第10話

「人は自分が正しいと思えば思うほど辛くなる」10


 面接を受けるだけで謝礼が出るのを利用して店からお金を貰って稼ぎを作っている人は前々から居たのだが今回は組織ぐるみの可能性があるという。多田野組と金井組と言うのは風俗店や飲み屋のバックに付いている組でいざこざが起きない限り動かない組織である。しかし、今回は動き出している。トラジは厄介な事や民事的な事を生業にしているグレーゾーンの人間である。組からトラジに頼むと言うことはヤクザ絡みではないのかもしれないと思った。


 何故かトラジがマミを寝かしつけている。


「この子は何歳?」

「5歳」

「そっかぁ」

トラジは煙草を吸い始めた。

「なんで?」

「いや、何でも無い」

「お酒飲む?」

「いや、今日は帰るわ」

「もう電車ないよ」

「車だよ」

「え?車持ってるの?」

「持ってるよ。知らなかったっけ?」

「知らなかった」

「鏡とはセックスしかしてないもんな」

「そうだね。そういえば私の下の名前も知らないでしょ?」

「あ!確かにな…圭子だっけ?」

「奈美恵だよ!」

「そっか!じゃあな奈美恵!」

トラジは玄関へ立った。

 なんだかトラジはセクシーなんだよな、この雰囲気が私を色気付けさせる。

「車見せてよ」

「良いよ」

私はトラジと近所のコインパーキングへ向かった。

「大きいね」

「ランクルって言うんだってさ」

「自分のでしょ?」

「そうだよ。多田野組の組長からもらったんだよ」

「凄いね!」

そんな会話をしながら私はトラジに近づいてキスをせがんだ。

 トラジも私を求めて抱き締めてきた。


 結局ー。

 トラジは泊まった。

 ベッドでマミを挟んで川の字で寝たー。


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る