えるように。
そして後は運を+10』
以上!えっへんと言う感じのアクア
もうどうにでもなればいいと思う魔王様。
『なによ、運が+10って。数値で見えないやつじゃない』
そう魔王様が言うと
『あら、そうでもないわよ〜意外と運がよかったら〜なんて事あるでしょ?
そう言う機会が増えるってことよ』
いいのか悪いのか分からない説明ではあったが
とても嬉しそうなアクアを見て
魔王様も、まぁいいかと少し笑みが溢れる。
『それじゃがんばってね〜行ってらっしゃい』
と言うアクア
ため息で返す魔王様
『なるべく早く戻してよ』
と魔王様が言う。
『朝陽次第だけど、あの子にも自分の体が心配なら早くしてねって言っておくわ』
とマリンが言う。
『心配?体といえば、私の体はどうなってるの?』
魔王様が首を傾げて尋ねる
『あなたの体は私の方で預かるわ
そこは心配しないで
悪いようにはしないから』
とアクアが言うと
『じゃ私は異世界で入る体で過ごすって事で間違いないんだよね』
と魔王様が転生とはそう言う物だと分かっているが、念のため確認する。
『そうよ。勇者朝陽の体を好きに使っていいわよ〜』
とマリンが嬉しそうに言う。
『はっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ????朝陽のって勇者のやん?ど、どうするのよ、それ』
魔王様が言うと
『あっそろそろ時間ね。スキル授与からあんまり時間ないのよね
どうもしないで適当に過ごしてたらいいわ。しっかり働いて遊んでたら
あっという間に時間なんて過ぎてるわよ。あっちとこっちじゃ時間軸も違うから
そんなに長く感じないはずよ
それじゃばいば〜〜〜い』
とアクア
魔王様が何か言いかけたが
光の中に消えていき、その声もかき消されてしまった。
見送ったアクアがホッとする
人界へ旅立った魔王様はこれからどうなるの?
続く
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