第31話 これは二人の物語
「ここでもない……」
「そうかい……」
あれから数時間。
あらゆる場所を探した。
ある時は公園。ある時も公園。またある時は公園。
ええい。公園ばっかだな! お前らの思い出の場所は公園しかないのかっ!
なんて叫びたくなるが、今はやめておこう。
「他は?」
バイクを公園の駐輪場に止めて小山内さんに聞くと、指を顎に持っていき考え込む。
「ええっと……」
彼女が考え込んでいると、俺のスマホが震えた。
カスミからの着信だ。
「どした?」
『いたよ。南志見くん』
「まじか!」
俺の大きな声に小山内さんが反応するので、俺は目で合図を送る。
「どこ!?」
『灯台下暗しだね。私がステルス発動させた公園』
「ステルス公園かっ! わかった! とりま行くわっ!」
俺は電話を切ると小山内さんへため息を漏らした。
「家の近くの公園にいたってさ」
「ええっ!? あそこ!? 一番思い出ないよ!」
「……まぁ小山内さんにはなくて、南志見にはあるんだな……」
「あそこって、幼稚園の頃に結婚の約束した場所なだけだよ」
それを聞いて、間違いなく、目の前の奴が南志見ならコークスクリューパンチを放っていた。
だが、なにも言うまい。
永久に爆ぜてくれこのカップル……。
「早く戻るか」
※
すぐにステルス公園へと戻ってくる。
バイクを近くに止めて「小山内さん早く」と彼女を促すと慌ててバイクから降りる。
そのまま走って行こうとする彼女につい「メッチン」と言ってしまった。
「ちょっと高槻くん。こんな時にも下ネタ?」
「チゲーわ! ヘルメットだよ。野球部の時ヘルメットのことそう呼んでたからつい出たんだわ」
「あ……」
小山内さんは頭に手を置くと、すぐにヘルメットを外した。
「ありがとう」
それだけ言うと小山内さんは公園へと走って行った。
「終わったねー」
入れ替わりでカスミがやって来る。
「のぞいて行く?」
カスミに言うとゆっくり首を横に振られる。
「これは小山内さんと南志見くんの物語。私たちみたいな脇役の出番はこれでおしまいだよ」
「俺が言いたかったセリフ」
「あはは。レンレンが言いそうなセリフをパクったんだよ」
「はぁ……」
俺はまじまじとカスミを見た。
「なに?」
「いや……。長かったようで、実際はそんなに日にちは経ってないけどさ……」
「うん」
「カスミとはもっと昔から一緒にいた気がしてさ」
「え……」
カスミの驚いた顔に俺は「あはは」と苦笑いを浮かべる。
「そんなわけないのにな」
言うと「バカレンレン」と言って拗ねてしまう。
「バカなレンレンは私を送らないと行けないんだからね」
「ん。ほら」
先程返したもらったヘルメットをカスミに渡す。
「家まで送るぞ」
「ありがとう」
そう言ってカスミは後ろに乗った。
「じゃ、行くぞ」
「あ、やっぱお腹空かない?」
「それはある」
「どっか寄って帰ろうよ」
そう提案した後に「あ……」とカスミは気まずそうな声を出した。
「でもバイクだから早く帰らないとだめだよね」
「もう良いんじゃない? 私服だし」
「良いの?」
「前は制服だったからアウトだったけど、私服だったら大丈夫だろ」
「ほんと?」
「大丈夫、大丈夫。寄り道して帰ろうぜ」
「うん!」
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