第3話
「人は自分が正しいと思えば思うほど辛くなる」3
狭いビルとビルの隙間に“ドスッ”と鈍い音がした。
何か落ちた音だった。
お人形さんが複雑に壊れるように一人の女が死んだ。
彼女は美穂。
数年前に岩手県から上京してキャバクラで働き始めた。
私と大学の同級生であった。
美穂は大学を途中で辞めてキャバクラ嬢として歩き始めていた。
私が今の仕事を初めて最初の担当した店で働いていた。オープン前の店内で打合せをしていると美穂が出勤してきて店内を掃除し始めた。
私は“女の子が掃除?”と思いながらも打合せを続けた。帰り際に美穂に気付いて「美穂?」と声をかけると美穂は目を逸らして私を無視した。
後で聞いたのが美穂は稼げていなくてお店に借金があり他の女の子が出勤する前に店内清掃や買い出しのバイトをしていたとの事であった。
大学で行政書士を目指していたのに少し稼げたからといってキャバクラ嬢になるなんて、夜の世界で成功するのはほんの一握りなのにー。
男に貢いで店に借金をして男に棄てられて節約しながら働いて、どんどん入ってくる若い女の子に客を取られてヘルプしか出来なくなっていたらしいー。
最期はドブネズミの死体が転がるビルの隙間に身を投げてしまった。
虚しい人生だな…。
つづく
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