第21話

「人は自分が正しいと思えば思うほど辛くなる」21


 病室に入るとトラジが恥ずかしそうに笑っていた。


 私はトラジのベッドに座り俯いた。


 事情を聞いて理解できるようなでも何も相談無しに決めるのがムカつく、でもでも私達は正式に付き合ってる訳でも無く互いに干渉しない関係であってトラジの行動は私には関係なくて

、でも凄く心配で連絡が無いのも凄く不安でさみしくて恋しくてマミのいる安心感とは違う種類の安心感であってトラジが必要だけど求めちゃいけなくて、でもトラジじゃないとダメで……これを伝えたら壊れそうで恐い。


 隣ではにかみ俯いているトラジは今までと違くて優しい表情をしている。大きな荷物を降ろしているような張り詰めたような顔つきでは無くなっている。


「勝手にさぁ」

トラジは私の手を握りながら言った。

「まともにお天道様の下で働いてよぉ晩飯までに帰ってマミとお前と三人で暮らしてる想像してよ。そしたら俺は変われるのかなって思ってよ」

私は溢れる涙を空いてる手で拭った。

「相談したりするのが下手クソで、甘えるのが苦手でよぉ…勝手に思って勝手に行動して…この様だよ」

トラジは頭を下げている。

「三人で暮らそうとしてたの?」

「おう…でも、俺にはそんな資格無いし自信もない」

「資格も自信もいらない」

「俺は馬鹿だしな」

「知ってるよ」

「おい!」

「トラジは馬鹿だしなんの仕事してるか知らないしセックスだけの相手だしでも私は貴方としかセックスしたくないし貴方とじゃないとマミを育てられないよ」

私はトラジに抱き付いた。

「痛い痛い!」

「我慢しなよ!」

「少し力を弱めろ!」

「今くらい我慢してよ!」

トラジは痛いのを我慢して私を抱き締めてくれた。


 誰にも期待しない

 誰にも期待されない


 誰にも頼らない

 自分だけを信じてきていたつもりだけど

 それは私だけじゃ無かった


 自分が正しいと思って視野を狭めていた。他人を決めつけて他人の失敗を横目で見ていた。信じていると思っていた自分に本当は自信が無かったのかも知れない。本当は誰かを頼りたいし甘えたい。


 それがトラジだった。

 トラジも甘えるのが下手クソで自分しか頼れなかったのかも知れない。


 でも、これからは三人で暮らそうと思う。

 トラジを信じて私を信じてもらってマミを誇れる人に育てよう。


「愛してる?」

「愛ってなんだ?」

「解んないけど言ってみた」

「探せばいいさ」

「そうだね」


 2カ月後ー。

 汚れた作業着を着たトラジとマミと私の三人でスーパーで買い物をしている。


 今日はカレーを作る。


おわり

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人は自分が正しいと思えば思うほど辛くなる 門前払 勝無 @kaburemono

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