第4話

「人は自分が正しいと思えば思うほど辛くなる」4


 新しいチケットのデザインが仕上がったから人妻系のヘルス店へ出向いた。


 太った山田店長が店の前で煙草を吸っていた。

「こんにちわ!」

「おお、鏡ちゃん!ちとさぁ」

山田店長が煙草をポイ捨てして近づいてきた。


「面接来てる女がさぁ子供連れてきちゃっててね。ちょっと面倒見ててくれないかなぁ」

「え!」

「講習しないといけなくてさぁ一時間で良いからさ!頼むよ」

「一時間だけですよ!」

「ありがとな!連れてくるわ」

山田店長は店に入っていった。

 三分もしないうちに出て来た山田店長が連れてきたのは5歳の女の子であった。


 もう此処がどんなところなのか何となく解る歳じゃんー。

 なんで連れてくるのよ。

 この歳なら夕方までだったら留守番できるじゃんー。


 私は女の子の手を取って歓楽街から足早に出て駅前に向かった。


「お名前は?」

「マミです」

「幼稚園は?」

「……」

「行ってないの?」

マミは頷いた。


 私はマミと駅前にある老舗の喫茶店に入った。二階の窓際に通された。

 私は珈琲でマミはメロンクリームソーダを頼んだ。

「おうちは何処にあるの?」

「解んない」

「お父さんは?」

「たまに来る」

「そっかぁ」

マミを見ているとあまり食べていないのとお風呂に入っていないように見える。

「お母さん直ぐ来るからお姉ちゃんと此処で待ってようね」

マミは頷いた。

「マミちゃんは鬼滅は好き?」

「知ってるけど見たこと無いの」

「そっかぁ」

母親が風俗の面接に行くのになんで子供なんて連れてくるんだよと腹立たしくおもえた。


 私とマミは喫茶店にもう2時間もいるー。


「山田店長…一時間って言ったのに…」


 ウトウトしているマミを見ながら溜息をついた。


つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る