第48話⁂死の真相!⁂
1972年8月某日、高校2年生万里子お嬢様17歳の誕生日の日に木村直樹は、万里子お嬢様たっての希望で誕生会に招待されて柳田邸に伺ったのだが、そこで静子と余りにもそっくりなポートレ-トに写る少女に釘付けになり、早速父親で吉川会組長の忠に話した。
組長の忠は、これは千載一遇のチャンスと思い、密かにその小百合というとんでもない富豪のお嬢様と、才能と美貌に恵まれてはいるが、路地の生活を余儀なくされた出自の悪い父は武闘派の吉川会組長で、母親は男を誑し込む事しか能のない場末のキャバレーのママ。
これではどんなに美貌と才能に恵まれていようが、いずれは想像を絶する悲劇に直面するに違いない。
娘静子の行く末を案じた父の組長忠は、何とかその小百合という娘と、我が娘静子をすり替える事が出来ないものかと考えあぐねて居る。
すると我が息子で球界の大スタ―直樹が何ともありがたい事に、小百合と義姉妹の万里子お嬢様と交際中である事が分かり、尚且つ、万里子お嬢様が、本宅にいる義姉小百合と小百合の母貴美子を恨んでいる事が分かった。
『母親を離婚に追い詰め死なせた!』
その恨みは相当なもので、強い恨みを持っている事が分かって来た。
{これはまたとない幸運!あの万里子お嬢様を使って小百合という娘を亡き者に出来ないものか?}
こうして万里子嬢様と滝、更には吉川会組長の忠が結託して考え出したのが、静子の一学年上の小百合の大学生活が東京でスタ-トするのを皮切りに、静子を学校でのいじめとモデルたちの嫌がらせが原因で失踪した事にして、小百合お嬢さんを殺害してすり替えるという手段を決行した。
整形手術と言っても、殆ど手を加えない目元をほんのチョットと、軽い出っ歯の手術だから1日で終わる。
組長の忠は、自分の息の掛かった闇病院に静子が東京に出る1日前に頼んでくれていた。
こうして小百合と寸分変わらない外見に生まれ変わった静子。
武闘派で通った吉川会だから、病院側も万が一すり替えが分かっていたとしても怖くて口を割ったり出来ない。
◇◇◇◇◇◇◇◇
1973年5月7日のあの日も、やはり真っ赤に燃える…何か?不吉な……どす黒く濁った月が出ていた。
万里子お嬢様とめぐみちゃんが、木村直樹を奪い合っている事を知っているのは、護衛の滝と木村本人だけ。
高校が一緒の2人は又従姉妹という事も有り、仲の良い姉妹同然に世間様から思われている。
だから、努々万里子お嬢様と滝が、めぐみちゃんを殺害しよう等とは、想像も出来ない事。
一方の小百合お嬢さんと静子一家に接点があるなど誰が想像出来よう。
第一九州と鎌倉では遠すぎるので、疑われる事は先ずない。
そこで吉川会組長一派が、東京で4月から大学生活を送る小百合お嬢さんを殺害して、めぐみちゃんは万里子お嬢様と滝2人によって同じ日の1973年5月7日に、殺害するという交換殺人を思い付いたのだ。
それでも…若干計画は変更して………。
5月6日の夜に、小百合お嬢さんのマンションに訪れた万里子お嬢様に、驚きを隠せない小百合お嬢さんなのだが、腹違いの姉妹だから仕方なく部屋の中に通した。
「…私ね、東京のお友達に会う為にわざわざ九州からやって来たのよ、驚いたでしょう。ごめんなさいね!今夜泊めてくれない?」
小百合にしてみれば、自分が強引に今井家の継承者になってしまった事への申し訳なさも手伝って……少し躊躇はしたが、快く家に招き入れてくれた。
まさか、母の死で自分達を逆恨みしていよう等思っても見ない事。
こうして久しぶりの姉妹を装い深夜まで積もる話に花を咲かせて、小百合がトイレに立った隙にジュ-スに睡眠薬を入れ眠らせたのだ。
その後小一時間ぐらいして吉川会の若い組員の1人で、爽やかな青年でまさかヤクザとは思いも付かない好青年風の、どう見ても小百合お嬢さんのボーイフレンドにしか見えない、感じの良い若い男がマンションに消えて行った。
暫くすると万里子お嬢様と、若いボーイフレンドにしか見えない爽やかな男に支えられた、睡眠薬で眠らされている小百合お嬢さんが、2人に支えられてマンションを後に車で夜の街に消え去った。
防犯カメラにはどう見ても、酔っぱらった小百合お嬢さんが友達に支えられて、出掛けたのだとしか映らない。
万里子お嬢様は駅に送って貰い、その足で九州に帰省していた。
こうして夜の街に消えた若い男は、ぐっすり眠り付いた小百合お嬢さんを青木ヶ原の樹海に車で運び、おぶって、かなりの奥地まで連れて行き、紐で首を絞め殺して置き去りにした。
可哀想な事をしたが、唯一の救いは眠っている内に殺害された事だ。
万里子お嬢様から住所を聞いていた静子は、既に渡してもらっていたキ-で、翌朝何事も無かったようにマンションに入り、小百合お嬢さんに成り済まして現在に至っている。
一方のめぐみちゃんは、2日前に木村直樹から電話を貰っていた。
「ああ~!5月7日の午後4時間半に話したい事が有るから、H寺の境内に来てくれない?待っているから」
「まあ~直樹から電話なんて珍しいわね?ウフフフ!」
こうしてめぐみは学校の帰りに、喜び勇んで学校から少し離れた場所にある滅多に人通りの無い山あいのH寺に向かった。
そこで待っていたのは直樹ではなく、護衛の滝だった。
「ああ?めぐみお譲さん今日ね~?直樹君急用で来れないと言ってね、ゴメンなさい。お家まで送ります」
こうして駐車場に誘導するフリをして、人気の全くない竹藪に引っ張り込んで、首を思いっ切り絞めて殺害したのだ。
「グウウウウッ!ナッ何をするの?」
言葉を発したかと思うと後ろから一気にギュッと絞め殺した。
「ギャ――――――――ッ」
当然の事ながら手袋をしている。
こうして証拠を一切残さず、慌てて逃げたのだ。
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