第30話 幼馴染がグダグダ
30 幼馴染がグダグダ
ようやく肩の荷が降りた休日。
特にやることもないのでイヤホンを耳に入れて、布団でゴロゴロとラノベでも読んでいる昼前の時間。
最近はラブコメ野郎共に振り回されていたからな。こうやって時間を浪費する時間がなかった。
でも、あれはあれで面白かったな……。
あれだ。部活をしている時は、サボって遊びに行きたいって思っていたけど、実際引退したらやることがない。それに似てる。
「なぁんか、つまんないな……」
グデェと寝返りを打つ。
ラノベを読むのも良いが、この間まで動き回って、頭回していたので、この時間が妙にもったいなく感じる。
そんな俺のセリフはすぐに後悔することになる。
ブゥゥゥ!
イヤホンをしていてもわかるくらいの振動が机の上から聞こえてくる。
スマホが俺になにかしらのなにかしらが来たのを伝えているのだろう。どうせ広告メールとかだろうと思ったが、長さ的に着信だ。
誰だ? 休みの日に電話してくる奴は……。もしかしたらカスミか?
そう思いながら立ち上がりスマホを見る。
「小山内さん?」
俺はイヤホンを取り外して電話に出る。
「もしも──」
『高槻くん! 助けて!』
「え……」
※
小山内さんは相当焦っていたみたいで『家に来て!』とだけ言うと電話を切った。
いや、南志見の家をストーキングしたからわかるけど、普通は知らないからな。
でも……彼女の焦った声はただごとではなさそうだ。なにかしらのなにかしらのピンチだろう。
なにがあった? もしかして島屋か? あいつ、そこまで足を踏み込んだか。恋は盲目ってのは変な行動までは許容範囲だが、ある程度のラインがある。それを超えちゃいけないぜ。
少しでも早く行ってあげた方が良さそうだったので、俺は悩んだが、ビックスクーターで小山内さんの家に向かう。
ああ。ババアにバレたら退学かな……。いや、言い訳ならできる。それを言って最悪五停にしてもらおう。
言い訳を考えながら小山内さんの家に向かう。徒歩と電車で行くのより何倍も早く着いた。
家の前には小山内さんと──。
「カスミ?」
「うわお。レンレン。かっこいい!」
バイクを彼女達の前に止めてエンジンを切り、スタンドを立てる。
そしてヘルメットを被ったまま彼女達の前に立つ。
「あれ? でも、レンレン……? 大丈夫? バイク乗って」
「なにかあるの?」
小山内さんがカスミに聞いた。
「停学になるんだって」
「ええ!? 高槻くん……私……」
「停学とか、そんなんはあとだ。それよりも小山内さん!」
「は、はい」
「なにがあった!?」
聞くと小山内さんは「あ、えと……」と歯切りが悪くなる。
「拓磨が……」
「南志見?」
予想外の名前が出た。ここで南志見の名前とはなにがあったんだ?
「拓磨がね。その……思い出の場所で待ってるって言ってきて……」
「はい?」
「そこで待ってるって……」
俺は数秒なにも言えなくて手を顔の方へ持っていく。
「カスミぃ。幼馴染ップルが惚気で俺を停学へ誘ってくるよぉ……」
「おーよしよし。今回はレンレンが被害者だね。全力で優しくするよ……よしよし」
ヘルメット越しに頭を撫でてくれるカスミ。
満足した後、俺は小山内さんへ言ってやる。
「はよ行けよ! 思い出の場所に行けよっ! 伝説の桜の木の下か!? 伝説の鐘の音が聞こえるところか!? 伝説の池か!? 丘か!? 草原か!? どこへでも行けっ! 俺の停学覚悟の思いを返せっ! バカップル!」
「どーどー。今回はレンレンが正しいよ。ドードー、でも落ち着いて、ね?」
「カスミが言うなら、落ち着く」
「うん。良い子、良い子」
カスミに宥められて、落ち着いたところで小山内さんが言葉を放つ。
「でもね……その場所がわからなくて……」
「はい?」
俺は呆れた声が出てしまった。
「その反応になるよね。よしよし」
カスミは頭を撫で続けてくてる。
「てか、南志見に連絡しろよ」
「そうなんだけど……繋がらなくて……」
「はあ!?」
圧倒的な疑問の声を上げるとカスミがなおも頭を撫でてくれる。
「私と同じ反応だよ。よしよし」
「なに? 南志見の奴、イキって思い出の場所に来てって言うだけ言って、小山内さんの返事待たずに鼻息荒くして行ったの? 返事も待たずに」
「そうみたい……」
「あのラブコメ野郎……最後まで巻き込みやがって……」
頭が痛くなりそうだ。
「小山内さん。心当たりは?」
「あるにはあるけど……電車での距離が複数あったり……。でも、ここら辺の気もするし……」
「なるほど……」
「レンレン。どうする?」
「しょうがない……。カスミはこの周辺を頼めるか? 都合良く俺はバイクで来てる。遠い分の心当たりは小山内さん乗っけて行くわ」
「え、良いなぁ」
「後で乗せてやるから。で、小山内さんはこの近所の心当たりのある場所を南志見にL○NEしといて」
「わかった。でも、大丈夫? バイク……」
「乗りかかった船だ。最後まで見送るよ。あんたらの行く末をな」
見届けた後に南志見は最後に思いっきり殴ろう。それでチャラだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます