プロローグ⑤

 すやすや眠る女神様


 魔王様と勇者の戦いはもうすぐ2時間になろうかとしている。

回復薬を入れながら、ドーピングありの戦闘となれば

戦闘時間が長くなるのも仕方のない事だろう


お互い肩で息をしつつ、アイテムも底をつき、そろそろ限界が近い


魔王様の顔にも疲労の色が見える。

それを感じ取ったかのように、朝陽が最後の力を振り絞り


『うぉぉぉぉぉ!!!必殺100連突き!』


腰を低くし、剣先を魔王様に向け、照準を合わせたかのように

飛び出していく朝陽


もはや魔力も何もおびてない、ただの力任せの突きの連続である。

体力の限界を超えた連続攻撃は、もはや回数など数えておらず

100回は適当な回数


高台にある自分の玉座まで

吹っ飛ばされ、玉座を弾き飛ばし、そこに倒れる


 朝陽はもはや限界を超えていた。

階段の上はここからは見えない。上まで確認に行きたいが

足がフラフラで一歩も出ない状態だった。

仲間達もすでに倒れて動けない。


『やったか

 こんだけ派手にぶっ飛ばしたんだ、もう立てないだろう』


朝陽も限界が近く

もう立ってくるなという

気持ちが口から出ていた


『う〜ん

痛いよ〜

ちょっとまじで痛いんだけど』


うつ伏せに倒れたまま、唸るような声で呟く魔王様


『よ……鎧が重い。これを脱げばまだ動ける

立ち上がって一撃、あのバカ勇者にもう一撃を

私が勝ってからが話なんだから

そこからでないと意味が…』


鎧をなんとかしようともがくが、力が入らずなかなか脱げない。


『よ……よろぃを。はぁはぁ……

なんでこれ着たんだよ!もぅ』


見た目装備がここに来て裏目に出てしまう魔王様


ゆっくり体を起こし、鎧を脱ごうとする。

顔の辺りまで鎧が来たところで、胸がつかえてしまった魔王様

体をうまく動かせず膝をついた状態でなんとか脱ごうとするも

水泳後の水着くらいに脱げない

バタバタして頭を振っていたら、鎧の重さが体の軸をずらし

体制が崩れる


『あっ……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』


ふらついた時に膝をついていた足の踏ん張りがきかず

長い階段を転げ落ちる魔王様。


階段の下で動けずにいた朝陽の元に

叫び声が聞こえ、何かが転がってくる。


『な? ななな?何何何』


焦る朝陽

顔がない魔王様が階段を転がってくる

驚きのあまり身動きすらとれない朝陽


鎧の中に顔が入ったまま階段を転げ落ちた魔王様は

朝陽の足元に突き刺していた剣の位置で止まり

目が回ってキューと鳴いている

朝陽は何が起こったのか分からず

立ち尽くしたままだが

その姿は激しい戦闘後に勝利した姿にも見えた


女神モニタールームでアクアは寝てしまっている。

すっかり夢の中にアクアの後ろをアメジスト事

アメちゃんが書類を山のように

運びながら通り過ぎようとした時

アクアのイビキに気がつき


『アクアちゃん、寝てていいの?起きなきゃダメよ。ほら起きて〜』


と声をかける。

その声に反応して


『う〜ん

大丈夫起きてるよ〜』


と明らかに寝起きの声で反応する。

しかしその瞬間モニターを見て絶句する。


『あっ

終わってるじゃん

朝陽やったのね』


ちょうど魔王様が転げ落ちた直後の映像だった。

魔王様の顔が鎧の中で、マリンからは見えない為

首を飛ばされ、床に刺さってる朝陽の剣が

魔王様を突き刺しているかのように見えた。


 アクアは約束通り

朝陽の足元に転移の魔法陣を発動させる


朝陽は魔王様がどうなったのかも分からずだったが

急に足元が光り、その光が自分を包んでいき

更に訳がわからなくなり焦る


『え?今度はなんだ?体が光に…魔法陣?』


朝陽の体が光に包まれようとしたその瞬間だった


ガバッと起き上がる魔王様

が、鎧で前が見えず、重さでふらつき


朝陽の方に倒れ込み


 朝陽を突き飛ばす


その瞬間、魔法陣が煌めき

光の中に消えていく魔王様


続く


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