第12話
「人は自分が正しいと思えば思うほど辛くなる」12
深夜二時ー。
トラジの携帯が鳴って私は目を覚ました。
この日も川の字で寝ていた。
「はい…はい……解りました。直ぐに行きますね。一時間貰っていいですか?」
トラジは隣のマミを起こさないようにベッドから出た。
「行くの?」
「あぁ」
「帰ってくる?」
トラジはマミの寝顔を見ている。
「約束は出来ない」
「今日は私がご飯作って待ってるね」
「二人分にしておけ」
「三人分作っておく」
トラジは私にキスをした。
何かを断ち切るように立ち上がり足早に部屋から出て行ったー。
一週間後。
私はマミを連れながら仕事をしている。お得意さんはマミのことを可愛がってくれて頑張れよと声をかけてくれた。マミも明るくなって自分から挨拶したり人懐っこくなっている。
あれからトラジは来ていないし連絡も無い。
山田店長から連絡が来た。
「鏡ちゃん今からマミちゃん連れてこれるかい?」
「ちょうど伺おうと思ってました。新しい広告もお持ちしますね」
「ありがとう」
私はマミと山田店長の店に向かった。
それは突然であったー。
山田店長の店に行くと黒塗りの車が2台停まっていて恐い人達が三人いた。
恐る恐る店内に入るとボロボロの女とボロボロの若い男が転がっていた。周りには多田野組の若頭と金井組の若頭と山田店長とトラジがいた。
「トラジ…」
「奈美恵…この女がマミちゃんの母親だよ。この男と共謀して面接詐欺を繰り返してたんだよ」
トラジが転がっている男女を跨いで近付いてきた。
「トラジ。お前の女か?」
多田野組の若頭が言った。
「はい!子供の面倒見てもらってました」
トラジはマミの頭を撫でている。
「おい!」
金井組の若頭がボロボロの女を蹴った。
「テメェのガキ置いて逃げたんだってなぁ!テメェ殺すぞコラァ!」
もう一回蹴った。
「まぁまぁ山本の兄弟落ち着けや」
多田野組の若頭が山本を止めた。
私は恐くてマミを抱き締めながら蹲った。マミは冷たい目線をボロボロの母親に向けている。
トラジも覚めた目で見ている。私は全身が震えている。
山本が私を見た。
「姉さんよ。ありがとうな!子供預かってくれてよ。俺にもチビが三人居るからよ。子供をこんな扱いするヤツが許せねぇんだよ」
山本がマミの前に座った。
「アンタ、この子をどうしたい?母親の元に返すか施設に入れるか……アンタが育てるか……決めて良いぜ」
「え?」
マミが私に抱き付いた。
私もマミを抱き締めた。
それをマミの母親が腫れた目で見ている。
「決まりだな!子供は正直だな!」
山本はマミの頭に軽く手を置いた。
「川口の兄弟!俺が決めて良いか?」
多田野組の若頭の川口は何も言わずに頷いた。
「男の方はどうでもいいや、女はよぉ俺の嫁のスナックで預かるわ!子供はこの姉さんが面倒見るからよ!それで良いか?」
「それで良いぜ」
「んでよ!このクソガキ共にはとことん働いてもらうからよ…なぁ兄弟!」
「そうだな、まずは仲間をゲロってもらわないとなぁ」
山本と川口はボロボロの男を立たして外に行かせた。
マミの母親はトラジが立たした。母親はマミを見ることもせずに外へ出て行った。
「あの女…マミを見なかった」
トラジが呟いた。
私はマミを強く抱き締めた。
つづく
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