第11話

「人は自分が正しいと思えば思うほど辛くなる」11


 トラジが朝御飯を作っている間、私とマミはお出かけの準備をしている。

「出来たよぉ」

トラジがお皿を三つ用意して一人暮らしの小さなテーブルに所狭しと並べた。

 ワンプレートの朝食はポーチドエッグとサラダとトーストが並んでいた。

「凄いな!」

「可愛い!」

私とマミはビックリしながらトラジを見た。

 トラジはドヤ顔である。

「ディズニーランドってどこにあるの?」

トラジが聞いてきた。

「千葉だよ」

「東京ディズニーランドなのに?」

「東京寄りディズニーランドって事ね」

「なるほどな!マミちゃん今日はたくさん遊ぼうな!」

「うん!」

なんだか家族みたいだと思った。

 三人で朝食を食べてからディズニーランドに行くなんてー。

 小学生以来ディズニーランドになんて行っていない。

 なんの繋がりも無い三人が親子みたいにご飯を食べてディズニーランドに行こうとしている。

 普通の線路に乗った私と狭間に生きてるトラジと絶望的なマミでおままごとでもしているようである。


 でも嬉しいなぁー。


「なんか言ったか?」

運転しながらトラジが聞いてきた。

 心の声が漏れていたみたいだった。

「何でも無い…」

後部座席には外を眺めるマミがいる。


 平日のディズニーランドはめちゃくちゃ空いていた。


「こりゃいいね!マミちゃん!いっぱい遊べるぞ」

トラジはマミを肩車してはしゃいでいる。

「そんなはしゃいだら危ないよ」

私は二人の後をついて回った。

 トラジって人はこんなに子供とはしゃぐ人だったんだ。私の知ってるトラジはクールで物静かで何処となく危険なオーラを纏った人で子供とはしゃぐ要素は一つも無いと思っていた。料理も上手で子供も大事にしてくれるなんてー。

 マミはトラジとはしゃぎすぎてベンチで寝てしまった。私の膝で寝ていて、トラジが上着をかけてくれた。

「意外だなぁ」

「何が?」

「トラジの印象が変わったよ」

トラジは一瞬冷たい目線を私に向けた。背筋がゾクッとした。

「惚れるなよ…」

「え?」

「そういう仲にはなれないからな…」

「どういう事?」

「俺と一緒になっても幸せにはなれないって事だよ」

「……」

私は少しだけトラジの闇が見えた気がした。

 トラジは遠くを見てからまた私に振り向いて優しく微笑んだ。


「何となくだけどな…半グレが絡んでそうだな、奴等はヤクザを怖がらないからね。違法な所から金を巻き上げてるんじゃ無いかな…どうでもいい女を集めてさぁ」

いきなり会話を変えてきた。

 今はそういう話はしたくないなぁー。

「そうなんだ…」

「明日から調べてみるわ」

「ありがと…」

せっかくの楽しい時間なのに現実を突きつけるような事言わないで欲しかった。


 マミが起きるのを二人で待って可愛いレストランでご飯を食べて午後も思い切り遊んだ。乗り物やアトラクションを片っ端から三人で乗っていった。

 気付くと暗くなっていてエレクトリックパレードを見ながら花火も見た。

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