第7話

「人は自分が正しいと思えば思うほど辛くなる」7


 マミには私の自慢のロックバンドティーシャツを着させて短パンをはかせて細いベルトでウェストを絞った。髪はポニーテールにして少しアップにさせた。左手にはシュシュを付けてロックテイストに仕上げた。

 マミは自分の姿を鏡に映してニコニコしている。

「よし!可愛いよ」

「ありがと」

私はマミの頭を撫でた。

 恐らくマミ本人よりも私の方が浮かれていると思った。小さな子供を連れて買い物に行くなんて初めてで楽しくなったのである。駅前にあるユニクロに行くつもりだったが原宿まで行くことにした。

 私はロックファッションが好きで原宿にある靴屋さんまで行くことにしたのだ。マミの靴を買うついでに自分も欲しくなってしまったのである。

「帽子も欲しいな~」

マミはきょとんと私を見上げている。

 二人で空いてる電車の長椅子に座り肩を寄せ合っている。


 原宿に付いて竹下通りを過ぎて明治通りから少しは行ったところに靴屋はある。高校生の頃に本屋でバイトして初めて買った靴もここであった。初めてのお給料日もここで靴を買った。その靴は今も足元にある。

「いらっしゃい」

パンクな女性店長が優しく声をかけてきた。

「子供用の靴なんてありますか?」

「ありますよぉ」

そう言って店の中へ案内してくれた。

 マミは初めて見る全てを目を丸くさせてみている。

 ベロアの丸椅子にマミを座らせて子供用のブーツや革靴を試着させた。

「どれがいい?」

私が聞くとマミはくるぶしまでの黄色いブーツと赤い革靴を見つめていた。

「この二つで悩んでるの?」

「うん」

「よし!二つ買っちゃおう!」

店長さんが拍手している。

「ママ格好いい!」

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

私は両手を広げてまぁまぁとドヤ顔してみせた。マミも口を押さえて笑っている。

 私もマミと同じタイプの黄色いブーツを買った。

「黄色いブーツなんて初めて買った!」

私とマミは早速黄色いブーツをお揃いで履いてマミの履いていた靴は靴屋さんに処分してもらうことにした。


 いらない過去はここに置いていこう。私を前向きにしてくれるこの靴屋さんにマミも前向きにしてもらうためにー。


 私はパンクな女性店長さんに頭を下げてマミと手を繋いでお揃いの黄色いブーツで歩き出した。


 せめて三日でもこの子の母親になろうと思った。

 この子の人生で素敵な三日にしてあげたいと思った。

 この子の行く末に何が待ち受けてるか解らないけど三日は幸せにしてあげる。


 私達はパンケーキの行列に並んだり、大好きな帽子屋でマミに帽子を買ってあげたり私のもだけど、クレープ食べたりした。

 夕方の電車の中でマミは私の膝の上で寝ている。

 私はマミの頭を撫でながら涙を拭っている。


つづく

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